白髪予防につながる新発見、米国ニューヨーク大学の研究グループが報告

2023.4.29

なぜ白髪になるのか良く分かっていない

髪の毛の確認。写真はイメージ。（写真／Adobe Stock）

　白髪は、毛包と呼ばれる毛根にある髪の毛を作り出す細胞がメラニン色素を作らなくなることで起こる。メラニン色素があることで、髪の毛は色づいている。メラニン色素を作り出す細胞がメラノサイトである。しかし、これまでメラノサイトがメラニン色素を作らなくなる理由は完全には解明されていなかった。メラニン色素を作る能力を保つ方法が分かれば白髪を予防することができるかもしれない。

　今回、米国ニューヨーク大学グロスマン校医学部を中心とする研究グループが、メラニン色素を作り出すメラノサイト幹細胞と呼ばれる大元となる細胞が、毛包の中を動き回ることで、自らの老化を避けて、メラニン色素を作る能力を保っているという事実を突き止めた。これは、著名な科学誌のネイチャーでこの4月に掲載された。

　研究の内容は次の通り。研究グループは白髪の鍵を握っているとみられるメラノサイト幹細胞に注目し、細胞を生きたまま観察したり、1つの細胞の遺伝子の状態を調べたりして、メラノサイト幹細胞がどう変化しているかを観察。そこから白髪につながる変化を見つけ出そうとした。

成熟と未熟を行き来して老化を防ぐ

髪の毛のチェック。写真はイメージ。（写真／Adobe Stock）

　ここから分かったのは、メラノサイト幹細胞の老化のメカニズムである。メラノサイト幹細胞が、毛包の中を動き回り、これによってメラニン色素を作る能力を保っており、逆にこの細胞が毛包の中で動けなくなると、メラノサイトを作り出せなくなると分かった。

　具体的には、髪の色を作り出すメラノサイト幹細胞は、毛包内の2つの異なる状態を行き来することで、若々しい状態を保っていた。この幹細胞は毛包の中を移動しながら、色のついた髪を作り出す成熟した「メラノサイト」の状態と、未熟な「メラノサイト幹細胞」の状態を行き来していた。そうすることで、細胞がリフレッシュされ、老化を避けられるため、髪の色を維持できていた。このように、成熟した状態と未熟な状態を行き来して、若さを維持しているというのはこれまで知られていない現象で、新たな発見となった。研究グループによると、このメラノサイト幹細胞の動きをコントロールすることで、白髪を予防できる可能性があると説明している。

　人がなぜ白髪になるのかはこれまでよく分かっていなかったが、今回の発見で細胞が動けなくなるかどうかが髪の老化につながると分かった。今後、細胞をどう動かすかが分かってくれば、白髪予防が可能になる可能性もある。

参考文献

Sun Q, Lee W, Hu H, Ogawa T, De Leon S, Katehis I, Lim CH, Takeo M, Cammer M, Taketo MM, Gay DL, Millar SE, Ito M. Dedifferentiation maintains melanocyte stem cells in a dynamic niche. Nature. 2023 Apr;616(7958):774-782. DOI: 10.1038/s41586-023-05960-6.Epub 2023 Apr 19. PMID: 37076619.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37076619/

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