再生医療

ACRS療法は、自分自身の血液から作成する「自己血サイトカインリッチ血清(Autologous Cytokine Rich Serum)」を皮膚に注入して、シワやたるみ、毛穴、ニキビ跡など、さまざまな肌悩みを改善へ導く治療法です。この記事ではACRS療法の仕組みやACRS療法に期待できる効果や適応部位・注入方法などについて徹底解説しています。

ACRS療法とは?

ACRS療法の概要・仕組み・含まれる成分

ACRS療法の概要

ACRS療法の概要

ACRS療法は、自分自身の血液から作成する自己血サイトカインリッチ血清(Autologous Cytokine Rich Serum)」を皮膚に注入して、シワやたるみ、毛穴、ニキビ跡など、さまざまな肌悩みを改善へ導く治療法です。

ACRSには細胞の修復や再生を促す成長因子や、肌トラブルの原因となる慢性炎症を抑える作用をもつ「抗炎症性サイトカイン」が豊富に含まれています。

これらの成分の働きによって皮膚細胞が活性化されるので、コラーゲンやヒアルロン酸の生成が促され、シワやたるみの改善につながるとともに、肌にハリやツヤが出るといわれています

自分自身の血液から抽出した成分を自分の皮膚に戻すだけですので、余分な添加物は一切含まれません。

アレルギーの心配もほぼなく、安全性の高い施術とされています。

開発国のドイツをはじめヨーロッパでは、アスリートの痛みを抑える治療として整形医療領域で長年の実績がある治療法です。

ACRS療法の仕組み

ACRS療法の仕組み

ACRS療法では、採取した血液をガラスビーズが入った専用の容器に移し替えて、体温とほぼ同じ37℃3時間ほど温めます。

この3時間の間に、ガラスビーズを「傷だ!」と勘違いした血液中の血小板が、傷を治すための成長因子と、炎症を抑えるための抗炎症性サイトカインを、それぞれ大量に放出します。

採取前の血液と比べて、成長因子は種類によって約515倍、抗炎症性サイトカインは約5倍にまで増えるとされているのです。

3時間経ったら容器を遠心分離機にかけて、成長因子と抗炎症性サイトカインを含む血清部分のみを取り出し、血小板や血球の成分が残らないように更に専用フィルターでろ過すると、ACRSの完成になります。

ちなみに、10mlの血液から約35mlACRSが抽出できます。(個人差あり)

ACRSに含まれる成分

 ACRSには多様な種類の成長因子が含まれることも特徴の一つです。

以下が、ACRSに含まれる主な成長因子となります。

成長因子

働き

FGF

組織を修復、コラーゲン産生、ヒアルロン酸産生

EGF 

上皮細胞の成長促進、血管新生、創傷治癒を促進

PDGF

細胞増殖、血管の新生・修復、コラーゲン産生

TGF-β

上皮細胞・血管内皮膚細胞の増殖・新生、創傷治癒を促進

VEGF

血管内皮細胞の増殖・新生

このなかでもFGFは、ACRS同様に自身の血液から作られるPRPにも含まれていない成分です

コラーゲンやヒアルロン酸の産生に関わるFGFを含むことで、ACRSは高い治療効果が期待できます。

また、ACRSに含まれる成分についての最も大きな特徴として、炎症を引き起こす「炎症性サイトカイン」は含まずに、炎症を抑える「抗炎症性サイトカイン」を豊富に含むという点があります。

実はこの「炎症」を抑えることが老化の抑制に非常に重要だと考えられているのです。

老化の原因「慢性炎症」に着目したACRS

老化の原因「慢性炎症」に着目したACRS

慢性炎症とは?

