
消費者庁は2025年9月11日、美容医療の事故を公表。(出典/消費者庁)
消費者庁は2025年9月11日、脂肪吸引の手術後に呼吸困難を引き起こし救急搬送、貧血と診断されたケースを公表した。
消費者庁の公表と今回の事故

事故は救急搬送される事態に。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 公表元→消費者庁が、美容医療などの健康被害を「重大事故等」と「重大事故等以外」に分けて定期的に公表
- 今回の分類→脂肪吸引により呼吸困難が発生した事故は「重大事故等以外」として報告
- 事故の概要→2025年8月、東京都のクリニックで脂肪吸引を受けた後、呼吸困難を発症し救急搬送。診断は貧血
消費者庁は、美容医療を含む消費生活上の健康被害を定期的に死亡に至るなどの「重大事故等」、その他の「重大事故等以外」としてまとめ、一般に公表している。公表内容は簡潔で詳細は示されないが、今回、重大事故等以外として、美容医療において脂肪吸引により起きた事故が公表された。
ヒフコNEWSが確認する範囲では、2025年1月の美容皮膚科での多汗症治療後の手指のしびれ、2月のエステでのヤケド以降、美容医療やエステ関連の事故の報告は途絶えていたが、引き続きトラブルが発生していることが明らかになった。
事故情報は次の通り。事故は、東京都で2025年8月に発生したもので、脂肪吸引後に呼吸困難を起こして救急搬送され、貧血と診断された事例。重大事故等以外と分類されているが、危険な状況に陥っていた可能性がある。
| 公表日 | 分野 | 事故内容(原文) | 発生都道府県 |
|---|---|---|---|
| 令和7年8月15日 | 医療サービス(美容) | クリニックにおいて、脂肪吸引の手術を受けたところ、呼吸困難等を発症し、救急搬送。貧血と診断。 | 東京都 |
これまでの報告からも、首や顎下の脂肪吸引では出血が血腫(血液がたまった状態)となり、この血腫によって気道が圧迫されて呼吸困難を引き起こすとされている。今回の報告で施術部位は明らかにされていないが、過去の類似事例を踏まえると、首や顎下の脂肪吸引だった場合には、同様の仕組みが関与していた可能性もある。
過去の取材「首の脂肪吸引で呼吸困難」

ブラジルからの論文報告で公開された写真。あご下の脂肪吸引の後に血腫が発生。(出典/Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2022 May; 27(3): e257–e264.)
- 過去の重大事例→2023年4月、国内で脂肪吸引後に呼吸困難を起こし、死亡した事故が報告されている
- ヒフコNEWSの取材→顎下脂肪吸引後に血腫が悪化し、30代女性が夜間に呼吸困難を訴えてICUに搬送された事例を紹介
- 海外の報告→ヒフコNEWSでは、ブラジルでの脂肪吸引後に呼吸困難を発症した事例に関する論文も紹介
脂肪吸引で呼吸困難を引き起こす事例は過去に報告されている。2023年4月には国内で死亡事故が起きている。
また、ヒフコNEWSでは、顎下脂肪吸引の術後に血腫が悪化し、夜間に呼吸困難を訴えて救急搬送、ICU管理となった30代女性の体験談を取材した。
本人は 「これは副作用なのかな?と思ってしまうんです。結局、私は呼吸が苦しくなって初めてこれはもう異常事態だと判断しましたが、その境目が素人には分かりづらい。正常な副作用なのか、それとも危険な状態なのか、その線引きが難しいです」と語り、異常の早期発見の難しさが示されていた。また、連絡もうまく取れず、夜間連絡体制の不備が浮き彫りとなった。
この女性の証言に加えて、ヒフコNEWSではブラジルからの脂肪吸引後の呼吸困難に関する論文報告も紹介している。
脂肪吸引を検討するときには、過去の情報も参考に万が一の事態についても理解しておくことが求められる。
