注射で小顔になれると人気の「エラボトックス」ですが、なかには術後にたるみが出たと悩んでいる方も…。良くも悪くも効き目が大きいため、後悔しないためにも押さえておきたい注意点をいくつかご紹介します。
エラボトックス(ボツリヌス注射)とは?
エラボトックスは、ボツリヌス注射によって顔のエラ張りを解消する「切開せずに小顔になれる」と人気の施術法です。注射に用いられるボツリヌストキシン製剤は、食中毒などで知られるボツリヌス菌から抽出されたタンパク質です。この成分には筋肉の動きを抑制する効果があるため、エラ張りの原因となっている咬筋の過剰な筋肉の収縮を弱めて萎縮させることで、フェイスラインをスッキリさせ小顔効果をもたらしてくれると言われています。
ちなみに「ボトックス」とは米国アラガン社が製造・販売するボツリヌストキシン製剤の商標登録名。一般的にこの「ボトックス」という呼び名が広まっているため、施術の正式名称「ボツリヌス療法」のこともボトックスと呼ばれることが多く、エラに打つ施術は「エラボトックス」という施術名になっているクリニックが多いようです。
施術後、なんだか顔がたるんで見える?!
中にはエラのボツリヌス注射後、エラは小さくスッキリしてきたのに、思ってもみなかった他の部位に影響が出て悩んでいる人も少なくないようです。よく見受けられるのが「逆に頬骨が目立つようになり、いびつな輪郭になった」「頬がげっそりとこけて、ムンクの叫びのようになった」「ほうれい線が以前より目立つ」「口元がたるんで見える」「口の横に変なボリュームが出てきた」という声。なぜこのような影響が出てしまうのでしょうか?
たるみが出てしまう原因は?
大抵の場合は小さくなっていく顔の筋肉に合わせて、ある程度皮膚が縮まるので問題ありませんが、次のようなことが主な原因としてあげられます。
筋肉のボリュームが小さくなることで皮膚が余ってしまう
咬筋のボリュームによってピンと張っていた皮膚が、咬筋が小さくなることで、中身が減ったクッションカバーのように不安定な状態になります。余った皮膚は重力によって下へ垂れ下がるため、マリオネットラインやほうれい線が目立つように。これは過激なダイエットや脂肪吸引など、短期間に急激な痩せがあった場合でもよく起こる現象で、咬筋が大きめで、エラに引っ張られるようにしてフェイスラインが保たれている方は要注意です。
多量のボツリヌストキシンを投与した場合
過剰にボツリヌストキシン製剤を投与した場合や、小顔になりたいからと必要以上に長期間打ち続けると効きすぎで筋肉が痩せ細り、頬がこけたりたるみが生じたりすることがあるようです。筋肉を長期間使わないことで生じる廃用性萎縮が起きるため、打ちすぎの場合は元に戻り辛くなることも。
注射を打つ場所
注射の打ち方よっても影響が出ることがあるようです。咬筋は前側と後ろ側の2腹に分かれ、更に下方は2腹が重なっていて前腹が浅層、後腹は深層にあります。前腹の下方と後腹全体にボツリヌストキシン製剤を効かせると、頬がこけることなく筋繊維が細くなり、フェイスラインがスッキリするようです。
施術を受けた時の年齢
また40歳以上の方は女性ホルモンの減少によるコラーゲンの生成が鈍化、紫外線ダメージの蓄積、表情筋の衰えなど、どうしてもたるみが出やすくなる年代なので気を付けたいですね。
たるんでしまった場合、対処法はある?
