美容クリニックでは定番の施術となりつつある高濃度ビタミンC点滴。「美容のビタミン」としてよく知られているビタミンCを効率的に体に取り入れられるだけでなく、免疫力アップにも効果が期待できると注目が集まっています。
この記事では、高濃度ビタミンC点滴とはどのようなものなのか、いろいろな化粧品を使ったり、エステに通ったりしているけれど、今一つ効果が実感できないという人、これから試してみたいという人のために詳しく解説します。
高濃度ビタミンC点滴ってどんなもの?
高濃度ビタミンC点滴とは、文字どおりビタミンCを点滴で注入することで、ビタミンCの血中濃度を高める施術です。その方法や点滴がよいと言われる理由を見ていきましょう。
ビタミンCが「美容ビタミン」と呼ばれるわけ
まずはビタミンCについて復習しておきましょう。ビタミンCは13種類あるビタミンの一つで、水に溶ける性質を持っています。化粧品やサプリメント、食べ物の成分表示ではアスコルビン酸と表記されていることが多く、美容や健康によいとされています。
その理由の一つに、ビタミンCがコラーゲンの生成に不可欠であることが挙げられます。言うまでもなく、コラーゲンは肌のハリや弾力の源。若々しい弾むような肌は、コラーゲンなくしては得られないのです。その生成に深くかかわっていることや、「体のサビ」と呼ばれる酸化を防ぐ抗酸化作用、シミやそばかす、日焼けを防いだり改善したりする美白作用など、美容によいとされるさまざまな作用があるのです。
また、白血球中の好中球や単球、リンパ球に含まれるT細胞やNK細胞といった免疫細胞の生産と機能を刺激する働きもあります。「風邪をひいたらビタミンCを取るとよい」と言われるのはこのためです。
免疫力と美容にはどんな関係がある?
ちょっと疲れたり生活が乱れたりすると、吹き出物や肌荒れが……。こんな経験は誰にでもあることでしょう。これは肌の免疫力が低下している証拠。外部から侵入してくるほこりや花粉などの刺激に対する抵抗力が衰え、本来運ばれてくるはずの栄養素が不足するためです。
また、肌だけでなく髪にツヤがなくなったり、抜け毛や切れ毛が増えたりといった髪のトラブルや、爪が割れる、二枚爪になるなど爪にも影響が表れやすくなります。免疫力は美容にも大いに関係があると言えるでしょう。
点滴がおすすめの理由
ビタミンCを始めとするビタミン類は、人間の体に不可欠の栄養素でありながら、体内ではほとんど生成できません。そのため、食べ物から摂取しなくてはならないのですが、ビタミンCは水溶性で加熱によって壊れやすいという特性を持っています。また、美容や健康のために多めに取りたいと思っても、一定以上の量を摂取すると尿とともに排出されてしまいます。
しかし、高濃度ビタミンC点滴なら、経口摂取する数十倍のビタミンCを直接静脈に注入することで、血中濃度を高めることが可能。体のさまざまな部位へダイレクトに届けられるので、ビタミンCの美容・健康効果がより高まることが期待できるのです。
高濃度ビタミンC点滴で期待できる効果
高濃度ビタミンC点滴でさまざまな効果が期待できます。自分が今改善したい症状に合うかどうか、ぜひチェックしてみてください。
コラーゲンの生成を促進
高濃度ビタミンC点滴の効果として、まず挙げられるのがコラーゲンの生成促進です。コラーゲンは骨の20%、軟骨の50%を占めており、皮膚だけでなく骨や筋肉、関節などの弾力や強度を保っています。年齢とともにコラーゲンの生成力は低下していくので、高濃度ビタミンC点滴でビタミンCを補うことでサポートしましょう。
美白作用
紫外線を浴びると、ダメージを肌の深部に到達させないよう、脳が司令を出してメラニン色素を生成し、肌の色を濃くして守ろうとします。シミやそばかす、日焼けなどを引き起こすメラニンが生成されるのはこのためです。ビタミンCは肌を黒くするメラニン(ユーメラニン)の生成を阻害するだけでなく、すでに生成されたメラニンの色を白色化する還元作用もあります。
抗酸化作用
活性酸素は本来人間の体に必要なものですが、過剰になると細胞を破壊し、生活習慣病などの疾患を引き起こす要因になります。ビタミンCには「体のサビ」とも呼ばれる活性酸素を無害化したり、肌から守ったりする働きがあります。
免疫力の向上
すでに述べたように、ビタミンCが免疫細胞の生成や機能をサポートする働きがあります。また、抗ウィルス作用のあるインターフェロンを増やすとも言われており、免疫力を高めることが期待できます。ただし、高濃度ビタミンC点滴で疾患が治るというわけではないので、治療目的で受けるのはおすすめしません。
疲労回復
運動などによって酸素が大量に消費されると、同時に活性酸素の生成も活性化されます。その結果、筋肉や自律神経細胞が活性酸素によるダメージを受けて疲労が起こるのです。ビタミンCはその抗酸化作用によって活性酸素を無害化し、疲労の原因を取り除きます。また、抗ストレス作用もあるので、ストレスによる血流の低下を改善して疲労回復を促してくれます。
高濃度ビタミンC点滴のメリット・デメリット
美容に関心のある人なら、高濃度ビタミンC点滴で期待できる効果は見逃せないでしょう。しかし、どんなものにもメリットとデメリットが存在します。高濃度ビタミンC点滴も例外ではありません。施術を検討している人は、どちらもよく知っておいてくださいね。
メリット
経口摂取より高濃度のビタミンCを摂取できる
食べ物やサプリメントからのビタミンC摂取には限界があります。また、吸収するのにも時間がかかりますし、その前に排出されてしまったりビタミンC自体が酸化してしまったりして、効果を感じにくいかもしれません。
高濃度ビタミンC点滴の場合、直接静脈に注入するため、経口摂取より高濃度のビタミンCを効率的に全身に行き渡らせることができます。
即効性がある
高濃度ビタミンC点滴は特に疲労回復に効果を発揮します。通常の数十倍のビタミンCを注入するため、経口摂取よりも即効性があるのがメリットです。
デメリット
費用がかかる
高濃度ビタミンC点滴はクリニックでしか受けられませんが、健康保険は適用外です。そのため、初診料や施術にかかる費用はすべて自己負担です。また、G6PD異常症の人は25g以上のビタミンC投与で溶血性貧血を起こす恐れがあるため、事前にスクリーニング検査が必須になります。
自由診療扱いなので、クリニックや点滴の内容によって異なりますが、初診料や検査料を別として、1回あたり15,000円前後かかるのが一般的です。
多少の痛みがある
静脈に針を刺すので、多少の痛みはあります。しかし、点滴をしている間に痛みやしびれを感じた時は、すぐにスタッフに申し出ましょう。
時間がかかる
点滴は少しずつ注入していくので、どうしても時間がかかります。高濃度ビタミンC点滴も、投与量によりますが最短でも30分から1時間は見ておきましょう。時間に余裕がある時の施術をおすすめします。
高濃度ビタミンC点滴で内側からきれいに
スキンケアももちろん重要ですが、体の内側から働きかける高濃度ビタミンC点滴をプラスすることで相乗効果が期待できます。また、近頃疲れやすい、風邪をひきやすいという人にもおすすめ。美容目的だけでなく、免疫力を高めたい健康志向の人も要注目の施術方法です。
記事監修
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山下真理子先生
京都府立医科大学を卒業して、医師に。 大阪市内で美容医療に携わりながら、医療教育にも従事。 コラムの執筆やモデル業の傍ら、17公式ライバーとしてライブ配信も行っている。