
相川佳之(あいかわ・よしゆき)氏。SBCメディカルグループホールディングス CEO(写真/村田和聡)
相川佳之(あいかわ・よしゆき)氏
SBCメディカルグループホールディングス CEO
──国内外の医院数は248医院。世界的に見て最大規模になった。
相川氏: 調べる限りでは世界で一番多いと思います。
──創業から25年という期間を振り返り、これまでの歩みや美容医療の現状をどう見ている?
相川氏: 私たちが創業した2000年前後は、「B. C. ビューティー・コロシアム」(2001年からフジテレビ系列で放送された番組)というテレビ番組が放映されると、一気に手術予約が入る美容医療の導入期でした。当時は、電柱広告や電話帳、一部テレビCMが主な広告媒体でしたが、その後インターネットの普及により、市場の流れは大きく変化しました。その頃の大手とされたクリニックはネット広告にあまり注力しておらず、私たちはネットでの情報発信に力を入れて業績を拡大したのです。
また、この10年ほどは美容皮膚科が急成長したことがあり、元々「湘南美容外科クリニック」として展開していましたが、約8年前に皮膚科の売上が外科を上回り、「湘南美容クリニック」に名称を変更した次第です。
──皮膚科の分野が成長していることはよくいわれる。
相川氏: はい。近年の技術革新により、注射治療レーザー、超音波などのエネルギーデバイスが急速に進歩したことが大きな要因です。皮膚科統括の西川礼華先生が入職した約10年前より、皮膚科分野が急激に拡大してきました。
より詳しく言えば、ボトックスやフィラーに加えて、超音波、ラジオ波、フラクショナルレーザー、ピコレーザーといった機器が次々と開発され、美容医療の現場に普及しました。その結果、メスを使わずに治療を希望する方々が増え、非外科的治療の需要が大幅に伸びたのです。
──施術の流行りや傾向の変化はある?
相川氏: 昔は二重術や目元の施術が主流でしたが、今は脂肪吸引や豊胸といったボディ系の治療が増えています。25年間続けていると、一定の周期でブームが巡ることを実感します。脂肪吸引が流行した時期があれば、ワキガ治療が盛り上がり、その後若返り施術が急増するなど、トレンドは年々変化しています。
脱毛はもちろん、シミ、シワ、たるみなどの治療が着実に増加していると認識しております。

相川佳之(あいかわ・よしゆき)氏。SBCメディカルグループホールディングス CEO(写真/村田和聡)
──美容医療を受ける人が増える中で、無理な勧誘や誇大広告も問題視された。
相川氏: 湘南美容クリニックの創業から25年が経過。NASDAQへの上場も達成し、コンプライアンス強化や制度設計、法務体制の整備を推進してきました。個人クリニックにはない仕組みを整えてきたことが、大きな強みだと考えています。私が経営支援を行っている湘南美容クリニックには、多くのお客様にご来院されますが、一人ひとりに対して無理な営業を行うことなく、ご希望に寄り添ったご提案を大切にしています。過度な営業を控え、お客様との信頼関係を大切にしながら、自然な形で築いていけるよう努めています。
確かに、ここ数年、クレームが増えたとの報道やネガティブなニュースが見受けられます。しかし、来院者数は前年比で2~3割増加しており、現状は増加傾向にあります。
業界全体の統計は2023年や2024年分がまだ明確でありませんが、全体像は今後明らかになると思います。
──かつて「二重術を2万9800円で」との広告でよく知られたが、正しい表示に改めると表明し、そちらも話題にもなった。
相川氏: 広告に「2万9800円」と記載されていても、実際にはその価格で施術を受けられず、より高額な治療が勧められるケースがあるとすれば、それは大きな課題と言えます。かつては競合クリニックに合わせた広告戦略が見られることもありましたが、それでは利用者の信頼を損ねる可能性があるため、適正な情報提供の重要性が再認識されています。広告の価格と実際の料金に乖離があることは、業界全体の健全な発展にも影響を及ぼしかねません。そのため湘南美容クリニックでは、広告に記載された価格通りの施術を提供する姿勢を徹底されています。
──その流れで、職種名を「カウンセラー」から「美容コンシェルジュ」に変更した?
相川氏: 「カウンセラー」という言葉には営業的イメージが付きやすいため、一度リセットし「美容コンシェルジュ」と改めました。湘南美容クリニックに勤めるカウンセラーが無理な勧誘をしていたわけではありませんが、世間の印象を改善するための措置です。
──2024年から制度的に変えたことは他にも?
相川氏: 大きくは変えていませんが、以前から「お客様満足度調査」を継続し、施術ごとにアンケートを行い、会議で改善策を検討してきました。例えば、二重術なら二重術、脂肪吸引なら脂肪吸引と分けて毎月アンケートを実施し、会議で改善策を検討しています。
また、「ミステリーショッパー」を一度コロナ禍で中止したのですが、復活させ、院の清潔さやスタッフ、ドクターの対応を点数化して現場にフィードバックする仕組みも導入しています。さらに、新しく「目安箱」というシステムを24年9月から始め、意見を直接受け取ってサービス改善に活かしています。
──意見で印象的なものは?
相川氏: お客様からのご指摘やご意見を多く頂戴しており、読むのはつらいこともありますが、そうした意見が改善につながると実感しています。もちろん、お褒めの言葉も励みになりますが、お客様の不満や要望を真摯に受け止めてこそ、サービスが向上すると考えています。感情的なご意見もあり、精神的に厳しい場合もありますが、しっかり向き合って改善していくことが大切だと思っています。(続く)