美容目的でプラセンタを肌に導入する施術を扱うクリニックが数多くあります。プラセンタを肌に導入することで、どのような肌変化を実感できるのでしょうか。この記事では、プラセンタ導入で期待できる効果や方法について解説します。
プラセンタとは
プラセンタは、妊娠中に哺乳動物の体内で作られる「胎盤」から抽出された「胎盤エキス」のことを指します。胎盤には、細胞分裂をさせて全身の細胞を作る「成長因子」が含まれており、ヒトの場合、もともと1つの細胞であった受精卵を約10ヶ月間で赤ちゃんの姿へ成長させるほど、豊富な栄養素を持っているといわれているのです。
2020.02.12
プラセンタが表皮に与える影響
表皮は、約0.2㎜程度(サランラップ1枚ほど)と非常に薄い組織ですが、バリア機能の役割を果たし、見た目にも重要な役割を担っています。下から基底層、有棘層、顆粒層、角質層という4層構造をしており、基底層で新しい細胞が作られて、有棘層、顆粒層と上がっていき、最終的に角質層になり、その角質層が剥がれ落ちるというターンオーバーを常に繰り返しています。
プラセンタには様々な成長因子が豊富に含まれ、細胞分裂を促す働きがあるため、基底層から新しい細胞が作られる際のサポートや、ターンオーバーを正常化し新陳代謝を高めることで、「肌の生まれ変わり」を促進するといわれています。
プラセンタ導入で期待できる表皮の変化
- キメが整う
- くすみが改善される
- 乾燥の改善
- 毛穴が目立ちにくくなる
- シミ、そばかす、肝斑の改善
プラセンタが真皮に与える影響
表皮の下に位置する真皮はコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの線維で構成されており、肌のハリや弾力が保つ働きをしています。
その中でもコラーゲンは加齢や紫外線、糖化などによって劣化するといわれており、古くなると弾力を失ってしまいます。また、表皮細胞とは異なり、短期間でターンオーバーを繰り返す性質がないため、新しく生み出すには平均して早くて2年、長いと10年ほどのサイクルが必要です。さらに、年齢を重ねるごとにコラーゲン・エラスチン共に生成されにくくなり、ヒアルロン酸の保有量も減少するため、真皮層のハリや弾力は衰えやすくなります。
真皮層の要ともいえる線維を新しく生成しているのが「線維芽細胞」と呼ばれる細胞です。プラセンタには線維芽細胞の分裂を促し、健康なコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を新しく生成する働きを活性化させる効果も期待できます。
プラセンタ導入で期待できる表皮の変化
- 小じわの改善
- ハリや弾力の増加
プラセンタの導入方法について
プラセンタは、ただ肌に塗るだけでは皮下に浸透しにくい成分です。この章では効率よくプラセンタを肌内部へ浸透させる導入方法をご紹介します。
プラセンタ導入の施術方法
医療機関で行われるプラセンタ導入の方法は、大きく分けて3つあります。これらの導入方法は、肌の悩みや求める効果によって使い分けられます。
イオン導入
肌に微弱電流をあてて、イオン化させた水溶性の美容成分を導入する方法です。通常、プラセンタは肌に塗布するだけでは浸透しにくいといわれていますが、イオン導入は微弱電流によりプラセンタをイオン化させることで、真皮層まで有効成分を届けることが可能とされているのです。
また、イオン導入はプラセンタ以外にもビタミンCやトラネキサム酸などの成分も導入できますが、導入できる物質には、水溶性であり、分子量(成分の大きさの単位)が小さいものという条件があります。ダウンタイムが少ない施術のため、美容医療のファーストチョイスとして選ばれることが多いようです。
【期待できる効果について】
- シミ・くすみの改善
- ニキビ・ニキビ跡の改善