私たちの体には、外的刺激から細胞を守るための免疫機能が備わっています。その免疫機能のひとつが「炎症」です。

体内に細菌やウイルスといった異物が侵入すると、体はそれらを排除しようと「急性炎症」状態になります。熱が出たり、腫れたりといった症状です。

しかし実は、異物侵入がなくても、紫外線や摩擦といった外からの刺激で肌は慢性的に炎症を起こしているのだといいます。

この炎症のせいで活性酸素が発生して老化を引き起こし、くすみやシワ、シミといった症状につながると考えられているのです。

また、老化した細胞自身が炎症物質を大量に出して、周囲の細胞が影響を受けるということもわかっています。

体内で炎症と抗炎症のバランスが崩れると、シワやたるみ、乾燥、シミなど様々な症状となって肌表面に現れやすくなるのです。


慢性炎症を抑えるACRSの作用とは?

上述したように、ACRSは炎症性サイトカインは含まず、抗炎症サイトカインを豊富に含みます。

そのためACRSを注入した部位では、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインのバランスが取れることで、炎症を緩和し、慢性炎症のみならず、炎症による赤みやニキビなどの症状も改善へと導く効果が期待できます。

さらに炎症が原因の薄毛に対する効果も期待できるとされています。

他にもACRSには豊富な成長因子が含まれているため、体内の炎症のバランスを整えつつ、細胞の修復や増殖を促進するといった作用が得られます。

施術後1週間ほどで、肌の変化を実感できるようです。

なお、同様に豊富に成長因子を含むPRPやヒト幹細胞培養上清には炎症性サイトカインも含まれるため、注入した部位の環境によっては、炎症が起こったり、細胞再生の効果が十分に得られなかったりすることも考えられます。

ACRS療法に期待できる効果と適応部位・注入方法

ACRS療法に期待できる効果と適応部位・注入方法

ACRSは、傷ついたり弱ったりした細胞を活性化し、再生させる働きに優れており、以下のような効果が期待できます。

線維芽細胞を活性化させてコラーゲンやヒアルロン酸の増生を促す

ACRSを真皮に注入すると、コラーゲンやヒアルロン酸といったハリ・弾力・潤いの元を生み出す線維芽細胞が活性化します。

真皮を構成する細胞の増生が活発になる結果、肌の弾力性や保湿力が向上して、ふっくらとしたハリが蘇ると期待できます。

特に、皮膚の薄い目元の小じわ、クマ、ニキビや傷の痕には、手打ち注射でしっかり注入すると効果が高いとされています。

首の横ジワ改善や、手の甲をふっくらさせる場合などは、メソガンや手打ちでの施術になるようです。
顔全体に水光注射やダーマペンで注入すると、コラーゲンの減少・変性による皮膚たるみや、たるみ毛穴も改善に導きます。

ターンオーバーの正常化

肌細胞の活性化が促されるので、新陳代謝が活発になり、ターンオーバーが正常化するとされています。

メラニンの排出によりシミやくすみが改善し、肌の保湿力が高まるのと相まってキメが整い、透明感あふれるツヤ肌へと導いてくれると期待できます。

抗炎症作用

ACRSに含まれる抗炎症性サイトカインは、炎症を引き起こすサイトカインの働きを抑制することで、注入箇所の炎症反応を鎮静します。それによって、次のような効果が期待できるとされています。

  • アクネ菌による炎症を抑えて、アクティブニキビを改善
  • ニキビ痕など炎症性色素沈着の改善
  • 炎症が原因の赤ら顔・酒さの改善
  • 火傷やケガの治癒を早める
  • シミやくすみ、シワの改善

頭皮の炎症を抑えて毛母細胞と血管の再生を促す

毛髪の生え変わりの周期を「毛周期」といいます。毛が生えてから抜けるまでのサイクルのことで、成長期・後退期・休止期の3段階を繰り返します。

このサイクルが乱れて成長期が短くなると、毛髪が十分に成長できずに細くなったり、抜けやすくなったりして、いわゆる薄毛の状態になります。

毛周期が乱れる原因として、頭皮の炎症や、毛髪を作りだす毛母細胞の老化といったことが挙げられます。

ACRS療法では、抗炎症サイトカインの働きで炎症を抑え、成長因子の働きで毛母細胞や血管の再生を促すことで、毛周期を正常化すると期待できます。

その結果、毛髪がしっかりと健康的に成長して、薄毛の改善が期待できるとされています。毛母細胞が活性化するとメラニン生成も活発になると考えられ、白髪の改善も期待できます。

