
美容施術者自身も身体醜形症であることが?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
美容医療に従事する医師は、自身の外見への関心が高く、場合によっては精神的な影響を受けている可能性があることが、最新の研究により示された。
2025年6月に発表された英国の研究グループによる国際共同研究では、アルゼンチンで行われた調査に基づき、美容施術に携わる医師の8.2%が身体醜形症(Body Dysmorphic Disorder:BDD)の可能性があると評価された。
美容の現場が抱える課題の一つと考えられる。
施術者にも強まる「美のプレッシャー」

美容の現場。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 美容施術者への外見プレッシャー→美容医療従事者は、他人の外見を扱うだけでなく、自らの「美しさ」も求められ、心理的負担を抱えやすい。
- 身体醜形症のリスク→アルゼンチンでの調査により、美容施術者は弁護士より約7.6倍、身体醜形症を示す傾向が高かった(オッズ比=7.59)。
- 身体醜形症の認知度→美容医師の91.8%が身体醜形症についての知識を有しており、認知が高い中で自身が影響を受けている可能性も。
美容医療の分野では、施術者は来院する人々の外見的な希望に応える一方、施術者自身が「美しさ」への意識を高く保つ必要に迫られ、そのプレッシャーにさらされている可能性がある。
SNSなどで拡散される理想的な容姿や、施術者自身の外見が来院する人々の信頼や選択に影響する面もある。美容の現場では二重の心理的な負担がかかっていると考えられるという。研究チームは、こうした環境が抑うつや不安を悪化させ、身体醜形症のリスク因子となり得ると想定した。
今回の調査では、アルゼンチン国内で、美容医療に従事する医師98人(美容医師72人、形成外科医26人)と、比較対象として弁護士101人を対象に、精神的ストレス、抑うつ、不安、身体醜形症に関する質問票を用いた調査が実施された。
結果として、身体醜形症の可能性があるとされたのは、美容施術者で8.2%、弁護士では2.0%だった。
詳しく分析した結果、美容医師は弁護士と比べて約7.6倍、身体醜形症を示す傾向が高いことが明らかとなった(オッズ比=7.59、P=0.03)。
また、美容医師の大多数(91.8%)が身体醜形症についての知識があると回答しており、認知度の高さとともに、自身がその影響を受けている可能性も示された。
「自己注入」経験のある医師、スコアが高めに

美容医師にかかる心理的な負担の可能性。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 自己注入の経験→美容医師の約3割が、自らヒアルロン酸などのフィラーを自己注入した経験があると回答。
- 身体醜形症スコア→自己注入経験者は、他者から施術を受けた医師や未経験者よりも、身体醜形症の傾向スコアが最も高かった。
- 精神的リスクとの関連→身体醜形症のスコアが高い医師は、抑うつ・不安・ストレスのスコアも高く、特に抑うつとの関連が強い。
調査では、美容医師のうち約3割が、自身にヒアルロン酸などのフィラーを自己注入した経験があると回答した。
この自己注入を経験していた場合、他人から施術を受けた場合や、施術を受けたことのない場合と比べて、身体醜形症の傾向を示すスコアが最も高かった。
また、身体醜形症のスコアが高い医師ほど、抑うつ・不安・ストレスのスコアも高いことが判明した。特に、抑うつスコアは身体醜形症との関連が最も強かった。
これらの結果は、美容医療従事者における身体イメージへの関心や精神的負担が、心理的なリスクに関連している可能性を示している。
研究チームは、こうした背景から精神的サポートや心理教育の導入が必要と指摘している。
身体醜形症が、一般や美容医療の利用者の間でも知られるようになってきているが、美容施術者自身にも関連する課題として注目される可能性がある。
