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NMNの視力への好影響が示されるも、歩行や握力の改善は認められず、大阪大学の研究

カレンダー2023.4.13 フォルダー最新研究

ポイント

  • NMNと老化をめぐって安全性と有効性の検証が継続している
  • 大阪大学の研究では歩行能力や握力への効果は示されなかった
  • 一方で「心身の弱り(フレイル)」と「視力」への効果が示された
栄養素。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

栄養素。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 老化を遅らせるという説もある栄養素の「NMN」がサプリメントや点滴などとして提供され、人気が高まっている。その効果はまだ完全には解明されていないものの、ここ数年、多くの研究者がその研究を進めている。21年には著名な科学誌のサイエンスにNMNの代謝改善効果を示す論文が掲載された。最近、大阪大学の研究グループが、高齢の男性を対象に安全性と有効性を確かめる研究を行った。しかし、その研究結果とは?

NMNとエイジング、 安全性や有効性の検証が続いている

研究が続いている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

研究が続いている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 NMNはβ-ニコチンアミドモノヌクレオチドの略で、正常な身体機能に不可欠な物質である「ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD+)」の体内での生成に使われている。NMNはNAD+を増やすことで、肥満や老化の防止につながるとされる。

 2021年、米国ワシントン大学の研究グループは、NMNの摂取が代謝を改善する可能性があると、著名科学誌のサイエンスに報告した。継続的な研究により、NMNが健康に役立つと示され、美容医療でも注目されている。

 そうした中で、今回、日本の大阪大学を中心とした研究グループはNMNが安全で老化防止に有効であるかについて新しい研究を実施した。結論から言うと、NMNは特定の身体能力を向上させる可能性はあるものの、主に注目していた歩行能力や握力を向上させることを決定的に示すものではないという結果になった。研究成果は、2023年1月に老化に関連する医学雑誌ジェリアトリクス・アンド・ジェロントロジー・インターナショナルに掲載された。

 研究のアウトラインは次の通りだ。研究グループは、身体能力が低下している高齢の糖尿病を患う男性14人(平均年齢81歳)を対象に6カ月間の研究を実施した。参加者は2つのグループに分けて、NMNのサプリメントを摂取するグループと、プラセボを摂取するグループにランダムに分かれてもらった。その上で、毎日いずれかを摂取してもらい、特に握力と歩行速度が改善するかに注目して変化を検証した。このほか摂取の影響についてほかの指標からも分析した。

「心身の弱り(フレイル)予防」や「視力」には効果

サプリメントの効果。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

サプリメントの効果。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 こうして確認されたのはNMNは安全に使用でき、重い副作用もなかったものの、NMNとプラセボとの間で、握力や歩行速度に差は見られないという結果であった。

 ただし、心身が弱る「フレイル」の比率はNMNを摂取したグループで少なく、視力に関連する網膜の中心部の厚みがNMNを摂取したグループで厚いことが確認された。

※フレイルとは、肉体的および精神的に弱った状態になること。また、人とのつながりが乏しくなるなど、社会的に弱い立場に置かれるという意味も含む。

 以上が論文の要点となる。NMNの効果については、継続的に研究が行われている。今回の大阪大学の研究は、高齢で、男性、しかも糖尿病をわずらう人を対象にしていた。摂取する人の条件でも効果には違いが出てくる可能性はある。NMNの効果を検証した研究はほかにもあり、ヒフコNEWSでも随時伝えていく。

参考文献

Yoshino M, Yoshino J, Kayser BD, Patti GJ, Franczyk MP, Mills KF, Sindelar M, Pietka T, Patterson BW, Imai SI, Klein S.
Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women. Science. 2021 Jun 11;372(6547):1224-1229. doi: 10.1126/science.abe9985. Epub 2021 Apr 22. PMID: 33888596; PMCID: PMC8550608.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33888596/

Akasaka H, Nakagami H, Sugimoto K, Yasunobe Y, Minami T, Fujimoto T, Yamamoto K, Hara C, Shiraki A, Nishida K, Asano K, Kanou M, Yamana K, Imai SI, Rakugi H. Effects of nicotinamide mononucleotide on older patients with diabetes and impaired physical performance: A prospective, placebo-controlled, double-blind study. Geriatr Gerontol Int. 2023 Jan;23(1):38-43. doi: 10.1111/ggi.14513. Epub 2022 Nov 28. PMID: 36443648.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36443648/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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