そもそも目の下が膨らむのはなぜ?
膨らみの正体は「眼窩(がんか)脂肪」
顔面骨の目の部分は、「眼窩(がんか)」と呼ばれる穴になっています。ここに入っている眼球を、クッションのように包んで支えているのが「眼窩脂肪」です。 この眼窩脂肪が前に飛び出してくると、目の下が膨らんで見えるようになってしまいます。
カナ先生によると、目の下の膨らみは年齢に関係なく、20代から目立つ人もいるのだとか。
ヒフコ
カナ先生、今日はよろしくお願いします。 若い方でも目の下の膨らみが目立つことがあるのですね。
カナ先生
遺伝的な原因もあるので、若くてもご家族に目元の膨らみが目立つ方がいる場合は、目の下のクマやたるみができやすい傾向にあります。 反対に、痩せ方で皮膚が薄く、彫りが深い顔立ちの方は、目元が凹んだような印象を与えやすいですよ。
眼窩脂肪がポコっと飛び出す原因
若くても気になる場合
生まれつきや遺伝でもともと眼窩脂肪の量が多い方は、下まぶたの脂肪を覆っている「隔膜」を押し出すようにして、眼窩脂肪が前に飛び出します。 このあふれ出た眼窩脂肪が原因となり、若くても目の下に膨らみや凹みができ、クマのように見えることがあるのです。
加齢が原因の場合
目の下が膨らんでいるというお悩みは、ある程度年齢を重ねた方に多いようです。年齢とともに、目の周りでは次のような変化が起こります。
眼球を支えるじん帯や眼輪筋が緩んで眼球が下がる
↓
眼球が下がることで、眼窩脂肪が眼窩から押し出される
↓
眼窩脂肪を包む隔膜も緩むと、脂肪を抑え込むことが難しい状態となり、膨らみになる
また、カナ先生によると、若い頃から膨らみが目立つ場合は、早めに脱脂術を受けることで将来的な目元のたるみ予防にも繋がるそう!
ヒフコ
SNSなどでも、若い方が脱脂術を受けたという投稿が増えていますね。
カナ先生
20代から目の下の膨らみが目立つ人は、押し出された眼窩脂肪により皮膚が伸びることで、たるみやシワが目立つことも。 将来の肌トラブル予防のためにも、早めに治療を検討すると良いかもしれませんね。
目の下の膨らみ・タイプ別おすすめの治療法
目の下の膨らみ改善には、症状によって適した治療法が異なります。
ヒフコ
クマの見分け方って難しいですよね。まず、自分で判断できるポイントがあれば教えてください。
カナ先生
ご自身のクマが目の下の膨らみと凹みのどちらかなのかは、以下のどちらに当てはまるかチェックしてください。
【目の下の膨らみセルフチェック表】
膨らみが目立つタイプには「脱脂術」
ヒフコ
目の下の膨らみが目立つ場合に適している治療方法について教えてください。
カナ先生
膨らみは「脱脂術」ですっきりとした印象にできることが多いです。
ヒフコ
文字通り、脂肪を取る手術なんでしょうか。目元の手術はダウンタイムも心配です。
カナ先生
脱脂術は下まぶたの内側を少しだけ切り、脂肪を除去した後に縫い合わせる方法です。 1週間ほど内出血が出ることがありますが、比較的ダウンタイムが少ない治療になります。 翌日からメイクが可能なので、クマをカバーする感覚で内出血をカバーすると、より目立ちにくくなるでしょう。 また、数日〜1週間ほどしっかりテープ固定することで、よりダウンタイム期間を短縮しやすくなります。
脱脂術を受けた後、仕事には行ける?
ヒフコ
術後は、仕事を休んだ方が良いでしょうか?
カナ先生
パソコンなどで目を酷使するようなお仕事以外であれば、脱脂術の翌日から仕事に行かれる方が多いですね。 人前に出るお仕事の方でも、3〜4日程度経過すればある程度目立ちにくくなるので、メガネやマスクで上手にカバーしている方もいらっしゃいます。
目の下の膨らみと凹みが混在しているタイプには「ハムラ法」
ヒフコ
目の下の膨らみと凹みを、同時に治療する方法について教えてください。
カナ先生
こちらのタイプの方は、目の下の脂肪の位置を移動させる「ハムラ法」で治療をすることが多いです。 脱脂術とヒアルロン酸や脂肪注入のコンビネーションをおすすめすることもあります。
ヒフコ
脱脂術とハムラ法の違いは何でしょうか?
カナ先生
ハムラ法は脂肪を取るのではなく、膨らみのもととなる眼窩脂肪を凹んでいる箇所に移動し、目元の凹凸をフラットに整える方法です。 皮膚を切開する場所によって、「表ハムラ法」と「裏ハムラ法」の2通りに分かれます。
ハムラ法と裏ハムラ法の違い
ヒフコ
下まぶたの表側を切る方法が「表ハムラ法」、内側を切る方法が「裏ハムラ法」なのですね。
カナ先生
ゴルゴラインの少し上にある「ティアトラフ(目の下の靭帯)」が目立つ場合には、そこへ脂肪をかぶせて縫うハムラ法が適しています。 脱脂よりも凹みがフラットになりやすく、表ハムラ法であれば、余っている皮膚も同時に切除可能なので、たるみ改善もできるんですよ。
ヒフコ
表ハムラ法と裏ハムラ法は、それぞれどのような方に向いていますか?