- 保湿力の増加
- 肌のキメを整える
- 肌代謝促進効果による美白
【施術回数の目安】
1〜2週間に1回を目安に5回以上継続して行う
【注意点】
- 稀に赤みが出る可能性がある(すぐに治ることが多いが、長引く場合はクリニックへ連絡)
- 妊娠中は施術不可
- 施術後の紫外線対策と保湿を入念に行う
エレクトロポレーション
肌に特殊な電気パルスをあてて、一時的に皮膚に空洞(穴)をつくり、有効成分を導入する方法です。
電気の力を用いて有効成分を肌内部へ浸透させる、という点はイオン導入と同じですが、水溶性で分子の小さい成分のみ導入可能なイオン導入と異なり、エレクトロポレーションでは、水溶性物質でも油溶性物質でも導入が可能です。さらに、分子量が大きいものでも導入できるのが特徴で、粒子が大きく、針を使用して注入しなければ浸透が難しいといわれていたコラーゲンやヒアルロン酸などの成分も、肌の深部へ浸透させることが可能とされているのです。一説には、エレクトロポレーションはイオン導入のおよそ20倍もの浸透力があるともいわれています。
また、エレクトロポレーションは、プラセンタ以外の様々な成分も同時に導入できるというメリットもあります。コラーゲンやヒアルロン酸などと一緒に導入することで、素早くハリを実感できるでしょう。
【期待できる効果について】
- シワ・たるみの改善
- シミ・くすみの改善
- ニキビ・ニキビ跡の改善
- 保湿力の増加
- 肌のキメを整える
- 肌代謝促進効果による美白
【施術回数の目安】
2週間に1回程度を目安に5回以上継続して行う
【注意点】
- 稀に赤みが出る可能性がある(すぐに治ることが多いが、長引く場合はクリニックへ連絡)
- 妊娠中は施術不可
- 施術後の紫外線対策と保湿を通常よりも入念に行う
ダーマペン
肌の真皮層まで髪の毛よりも細い極細の針を刺し、その後の創傷治癒力によって肌状態の改善を目指す方法です。ダーマペンで肌に穴を開けた後、成長因子を含むプラセンタを直接真皮へ浸透させていきます。ハリや弾力の向上だけでなく、ニキビ跡の凹みや毛穴なども気になる方は、より肌変化を実感しやすい方法といえるでしょう。
また、ダーマペンもプラセンタだけでなく、水溶性・油溶性を問わず、分子量の大きい有効成分も導入できます。自分自身の創傷治癒力に加え、複数の有効成分を同時に肌の深層へ届けられるため、多くの肌悩みを抱える方へ推奨されることが多いようです。
【期待できる効果について】
- 肌のハリ・弾力向上
- ニキビ跡の凹凸の改善
- 毛穴の開き
- シワ・たるみの改善
【施術回数の目安】
3〜4週間に1回を目安に、3〜5回程度継続する
【注意点】
- 施術直後から3日前後、赤みや出血が見られることがある
- 施術後約12時間は洗顔やメイクは不可(可能であれば施術翌日もメイクを控えた方が良い)
- 入浴や激しい運動は、肌の赤みが引くまで不可
- 施術後の紫外線対策と保湿を通常よりも入念に行う
- 施術後1ヶ月程度は、レーザーやピーリングなどの施術を避ける
- 施術後3日程度は、ディフェリンやベピオゲルなど剥離作用のある外用薬使用を控える
プラセンタ導入まとめ
美容を目的にプラセンタ導入を行っているクリニックがあります。比較的ダウンタイムが少なく、プラセンタ導入は手軽に試しやすい美容医療の一つともいえます。ハリや弾力だけでなく、他の肌悩みも改善したい方は、プラセンタと同時に導入できる有効成分について、クリニックで相談してから施術を受けると良いでしょう。
この記事を書いたのは
- 宮田哲朗
- ㈱UTP 学術部部長 3,000件以上のクリニック、エステティックサロンに携わった経験を元に、化粧品やサプリメントなどをプロデュースし、数々のヒット商品を手掛ける。 著書に「美肌作りの3分ルール」、「プロのための美肌メソッド」