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円形脱毛症の実態が米国の大規模調査で明らかに、新薬候補の発表にも注目

カレンダー2023.4.3 フォルダー最新研究

ポイント

  • 円形脱毛症と全体脱毛症に関する大規模調査が米国で実施され実態が明らかになった
  • 1万人当たり20.2人の頻度で確認され、女性、成人に多いなどの傾向も判明した
  • 飲み薬を使った円形脱毛症の治療研究が進んでおり、発毛を促す結果が報告された
円形脱毛症では円形などの形で毛が抜け落ちる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

円形脱毛症では円形などの形で毛が抜け落ちる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 米国ハーバード大学とファイザー社は、米国における円形脱毛症や全身脱毛症の調査を実施し、その頻度やどのような人に多いのかという特徴を明らかにした。病気の実態を把握することで、脱毛症の予防や治療などの対策を取りやすくなると期待されそうだ。さらに、現在、円形脱毛症の治療に使える新しい薬候補の研究も進んでおり、治療法も登場する可能性が出ている。

円形脱毛症にかかる人はどれくらい存在しているのか

抜け毛。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

抜け毛。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 円形脱毛症は自己免疫疾患の一つで、自分自身の免疫系が毛根部にある毛包を攻撃することにより、頭皮、顔、体の毛が抜ける病気だ。重症なタイプの全身脱毛症(汎発性脱毛症)になると、体の全ての毛が抜け落ちていく。円形脱毛症による脱毛は、人の外見に大きな影響を与えるため、美容医療とも関わりも深い。

 円形脱毛症がどれくらい人に発生するのかはまだよく分かってはいない。米国ミネソタ州の調査では1万人当たり20.2人(0.2%)、平均年齢33歳で、男女差はないなどと報告された。また、皮膚科の外来を受診する0.7~3.8%が円形脱毛症の診察のために受診しているという報告もある。

 最近では、日本のお笑いタレント、餅田コシヒカリさんが10代の頃から円形脱毛症の症状に悩まされ、ウィッグを着用していると告白し注目された。日本においても、身近な皮膚の病気の一つと言える。

 そうした中で米国ハーバード大学や製薬企業のファイザー社の参加する研究グループが米国で円形脱毛症、全身脱毛症にかかっている人がどれくらいいるのかを大規模に調査し、その結果を23年3月に発表した。研究論文は米国医師会が発行するJAMAダーマトロジーに掲載された。

 論文のアウトラインは次の通りだ。

 研究グループは米国の16年から19年の健康保険のデータを分析。0.199%から0.222%の人が円形脱毛症を発症し、16年から19年にかけて新たに発症する人数が10万人当たり年間91.46人から92.90人にわずかに増加していることを突き止めた。

 また、男性よりも女性、子どもや10代よりも大人で、円形脱毛症や全体脱毛症にかかる人が多いという特徴も確認された。米国の東北地方は他の地域よりも症例数が多く、地域差がある可能性もあった。

 研究グループは、円形脱毛症を含めた脱毛症の実態を明らかにしたことで、脱毛症への対策が取りやすくなると期待している。女性で脱毛症が多いなどの特徴については、どのような理由があるのかさらに研究が必要になるとも指摘している。

円形脱毛症の治療薬が登場する可能性も

髪の毛の確認。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

髪の毛の確認。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 一方で、21年3月には、米国の製薬企業のイーライリリー社が、バリシチニブという飲み薬によって、重度の円形脱毛症で発毛が確認されたことを発表した。

 これはバリシチニブの有効性と安全性を調べた第3相試験と呼ばれる最終段階の研究で確認されたものだ。この薬は、JAK阻害薬と呼ばれるタイプの自己免疫疾患の治療薬で、イーライリリー社によると、同じタイプの薬(JAK阻害薬)は既にほかの病気の治療で使われているが、同タイプの薬としては初めて発毛を促す効果が確認されたという。なお、このバリシチニブ自体も関節リウマチやアトピー性皮膚炎など、他の自己免疫疾患を治す効果があるのかの研究も進められている。

 米国ではこの薬が円形脱毛症の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)から「ブレークスルーセラピー指定」を受けており、開発などが後押しされている。現在、円形脱毛症に対してFDAが承認している治療薬はなく、今後、円形脱毛症の治療が米国で登場する可能性がある。

参考文献

【告白】餅田コシヒカリがウィッグをつける理由
https://www.youtube.com/watch?v=HSA9j8LDi-8

Mostaghimi A, Gao W, Ray M, Bartolome L, Wang T, Carley C, Done N, Swallow E. Trends in Prevalence and Incidence of Alopecia Areata, Alopecia Totalis, and Alopecia Universalis Among Adults and Children in a US Employer-Sponsored Insured Population. JAMA Dermatol. 2023 Mar 1:e230002. doi: 10.1001/jamadermatol.2023.0002. Epub ahead of print. PMID: 36857069; PMCID: PMC9979012.
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/fullarticle/2801705

Baricitinib is First JAK-Inhibitor to Demonstrate Hair Regrowth in Phase 3 Alopecia Areata (AA) Trial
https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/baricitinib-first-jak-inhibitor-demonstrate-hair-regrowth-phase

Kwon O, Senna MM, Sinclair R, Ito T, Dutronc Y, Lin CY, Yu G, Chiasserini C, McCollam J, Wu WS, King B. Efficacy and Safety of Baricitinib in Patients with Severe Alopecia Areata over 52 Weeks of Continuous Therapy in Two Phase III Trials (BRAVE-AA1 and BRAVE-AA2). Am J Clin Dermatol. 2023 Mar 1:1–9. doi: 10.1007/s40257-023-00764-w. Epub ahead of print. PMID: 36855020; PMCID: PMC9974384.
https://link.springer.com/article/10.1007/s40257-023-00764-w

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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