
紫外線で起こる光老化。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
紫外線を長期間浴びることで起こる光老化は、細胞のDNA修復力によって進行の程度が変わることが分かった。しかも、光を浴びてからの1時間が重要である可能性がある。
ポーラ化成工業が2025年12月に発表した。
紫外線で傷つく細胞のDNA

肌への影響は?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
光老化とは、皮膚が紫外線に長期間さらされ続けることで、シミやシワなどの老化が進む現象を指す。紫外線の中でもUVBは表皮細胞のDNAに直接ダメージを与えることが知られており、DNAのキズが蓄積することが光老化の背景にある。
皮膚の細胞はもともとDNA修復機構を備え、ダメージを修復する仕組みがある。
今回ポーラ化成工業の研究チームが注目したのは、「紫外線を浴びた直後のDNA修復」。DNA修復の研究は、照射後30分〜数時間の変化が主な対象だったのに対して、研究チームは光を浴びた瞬間からのダメージについて詳しく調べた。
注目したのは、加齢などで減少し、DNA修復を始める合図を出す「IGF1」の受容体であるIGF1R(Insulin-like Growth Factor 1 Receptor)。紫外線直後の修復に関与すると考えられていたものの、その詳細な仕組みは明らかになっていなかった。
※実験では、IGF1Rの遺伝子発現量を人工的に下げた表皮細胞と正常な細胞を用意し、UVBを照射。その後10分、30分、60分という早いタイミングで、DNA修復に関与する酵素であるATMおよびPOLLの遺伝子発現を比較。
研究では、IGF1Rの発現を抑えた細胞では、UVB照射後10〜30分のDNA修復因子の活性が低下していた。60分後には修復因子の発現差はなくなるものの、DNAの損傷は増え続け、最終的には正常細胞の約4.6倍に達していた。
「直後の修復」が鍵に

IGFR発現量が減少した表皮細胞はUV照射直後からDNA損傷が増え続ける。(出典/ポーラ化成工業)
今回の研究は、紫外線対策が日焼け止めのような「遮断」だけでなく、肌が持つDNA修復力(研究チームが「UVディフェンス力」と呼ぶ能力)も重要であることを示した。
UVBは表皮のDNAに直接キズをつけ、光を浴びた瞬間から損傷が始まるが、ダメージをどれだけ早く、どれだけ効率良く修復できるかが、光老化の進み方に影響する可能性がある。
ポーラ化成工業は、表皮細胞のIGF1R発現を高める植物由来成分の探索を行い、ヨーロッパ原産のキク科多年草で、古くから肌をすこやかに保つ目的で用いられてきた「アルニカ」から抽出したエキスが有効である可能性を確認した。
光老化は、シミやシワ、たるみの予防にとって重要であり、今後、皮膚細胞におけるDNA損傷の修復の仕組みが、さらに注目される可能性がある。