ACRS療法を受けるにあたって知っておきたいこと

ACRS療法を受けるにあたって知っておきたいこと

ACRSの推奨回数と治療頻度

ACRS療法は、一度の施術でも十分に肌の変化がありますが、24週間の間隔を空けて34回の施術を継続すると、より高い効果が得られるとされています。

効果は35年ほど持続します。

施術後1週間位で効果を実感し始めるとも言われており、効果がわかりやすいことも人気の理由の一つのようです。

ACRSの料金(費用相場)

10mlの血液からACRSを作成し注入する場合、1回 150,000200,000円が相場だと言えるでしょう。

作成したACRSは1か月ほど冷凍保存が可能で、2回に分けて注入することもできます。

その場合、2回目は注入料金のみで50,000100,000円が目安です。

痛み・ダウンタイム

注射やダーマペンを使用するため、針が刺さる際には痛みを感じます。痛みが不安な場合には麻酔クリームなどを使用することで痛みを和らげることが可能です。

施術後は点状出血が見られることがありますが、数時間で治まります。抗炎症性サイトカインの働きで、赤みや腫れといったダウンタイムはとても軽微です。

針が刺さることで内出血が起こることがありますが、1週間ほどで目立たなくなることがほとんどです。顔に施術した場合、メイクは翌日から可能です。頭皮に施術した場合、シャンプーは翌日から可能です。

ACRSPRPの徹底比較

ACRSとPRPの徹底比較

ACRSPRPの違いとは?

自身の血液から作成した薬剤で肌を構成する細胞を活性化させる治療法として、PRP療法(自己多血小板血漿療法)も広く知られています。ACRS療法とPRP療法ではどんな違いがあるのでしょうか?

大きな違いとして、有効成分がどこで増えるか、ということがあります。

ACRS療法は、3時間のインキュベーションの間に成長因子や抗炎症性サイトカインを専用容器の中で増やします。そしてそれらの有効成分のみを、体に戻しますACRSを注入した部位では、豊富な有効成分の働きで線維芽細胞の活性化がすぐに始まり、1週間ほどで治療効果を感じられるようになります。

PRP療法では、採取した血液から血小板を高濃度に含む血漿を抽出して、体に戻します。PRPを注入した部位に高濃度で存在する血小板が活性化することで、大量の成長因子や抗炎症性サイトカインが放出されます。つまり、有効成分は体内で増えるのです。

有効成分が増えて線維芽細胞を活性化させるまでには時間がかかり、効果を感じられるようになるのは1か月後くらいからです。その効果も、PRPとして抽出する前の血液にもともと含まれていた血小板の量・質によってばらつきが出やすいといわれています。

またPRP療法では、血小板が有効成分を放出する際に、炎症を引き起こす炎症性サイトカインも同時に放出されます。そのため、腫れや赤み、痛みや刺激といった炎症反応が起こることがあります。

ACRSPRPの比較表

ACRSとPRPの比較表まとめ

ACRS療法は、コラーゲンやヒアルロン酸を生み出す線維芽細胞を活性化させると同時に、老化の原因となる慢性炎症を抑えて、肌の若返りを図る治療法です。

自身の血液から作成する成分なのでアレルギーや拒絶反応の心配がなく、ダウンタイムもほとんどない安全性の高さも魅力です。

ACRS療法が受けられるクリニックはまだ多くはありませんが、今後の広まりが楽しみな先端医療だと言えるでしょう。興味のある方は一度カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。

※マッサージや化粧品などの情報が記載されている場合は監修範囲に含まれません。

※執筆・掲載日時点の情報を参考に医師監修しております。

※当サイト記事内の情報は一般的な知識であり、自己判断を促すものではありません。あらかじめ、ご容赦ください。

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