効きすぎた場合、治療回数が1~2回程度であれば半年~1年ほど時間を置くと、効果が切れて咬筋はほぼ元の太さに戻ると言われています。ただし複数回治療を重ねていたり、年齢的な問題があったりすると戻りにくくなってしまうこともあるようなので、それぞれの症状に合った対処法をいくつかご紹介します。
脂肪が垂れ下がってきている場合は脂肪溶解注射
顔の脂肪が前に下がってきている場合には脂肪溶解注射という方法もあります。脂肪溶解注射は未承認薬を含めると複数の種類があります。脂肪細胞を分解・溶解させることで脂肪溶解を促し、半永久的な効果が得られると言われています。しかし腫れや内出血、左右差が生じる可能性があります。
治療間隔は1か月ごとに2~3回の施術が推奨されます。
肌の土台からのリフトアップやタイトニングにはハイフ(高密度焦点式超音波)
風船がしぼむ感じでハリが無くなりたるみが出たような場合には、皮膚の浅い層を引き締める目的でハイフシャワーという方法もあります 。ハイフシャワーは皮膚の浅い部分1.5mm・2.0mmを標的に、シャワーのように広く熱を届ける治療法です。リフトアップ目的のハイフが4.5mmの深さにあるSMAS層から引き上げるのに対し 、ハリを司るコラーゲンなどが存在する真皮層に熱を与えることで、しぼんだ皮膚のタイトニング効果や肌質改善、肌のハリやツヤに対しての効果が期待できると言われています。
咬筋が縮んだことで脂肪が下がってたるみが出ている場合は、リフトアップを目的とした4.5mmと3mmのハイフのほうが適していると言えるでしょう。ハイフは肌表面を傷つけることなく、複数の層にピンポイントで超音波を照射することができます。特に肌の奥深くに最初にハイフ施術を行い、同日にボツリヌス注射をしても問題ないようですが、すでにボツリヌス注射をした後の施術の場合は、ボツリヌス製剤は熱に弱いため効果が弱まらないよう、1か月以上あけての照射が推奨されています。施術時間はハイフシャワーなら10~15分程度、リフトアップ用のハイフなら30〜60分程度で、効果の持続期間はハイフシャワーで1~2か月、ハイフで半年~1年ほどとされています。費用は顔全体でハイフシャワーで20,000~60,000円程度、リフトアップ用のハイフで100,000〜300,000円前後のようです。
デメリットとしては、照射後、赤み、腫れ、打撲痛のような圧痛、一時的な感覚変化(一過性まひ等)、軽い内出血のような症状が生じる場合があります。赤みは数時間〜数日、そのほかの症状は数日〜数週間で自然におさまります。
肌のゆるみを引き締め、ハリ感をアップさせるサーマクール(高周波)
高周波(ラジオ波)を使って真皮層から脂肪層まで広範囲にアプローチすることで、コラーゲン線維を収縮して引き締めるとともに長期間にわたるコラーゲン再構築の効果で ハリを回復することを目的とした治療法です 。さらに毛穴の引き締めといった効果も期待できます。照射直後には、熱によるコラーゲンの収縮によるタイトニング効果を、術後約1 ~3ヶ月後くらいからコラーゲンの増生によるハリ感アップやリフトアップ効果が現れて、約半年間持続すると言われています。
こちらも最初にサーマクールを行い、その後ボツリヌス注射という順番か、2週間~1か月ほど期間をあけることが推奨されています。施術時間は30~60分、効果の持続期間は、費用は300~600ショットで100,000~350,000円前後のようです。
コラーゲンをアップさせるコラーゲンブースター
Collagen booster(=コラーゲンの増幅剤)は注入剤で、自分自身のコラーゲン増生を促す目的で使われます。水光注射やメソガンなどを用いて広範囲に満遍なく浅く注入することで 、自然にふっくらとしたハリ感が回復し、シワやたるみの改善効果が期待できるとされています。ヒアルロン酸などは定期的に追加することで効果を持続させますが、注入後保持される期間が1~4年(種類によって異なる)と長いのが特徴。ただし注入後の溶解剤がないため注意も必要です。副作用としてはアレルギー反応、凹凸感などがあります。施術時間は10分程度で、費用は製剤の種類によって異なりますが60,000~220,000円前後のようです。
たるまないための予防法はある?
若いうちに施術を受ける
エラのボツリヌス注射を受ける場合は、肌の柔軟性が高い20~30代前半までに施術を受ける方が良いようです。
適正な治療間隔を守る
頻繁に体重が増減すると皮膚が伸びたり縮んだりすることでたるみやすくなるように、1度ボツリヌス注射で小さくした咬筋をそのまま放置して、元のボリュームに戻ってしまった後に、また注射で小さくすることを繰り返すのはたるみの原因となります。医師に指示された適正な間隔で治療を継続し、ボリュームを保つようにしましょう。
自分の肌の状態を知っておく
顔の脂肪量や筋肉のつき方などは個人差が大きいため、小顔になるためにはボツリヌス注射だけでなくアフターケアの施術が必要な場合もあります。またボツリヌス注射と同時進行でたるみ治療機器を併用することで、たるみも未然に防ぐことができそうです。費用や時間の面からも、事前に知っておくことは大事ですね。そのためには医師の腕や経験、知識が大切なので上手な先生を探すこともポイント。自分の骨格や顔の形から、ボツリヌス注射後どんな影響が出てきそうか、アフターケアが必要かどうかなどのリスクまで、相談しながら詳しく説明してくれる先生は信頼できそうですね。
まとめ
今人気のエラボトックス(ボツリヌス注射)ですが、仕上がりイメージの相違を回避するためにも、術後に起こるかもしれない影響リスクについて情報収集し、カウンセリングの際には医師としっかり相談してからスタートすることが大切です。たるみや頬コケを防ぎながら素敵な小顔を目指せるように、この記事が皆様のお役に立てることを願っております。
記事監修
- 古山恵理 先生
- 自由が丘クリニック
- 08008088200
2013年杏林大学医学部卒業
北里大学北里研究所病院 入職
2015年国立病院機構東京医療センター形成外科 入職
(自由が丘クリニック非常勤医としても勤務)
2017年都立総合小児医療センター形成外科 入職
2018年国立病院機構東京医療センター形成外科 入職
2020年自由が丘クリニック形成外科・美容外科 常勤医として入職