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身体醜形障害と整形との関連は?海外の報告

カレンダー2023.5.4 フォルダー最新研究

ポイント

  • 身体醜形障害と美容医療との関連を探る研究が行われている
  • 鼻の整形を希望する人の半数が身体醜形障害の症状を経験したという海外の研究報告がある
  • 一方、一般集団との間に差はないという研究もあり、国などで違いがある可能性もある
顔の関心。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

顔の関心。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 美容医療の普及に伴い、自分を魅力的ではないと思い込んでしまう精神疾患「身体醜形障害」への関心が高まっている。海外では、身体醜形障害と美容医療との関連を探るため、研究者がさまざまな調査を行っている。その一つが鼻の整形との関連。鼻の整形は日本と異なり、海外では鼻を低くするタイプの手術が行われている場合もよくあるが、こうした研究は身体醜形障害を考えるヒントにはなる。

鼻の整形手術と身体醜形障害に関連がある?

容姿。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

容姿。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 今回は、鼻の手術に関連して、身体醜形障害と美容医療に関する3つの研究を取り上げる。同じような研究論文は日本にはあまり見当たらないが、南米や中東などでは身体醜形障害と美容医療との関連を調べた研究が複数見つかる。国によって美容医療に対する考え方が異なり、研究内容にも影響を与えているのかもしれない。最初の2つはブラジル、最後はイランで、いずれも鼻を低くする鼻の整形手術がよく行われている国である。

 美容外科の専門医学誌である、エステティック・プラスティック・サージェリーに掲載された2019年の報告で、サンパウロ連邦大学の研究グループが、鼻の整形を希望する人は、「身体醜形障害」および「外見に関連する強迫性障害」を経験していることが多いと明らかにした。

※強迫性障害とは、過度の不安やストレスにつながる強迫観念が繰り返されることを特徴とする精神的な病気。例えば、忘れ物がないかなど物事を繰り返し確認したり、ルーチンを必ずやらないと気が済まないなど同じ行動をとったりして、これらが不安やストレスにつながっている状態が挙げられる。これらの症状が過剰になると精神的な病気と見なされ、治療が必要になる場合もある。

 この研究の内容は次の通り。研究グループが鼻の整形を希望する50人を調べたところ、48%に身体醜形障害の症状、54%に中等度から重度の外見関連の強迫性障害の症状が認められたことが判明した。この研究では、美容整形手術を希望する人を調べ、必要であればカウンセリングを受けてもらったり、メンタルヘルスの専門家を紹介したりすることも重要と強調している。

 一方で、パラナ連邦大学の研究グループも、鼻の整形を希望する人の中に身体醜形障害がどれくらい認められるのかを、一般集団と比べて検証した。これは2021年にエステティック・プラスティック・サージェリーで報告された。

 この研究では、鼻の整形を希望する57人と、ランダムに選ばれた一般集団の31人を対象に身体醜形障害に当てはまる人の割合を調査した。すると、身体醜形障害は、鼻の整形を希望するグループの35.1%に認められたのに対して、一般集団では3.2%にとどまった。これは統計学的に有意な差だった。鼻の整形を手術を希望する人の中には身体醜形障害が多いという結果になる。

関連はあまりないと見なす研究結果も

鏡。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

鏡。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 こうした身体醜形障害と美容医療との関連性は国によって異なる可能性もある。イラン、シラーズ医科大学の研究グループは、鼻の整形を希望する人の身体醜形障害と、自己愛性パーソナリティ障害との関連を調査しているが、やや異なる結果が判明した。2021年にエステティック・プラスティック・サージェリーで報告された。

※自己愛性パーソナリティ障害は、いわゆるナルシストの症状が強い状態のことで、その程度が過剰な場合に人格的な異常として治療の対象になる。

 これは鼻の整形を希望する380人を対象にした研究だが、結果として、研究グループは、軽度、中程度、重度の身体醜形障害の症状をそれぞれ31.6%、43.4%、25%に認めた。しかし、この割合は一般集団の割合と同様だった。また、29.5%が自己愛性パーソナリティ障害であることも判明したが、これも一般集団と変わらなかった。唯一、自己愛性パーソナリティ障害の割合が高いという関連が確認されたのは高学歴であることだった。

 ブラジルの研究とイランの研究はアプローチが違うものの、ブラジルの研究では鼻の整形を希望する人の身体醜形障害が多い可能性を指摘しているのに対して、アジアの国であるイランでは必ずしも一般の人たちと差はないという結果を報告しており、双方の間には差がある。

 美容整形と身体醜形障害の関係には、それぞれの国に住む人々の顔の特徴、行われた手術の種類、美容整形に対する考え方など、さまざまな要因が影響する可能性がある。また、豊胸手術などの他の形成外科手術についても、身体醜形障害との関連性が研究されている。日本ではこのテーマに関する研究は限られているが、今後、日本でも身体醜形障害への関心が高まることが予想される。

参考文献

Ramos TD, de Brito MJA, Suzuki VY, Sabino Neto M, Ferreira LM. High Prevalence of Body Dysmorphic Disorder and Moderate to Severe Appearance-Related Obsessive-Compulsive Symptoms Among Rhinoplasty Candidates. Aesthetic Plast Surg. 2019 Aug;43(4):1000-1005. doi: 10.1007/s00266-018-1300-1. Epub 2019 Jan 3. PMID: 30607575.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30607575/

de Souza TSC, Patrial MTCRO, Meneguetti AFC, de Souza MSC, Meneguetti ME, Rossato VF. Body Dysmorphic Disorder in Rhinoplasty Candidates: Prevalence and Functional Correlations. Aesthetic Plast Surg. 2021 Apr;45(2):641-648. doi: 10.1007/s00266-020-01930-9. Epub 2020 Sep 1. PMID: 32875438.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32875438/

Sahraian A, Janipour M, Tarjan A, Zareizadeh Z, Habibi P, Babaei A. Body Dysmorphic and Narcissistic Personality Disorder in Cosmetic Rhinoplasty Candidates. Aesthetic Plast Surg. 2022 Feb;46(1):332-337. doi: 10.1007/s00266-021-02603-x. Epub 2021 Nov 24. Erratum in: Aesthetic Plast Surg. 2021 Dec 20;: PMID: 34820690.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34820690/

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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