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美容を体の外側だけでなく内側からも、実用化が進む「迷走神経デバイス」、首や耳から刺激する技術に注目、第26回日本抗加齢医学会総会で発表

カレンダー2026.6.30 フォルダー 国内
第26回日本抗加齢医学会総会で講演するさかえクリニック院長の末武信宏氏。(写真/編集部)

第26回日本抗加齢医学会総会で講演するさかえクリニック院長の末武信宏氏。(写真/編集部)

 美容を体の外側だけでなく、内側からも捉える美容内科の分野に新たな動きがある。

 美容内科では、栄養やホルモン、睡眠、炎症、ストレスなどが注目されているが、それらを調整している重要な神経の一つである迷走神経の働きを整え、体を内面から健全に保とうとするアプローチだ。

 2026年6月に開催された第26回日本抗加齢医学会総会では、会長企画シンポジウム5「今、なぜ美容内科が必要なのか?」が行われ、この中で、さかえクリニック(名古屋市中区)院長の末武信宏氏は「迷走神経制御の視点からみた美容内科の重要性」と題して講演した。

 興味深いのは、迷走神経を刺激するデバイスや刺激法が、既に一部は医療現場で実用化されていたり、研究が進んでいたりすること。首や耳から迷走神経に働きかける技術は、美容内科を考える上で新しい視点になりそうだ。

内面美容にとって重要な「迷走神経」

第26回日本抗加齢医学会総会の会場となったパシフィコ横浜ノース。(写真/編集部)

第26回日本抗加齢医学会総会の会場となったパシフィコ横浜ノース。(写真/編集部)

  • 迷走神経に注目→ 美容内科では、体の内側から健康と美容を支える神経として迷走神経が注目されている。
  • 内面美容の新しい視点→ 栄養や睡眠、炎症、ストレスをつなぐ重要な経路として位置付けられる。
  • 刺激デバイスも登場→ 首や耳から迷走神経を刺激する医療機器や技術の研究・実用化が進んでいる。

 末武氏は、体の外側を整える外面美容に対して、体の内側から健康や美を支える内面美容の重要性を指摘する。美容外科や美容皮膚科は外見に関連する「ハードウエア」に働きかける方法であるならば、美容内科は、生命活動に必要な「ソフトウエア」や「オペレーティングシステム(OS)」を整える方法となる。

 内面美容では、栄養、腸内環境、点滴、サプリメント、ホルモン、抗酸化、慢性炎症などの観点からのアプローチがよく知られている。ただ、これらは別々に働いているわけではない。睡眠が乱れれば炎症や食欲、気分に影響し、ストレスが続けば消化や肌の状態にも影響する。こうした体内の連動を支えている経路の一つが迷走神経だ。

 末武氏によると、内面美容を考える上で、迷走神経の働きは重要なポイントになる。迷走神経は脳神経の一つで、第10脳神経とも呼ばれる。脳幹から首、胸、腹部へと広がり、心臓、肺、胃腸など多くの臓器とつながっている。心拍、呼吸、消化、睡眠、炎症、ストレス応答に関わる神経であり、脳と内臓をつなぐ重要な経路である。

 この「生命活動のOS」に働きかけるアプローチとなり得るのが、迷走神経刺激デバイスだ。

 末武氏は、代表的なものとして、首の皮膚の上から迷走神経を刺激する「gammaCore」と呼ばれる医療機器、また、耳に分布する迷走神経を刺激する方法、経皮的耳介迷走神経刺激、taVNSなどを紹介した。

 首に当てるタイプの機器は、頭痛領域で実用化されている。耳から刺激するtaVNSは、装着しやすく、ウェアラブル化しやすい点が特徴だ。電気刺激だけでなく、光、音、振動、音楽、呼吸、発声などを使い、自律神経や迷走神経に働きかける研究が進んでいる。

内面美容を目に見えるようにする

第26回日本抗加齢医学会総会の会場となったパシフィコ横浜ノース。(写真/編集部)

第26回日本抗加齢医学会総会の会場となったパシフィコ横浜ノース。(写真/編集部)

  • HRVで効果を評価→ 心拍変動(HRV)を使い、自律神経や迷走神経の状態を客観的に評価する考え方が広がっている。
  • 睡眠やストレス改善に期待→ 迷走神経刺激による体の回復力向上が、内面美容や健康維持につながる可能性がある。
  • エビデンスが重要→ 美容内科でも、科学的根拠に基づいた評価と研究の積み重ねが求められている。

 迷走神経刺激を美容内科で考える上で重要となるのが、効果をどう評価するかという点。その手掛かりの一つが、HRV(心拍変動)だ。

 HRVは、心拍の間隔の揺らぎを示す指標で、専用機器やウェアラブル機器などで測定できる。一般にHRVが大きいほど、自律神経の柔軟性や回復力が保たれている状態を示すとされる。睡眠、疲労、ストレス、炎症などとも関係し、国内外の研究では、長期的な健康状態や死亡リスクとの関連も報告されている。

 迷走神経刺激によってHRVが上昇すれば、自律神経の働きが整い、体が回復しやすい状態に近づいている可能性を示す手掛かりになる。こうした変化が睡眠の質や疲労感、ストレス状態の改善につながれば、内面美容や健康維持の一つのアプローチとして評価できる。その延長に、リラックスや若返りへの期待も位置付けられる。

 末武氏が強調したのは、これからの美容内科では、エビデンスに基づいて評価する姿勢が必要になるという点だ。迷走神経刺激やHRVに関する科学的な論文が蓄積されていることは、根拠に基づいた美容医療を進める上で重要といえるだろう。内面から健康を支える研究はさらに進みそうだ。

参考文献

Tsuji H, Venditti FJ Jr, Manders ES, Evans JC, Larson MG, Feldman CL, Levy D. Reduced heart rate variability and mortality risk in an elderly cohort. The Framingham Heart Study. Circulation. 1994 Aug;90(2):878-83. doi: 10.1161/01.cir.90.2.878. PMID: 8044959.

Tindle J, Tadi P. Neuroanatomy, Parasympathetic Nervous System. [Updated 2022 Oct 31]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026 Jan-. Available
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK553141/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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