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東京都が無料PCR検査の不正申請で補助金決定を取り消し、美容皮膚科関連の医療機関による約69億円が最大

カレンダー2023.6.3 フォルダー 国内

ポイント

  • 東京都がPCR検査無料化事業に関する虚偽申請で11事業者の補助金交付決定を取り消し
  • 美容皮膚科関連の都内の医療機関が行っていた不正申請額が最も多く約69億円に上った
  • 医療機関などが実績を偽り、補助金を不正に申請していた

 2023年6月2日、東京都は新型コロナウイルスの無料PCR事業の補助金申請について虚偽があったとして、11事業者の補助金交付決定を取り消したことを発表した。不正申請額が最大となったのは美容皮膚科関連の医療機関だった。

最大の不正申請額は「日本初男性アートメイククリニック」

無料PCR事業の不正申請を行った事業者が公表された。(出典/東京都保健福祉局)

無料PCR事業の不正申請を行った事業者が公表された。(出典/東京都保健福祉局)

 今回の発表は都福祉保健局によるものである。

 都では21年12月23日から23年5月7日まで、コロナの無料検査事業を実施した。しかし、都の調査により、PCR検査を実施してきた事業者の一部は、虚偽の実績によって補助金を申請していることが判明した。

 これを受けて都は補助金交付決定を取り消した。一部事業者については事業者登録の取り消し、既に交付済みの分もあったため、これについては返還を命じた。

 取り消された補助金の総額は約183億円に上り、交付済みは約17億円もあった。交付済み分は返還命令の対象になっている。

 今回、不正申請をした事業者の中には、医療機関や薬局、医療関連企業などが含まれたが、複数の美容皮膚科関連の医療機関が不正申請に関与していた。

 不正申請においては検査数の水増しや、事業者の立ち会いが必要なのに委託している、従業員に検査を受けさせるなどの問題が指摘されている。

 不正申請をしていた事業者の中でも最大の不正申請をしていたのが、約69億円の不正申請を行った「medical 4 men clinic」という医療機関である。この医療機関は2021年に公開していたプレスリリースによると日本初の男性向けアートメイククリニックとして開設された施設だったようだ。現在は、今回の不正申請の影響もあるためか、ホームページが「サイト閉鎖中」とのみ示されている。

 このほか不正申請を行ったとして施設名を公表された事業者のうち、美容皮膚科関連の診療を手掛けている医療機関は次の通りだ。

 約28億円の不正申請を行ったのが「医療法人華風会」、約6.3億円の不正申請を行ったのが「医療法人社団彩祥会」、約3700万円の不正申請を行ったのが「渋谷美容皮膚科クリニック」。ただし、このうち補助金の交付済みだったのは、渋谷美容皮膚科クリニックに対する約1400万円のみで、これについては返還命令が出た。

 これら医療機関の措置理由はいずれも「検査の実施が適切に行われていないと認められたため。不正の手段により補助金の交付を受けようとしたため」とある。

一法人が複数施設の不正に関与か

専門の検査所を設置し、不正申請していた事業者が複数見られた。(出典/medical 4 men clinicが開設していた検査受付のウェブページ)

専門の検査所を設置し、不正申請していた事業者が複数見られた。(出典/medical 4 men clinicが開設していた検査受付のウェブページ)

 最大の不正申請をしていたmedical 4 men clinicでは、PCR検査所については特別に採取所を設けて検査を受け付けていたようだ。

 既に無料検査期間は過ぎているが、検査の情報提供しているウェブサイトはまだ閲覧できた。これは診療所の不正が指摘された検査所の一部だ。

 それによると「新型コロナウイルス“最短3時間高速PCR検査”」と掲げ、東中野と泉岳寺に採取所を開いていることが見て取れる。編集部がWEB予約を試してみると、既にエラーが出て予約できなくなっている。

 検査所ウェブページURLを見ると、「medical4men.com/pcr2」とあるが、ページに示された医療機関名はAIM Beauty Medical Clinicとあった。つまり、medical 4 men clinicとは別の施設名が示されていることになる。

 さらに確認していくと、予約を受け付けるウェブページに示されていた運営統括責任者と、不正申請を行っていたmedical 4 men clinic院長、同じく不正申請を行っていた医療法人社団彩祥会の理事長の名前は同じであった。

 一法人に関連した不正申請が75.3億円に上っていた可能性がある。ただし、いずれについても交付済みの補助金はなかった。

 都の調査によれば、今回、不正申請を行っていた複数の事業者が専門の検査会場を設置していた。しかし、実態としては、こうした検査所での検査記録を偽って提示するなどして、事業者は不正に補助金を受け取ろうと図っていた。このような状況では、混乱に乗じて補助金目当てに検査所を作ったと責められても仕方ない。

 都は、「無料検査の不正事案については、適宜警視庁に情報提供を行っており、今後とも適切に連携を図っていきます」と説明している。

参考文献

令和4年度PCR等検査無料化事業補助金交付決定の取消し等について
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/hodo/saishin/pressboueki230602_1.html

日本初のメンズ専用アートメイククリニック「MEDICAL 4 MEN」が東京・東中野にオープン!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000078001.html

aim beauty medical clinic 東中野PCR検査所 東京 新型コロナウイルス陰性証明 泉岳寺 白金高輪
https://medical4men.com/pcr/
https://www.medical4men.com/pcr2/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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