ヒフコNEWSでは美容医療チェーンの院長を対象として専門医資格の保有状況について独自に調査した。そのプロセスの中で、医学部を卒業してから美容医療施設に入職するまでの期間が2年の医師が少なくないことも確認できた。
そこで今回は医学部卒業から最短で美容医療施設に入職した医師の実態について院長の調査に基づいて報告する。
医学部卒業後、最短で美容医療に入職する経歴
日本では、医学部を卒業した後、2年間の初期臨床研修(以下、初期研修)と呼ばれる期間を経て、診療に必要な基礎を身に付けなければ、原則的に診療行為に当たることができない。一般的には、初期研修を終えると、専門医の資格を得るために3年間専攻医として必要な専門研修を続けることが多い。しかし、専門研修を受けなくても診療は可能となる。
実際、初期研修を終えた医師が専門研修を経ずに、直接美容医療施設に入職するケースがある。
このような医師については、美容医療の講演などで「直美」という言葉で表現されるのを聞いたことがあった。「なおみ」ではなく「ちょくび」と読まれる。これは広く認知されている用語ではないが、一つのトレンドを表していると考えられる。
冒頭の通り、美容医療チェーン院長を対象に専門医資格を調査する中で、直美と見なすことができる経歴を歩んだ院長が複数確認された。
調査対象とした美容医療チェーン | 調査対象院長 | 最短の入職と判断できた院長の人数 | 割合 |
---|---|---|---|
湘南美容クリニック | 124人 | 32人 | 26% |
城本クリニック | 25人 | 0人 | 0% |
共立美容外科 | 23人 | 0人 | 0% |
東京美容外科 | 18人 | 0人 | 0% |
品川美容外科 | 15人 | 5人 | 33% |
聖心美容クリニック | 10人 | 1人 | 10% |
合計 | 215人 | 38人 | 18% |
美容医療の安心・安全の担保は欠かせない
確認すると明らかな通り、湘南美容クリニックや品川美容外科の院長に、医学部卒業から最短で入職した院長が目立つ結果となった。一方で、城本クリニック、共立美容外科、東京美容外科では一人も確認できなかった。専門医資格を持つ院長は当然専門研修を受ける必要があるため、専門資格を持つ院長が多い美容医療チェーンでは、医学部卒業から最短で入職する院長も少なくなる関係はあるだろう。
今回の調査は院長を対象としたものなので、入職したタイミングからの年月が比較的長い医師が少なくない。最近入職した医師も含めると、院長を対象とするよりも「直美」の経歴を持った医師の比率は増えている可能性もある。
また、調査する中で、初期研修の2年を経てすぐに美容医療施設に入職したと考えられる人のほかに、1~2年ほど他の医療機関に入ってから美容医療に入職する医師も確認された。医学部卒業から3年、4年を経過してから入職した医師も含めると、割合はさらに増えることになる。
一方で、美容医療を担っている医師のトレーニングが不十分であるという指摘が上がることもある。医学部卒業後、最短で美容医療に入職する医師が増えているとした場合、安全・安心な美容医療を間違いなく行えるようにするための仕組みも必要になるのだろう。