カナ先生
適応になる方のタイプは以下の通りです。
【ハムラ法の適応タイプについて】
- 表ハムラ法→「ティアトラフの凹みが目立つ・皮膚のたるみ・余りが目立つ方」
- 裏ハムラ法→「皮膚の余りが少なく、切除不要の方」
ヒフコ
ハムラ法のダウンタイムはどのくらいでしょうか
カナ先生
1〜2週間程度、脱脂術よりも広い範囲に内出血が生じやすいです。 また、表ハムラ法は肌表面、裏ハムラ法は下まぶたの内側に、髪の毛ほどの細さの糸が付いた状態となります(1週間程度)。
ヒフコ
目元に縫合用の糸がついていると目立ちますよね? ハムラ法の術後、仕事は休んだ方が良いでしょうか?
カナ先生
縫った部分は、かなり近距離で見られないかぎり気付かれないことが多いです。特に今は、マスクで目の下ギリギリまで隠して対応する方も。 ダウンタイムには個人差があるので、念のため事前に数日お休みを取っておき、外出時はメガネなどで目元をカバーするのも良いでしょう。
治療方法比較表
カナ先生から伺った目の下の4つの治療方法を比較すると、以下の表のようになります。 適応になる症状や費用、ダウンタイムなどを参考にしてみてください。
目の下の膨らみ治療成功のために注意したい3つのポイント
手術後はなるべく鏡を見ない
術後の状態が気になって、鏡で確認したくなるのも仕方のないことですが、術後の眼には安静が一番です。 鏡を見る時は、自分でも気づかぬうちに目の筋肉を酷使しています。
目の筋肉を動かすことで回復が遅れてしまうため、鏡は見ないで我慢しましょう。
目の周りは触らない
術後はとてもデリケートな状態です。極力触らないように注意しましょう。 回復を早めようとマッサージするのは絶対にNGです。傷が開いて出血するリスクがあるだけでなく、かえって腫れが長引く可能性も。
また、気になるからといって、患部を指で押したりするのもやめましょう。押した部分の組織が癒着して、指圧痕が残ってしまうことがあります。
クリニック選びは慎重に
納得のいく治療を受けるためには、カウンセリングがとても大切です。 不明点や不安がある場合は、事前のカウンセリングでしっかり相談しましょう。リスクやデメリットについても丁寧に説明してくれるクリニックだと安心です。
気が進まない治療を無理に勧めてきたり、カウンセリング当日に無理に契約を勧めてきたりするクリニックには注意が必要といえます。 また、医師のプロフィールチェックも必須です。
形成外科専門医の資格を持っている医師は皮膚や筋肉の動きなどを熟知しているので、理想の目元に近づけてくれる可能性が高いです。症例写真を見せてもらうのも参考になるでしょう。
脱脂術とハムラ法に関するQ&A
ヒアルロン酸や脂肪注入と併用した方が良いの?
ヒフコ
よくSNSで見かける疑問で、脱脂術とヒアルロン酸や脂肪注入を同時に行うように勧められることがあるというものがあるのですが、なぜ脂肪を取りながらも注入する必要があるのでしょうか?
カナ先生
脱脂と脂肪やヒアルロン酸注入を併用が必要かどうかは、手術を受けられる方の症状によります。以下に当てはまる方は併用したほうが仕上がりが綺麗になります。
【目元の手術を併用した方が良い方】
①脂肪をとることで目元に段差ができる (皮膚と脂肪を包んでいる膜がつながっている箇所が、脂肪を取ることで段差になることがある)
②ティアトラフ(目の下の靭帯)が目立つ方
③目の下に凹みと膨らみが混在している
ヒフコ
そうなんですね。では、注入と脱脂術は同日にやったほうがいいんでしょうか?
カナ先生
同日にも可能ですし、後日仕上がりを見てから必要であれば追加で注入をするという形でも大丈夫です。後日行う場合は、術後の腫れや瘢痕の回復を待つ必要があるため、脱脂術から最低でも半年は開ける必要があります。
アイメイクやマツエクはいつからOK?
ヒフコ
アイメイクやマツエクなどは、術後はしばらく控えた方が良いでしょうか。
カナ先生
アイメイクは翌日からOKですが、なるべく擦らずに落とせるアイテムを使うと◎ マツエクやまつ毛美容液は、薬剤が患部への刺激となる可能性があるので、術後2週間程度は控えていただいています。
ヒフコ
目の膨らみ治療について、一気に詳しくなりました。 カナ先生、どうもありがとうございました!
今回お話を伺った先生
望月香奈先生
望月香奈先生のプロフィール
東京大学形成外科医局にて形成外科専門医を取得。 美容外科専門医(JSAPS&JSAS)。トリプル専門医 医学博士。 クリニックに勤務の傍ら、女性ならではの細やかな技術力とセンスで、医学的知見に基づいた美容医療を伝えるドクターとして活動中。
経歴
2009年東京女子医科大学医学部
所属
日本形成外科学会正会員・専門医