
順天堂大学大学院医学研究科・循環器内科教授の南野徹氏。(写真/編集部)
アンチエイジングに関する研究が活発化している。現在、特に注目されているのが老化細胞。老化細胞を取り除くことで、老化の進行を遅らせる可能性があることが分かってきた。
2025年4月19日、順天堂大学大学院医学研究科・循環器内科教授の南野徹氏が、第2回再生医療加齢医学会学術集会で講演を行った。その中で、老化細胞を除去する方法として意外な薬が活用できる可能性があると解説した。
「老化の本質はゲノムのダメージ」

順天堂大学大学院医学研究科・循環器内科教授の南野徹氏。(写真/編集部)
- 老化の原因→ 南野氏は老化の根源を「ゲノムのダメージ」とし、遺伝情報が傷つくことで細胞の老化やSASPの分泌が進むと解説。
- 免疫の機能低下→ 老化細胞を除去する免疫細胞の働きが衰えることで、老化細胞が蓄積し「慢性炎症性老化」が進行する。
- 新たな対策→ 老化細胞を選択的に除去する「セノリシス」や、その薬剤「セノリティクス」が注目されている。
美容医療と老化の予防は密接に関係している。美容上の悩みとして代表的なしみ、シワ、たるみは、年とともに目立ってくる症状。これまでなかったしみが現れたり、しみが濃くなったりすることがある。また、シワの出現や悪化が起こることもある。肌のハリが低下し、たるみが生じることも大きな問題となる。こうした症状の原因となる老化を防ぐことは、美容面における根本的な対策となる。
南野氏は、老化の根源は「ゲノムのダメージ」と説明した。
ゲノムとは、身体の設計図にあたる全遺伝情報のことを指す。これが傷つくことによって、遺伝子が正常に読めなくなり、細胞が老化したり、細胞の老化を引き起こす「SASP」の分泌を促したりする。
※SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype)は、直訳すると老化に関連した分泌型の意味であり、老化細胞が他の細胞にどのように影響を与えるかを解明する鍵となる現象。サイトカインと呼ばれる物質が分泌され、これにより慢性的な炎症状態が引き起こされる。肌の老化メカニズムにおいても、SASPは重要な要因として注目されている。
ここで南野氏がさらなる問題と説くのが、老化細胞を取り除く「免疫細胞」が正常に機能しないということ。これによって、老化細胞が蓄積し、さまざまな病気を悪化させるという。このことは「慢性炎症性老化」と呼ばれることを説明した。
南野氏の研究チームは、老化細胞の目印となる「GPNMB」という物質が特定し、老化したマウスでこのGPNMBが300倍以上になることを発見した。この目印に従って老化細胞を取り除ける可能性が示された。
実際、GPNMBを標的とするワクチンの開発と検証が進められていると南野氏は解説した。
こうした老化細胞を選択的に取り除く手法は「セノリシス」と呼ばれ、それを実現する薬は「セノリティクス」と呼ばれる。
「セノリティクス」の有望な薬

SGLT2阻害薬は既に病気の治療に実用化されている。画像はそのうちの一つ、ダパグリフロジンのイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 注目の薬→ 南野氏は老化細胞除去薬(セノリティクス)の候補として「SGLT2阻害薬」を紹介。
- SGLT2阻害薬の役割→ 本来は糖尿病や心不全治療薬で、尿中に糖を排出することで血糖を下げる薬。すでに複数の種類が実用化されている。
- 老化細胞への作用→ カロリー制限と同様の効果があるとされ、SGLT2阻害薬がT細胞を活性化し、老化細胞の除去を促すメカニズムが明らかに。
今回、南野氏は、セノリティクスの中で効果が注目される意外な薬の候補として「SGLT2阻害薬」を解説した。
SGLT2阻害薬は、尿中への糖排せつを促す作用があり、糖尿病や心不全の治療薬として既に広く使われている。しかも、複数の種類の薬が存在している。
これまでの研究により、SGLT2阻害薬が老化細胞の除去に関与する可能性が示されている。南野氏によると、カロリー制限による寿命延長が知られており、その代替的手段としてSGLT2阻害薬が注目された。
一方で、研究の結果、興味深いメカニズムが明らかになっている。
というのも、SGLT2阻害薬の効果で免疫細胞の一つである「T細胞」が活性化し、老化細胞が除去されるという仕組みが明らかとなったのだ。
SGLT2阻害薬は既に実用化されている薬であり、副作用リスクも少ないとされ、老化細胞除去薬として今後の活用が期待されている。さらに研究が進むことになりそうだ。
