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光老化を左右するUVを浴びた直後の「DNA修復力」 表皮細胞の特徴がダメージに影響、ポーラ化成工業が報告

カレンダー2025.12.7 フォルダー最新研究
紫外線で起こる光老化。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

紫外線で起こる光老化。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 紫外線を長期間浴びることで起こる光老化は、細胞のDNA修復力によって進行の程度が変わることが分かった。しかも、光を浴びてからの1時間が重要である可能性がある。

 ポーラ化成工業が2025年12月に発表した。

紫外線で傷つく細胞のDNA

肌への影響は?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

肌への影響は?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 光老化とは、皮膚が紫外線に長期間さらされ続けることで、シミやシワなどの老化が進む現象を指す。紫外線の中でもUVBは表皮細胞のDNAに直接ダメージを与えることが知られており、DNAのキズが蓄積することが光老化の背景にある。

 皮膚の細胞はもともとDNA修復機構を備え、ダメージを修復する仕組みがある。

 今回ポーラ化成工業の研究チームが注目したのは、「紫外線を浴びた直後のDNA修復」。DNA修復の研究は、照射後30分〜数時間の変化が主な対象だったのに対して、研究チームは光を浴びた瞬間からのダメージについて詳しく調べた。

 注目したのは、加齢などで減少し、DNA修復を始める合図を出す「IGF1」の受容体であるIGF1R(Insulin-like Growth Factor 1 Receptor)。紫外線直後の修復に関与すると考えられていたものの、その詳細な仕組みは明らかになっていなかった。

※実験では、IGF1Rの遺伝子発現量を人工的に下げた表皮細胞と正常な細胞を用意し、UVBを照射。その後10分、30分、60分という早いタイミングで、DNA修復に関与する酵素であるATMおよびPOLLの遺伝子発現を比較。

 研究では、IGF1Rの発現を抑えた細胞では、UVB照射後10〜30分のDNA修復因子の活性が低下していた。60分後には修復因子の発現差はなくなるものの、DNAの損傷は増え続け、最終的には正常細胞の約4.6倍に達していた。

「直後の修復」が鍵に

IGFR発現量が減少した表皮細胞はUV照射直後からDNA損傷が増え続ける。(出典/ポーラ化成工業)

IGFR発現量が減少した表皮細胞はUV照射直後からDNA損傷が増え続ける。(出典/ポーラ化成工業)

 今回の研究は、紫外線対策が日焼け止めのような「遮断」だけでなく、肌が持つDNA修復力(研究チームが「UVディフェンス力」と呼ぶ能力)も重要であることを示した。

 UVBは表皮のDNAに直接キズをつけ、光を浴びた瞬間から損傷が始まるが、ダメージをどれだけ早く、どれだけ効率良く修復できるかが、光老化の進み方に影響する可能性がある。

 ポーラ化成工業は、表皮細胞のIGF1R発現を高める植物由来成分の探索を行い、ヨーロッパ原産のキク科多年草で、古くから肌をすこやかに保つ目的で用いられてきた「アルニカ」から抽出したエキスが有効である可能性を確認した。

 光老化は、シミやシワ、たるみの予防にとって重要であり、今後、皮膚細胞におけるDNA損傷の修復の仕組みが、さらに注目される可能性がある。

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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