
重いニキビの対処。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
重いニキビの治療に使われる薬「イソトレチノイン」が、体のホルモンの一つである甲状腺の働きに影響する可能性があるとの報告が出てきている。
2025年7月、レバノンなどの専門家グループがこの内容についての新しい論文を皮膚科治療の学術誌に発表した。
女性や長期使用者に目立つ傾向

ニキビ治療の注意点。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- イソトレチノインと甲状腺の関係→イソトレチノインは、長期使用により甲状腺ホルモンに影響を及ぼす可能性がある。
- 女性や長期使用でリスク上昇→特に女性や治療期間が長い患者でホルモン変化が目立つ傾向がある。
- 自己免疫体質に注意→自己免疫傾向のある人では、甲状腺ホルモンの変化が目立つとの報告も。
今回のまとめでは、イソトレチノインが甲状腺の働きにどのような影響を与えるかについて、多くの研究や症例が紹介されている。
なお、ニキビの塗り薬として知られるトレチノインに対して、イソトレチノインは飲み薬として重いニキビの治療に使われる。どちらもビタミンAに由来する薬と位置付けられる。
例えば、4~6カ月ほど薬を飲み続けると、甲状腺を刺激するホルモン(TSH)が増える一方で、実際に体で使われる甲状腺ホルモン(FT3やFT4)は減っていることが報告された。
中には、甲状腺を刺激するホルモンが異常な上昇を見せる人もいた。特に、女性や治療期間の長い患者で変化が大きい傾向があった。
イソトレチノインを使うことで、甲状腺ホルモンが変化する原因の一つとして、薬が甲状腺の細胞に影響し、細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)を導く可能性が認められた。
また、もともと自己免疫の体質がある人では、甲状腺を刺激するホルモンが特に上がりやすいという報告もあった。
さらに、こうしたホルモンの変化は、薬を飲んでいる期間が長いほど起きやすい可能性があるとされている。
内分泌専門医と連携も必要

ニキビ治療の副作用に注意。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- ホルモン異常は一時的な場合も→イソトレチノインによるホルモン変化は、治療終了後に正常化するケースもあるが、甲状腺疾患と診断された例も存在する。
- 定期的なホルモン検査が重要→自己免疫疾患のある人や長期治療を受ける人では、甲状腺ホルモンの定期的なモニタリングが推奨されている。
- 内分泌科への相談も重要→皮膚科と内分泌科が連携し、体質や病歴に応じた治療を行うことが安全性を高める鍵となる。
イソトレチノインによるホルモンの変化は、一部のケースでは、治療終了後にホルモン値が正常に戻った例もある。しかし中には、軽い異常を超えて、甲状腺疾患が診断された例もある。
特に、もともと自己免疫の病気があった人や、長く治療を続ける人では、甲状腺のホルモンを定期的に調べることが大切とされている。
この論文では、皮膚科と内分泌科の医師が協力し、薬を服用している人の体質や病歴に合わせて安全に治療することの大切さが示された。
日本でも、こうしたチーム医療の形を取り入れることで、美容や皮膚の治療の質がさらに高まると期待される。
