上唇を引き上げる動きには「上唇挙筋」と「上唇鼻翼挙筋」の2つの筋肉が関係しています。これらの筋肉の力が通常よりも強すぎると、笑った時に唇が歯茎の上まで引っ張り上げられてしまいガミースマイルになると言われています。
筋肉に問題があるガミースマイルには、筋肉の力を抑制させるボトックス注射が有効だとされています。

笑った時に上の歯茎が目立ってしまうガミースマイル(Gummy Smile)。実は男性よりも女性の方が多く、約1020%の方が悩んでいると言われています。このガミースマイル、症状によってはボトックス注射でも治療が可能だということをご存知でしょうか?

どうしてガミースマイルになるの?

どうしてガミースマイルになるの?

ガミースマイルとは、笑った時に上の歯茎の多くの部分が見える状態のことで、一般的に3mm以上歯茎が露出すると、違和感を覚え始めるといわれます。そのため歯茎がコンプレックスとなり、笑うことをためらってしまう方もいらっしゃいます。また歯茎が乾燥しやすくなることで、口の浄化作用が上手くいかずに細菌が繁殖しやすくなり、口内環境が悪化すると虫歯や歯周病、歯肉炎、口臭の原因になることも。
欧米では歯並びと同様にガミースマイルに対する意識が日本よりも高いため、治療を受ける人も多いようです。

顎の骨に原因がある場合

上顎の骨が前に出ている、または少し大きい場合、もしくは下顎が小さい場合はガミースマイルになることがあります。顎骨の大きさは先天性の場合もありますが、食生活や口呼吸、唇を噛む、頬杖をつく、いつも横向きで寝るなどの生活習慣の癖が原因になりうることもあるため、日頃から意識しておきたいですね。

また鼻下から唇の中心までの長さ(上唇長)が短いと、歯や歯茎が露出しやすくなります。上唇長の平均は男性で22~24mm、女性で20~22mm程度と男性より女性の方が短いようです。顎の骨に問題があるガミースマイルは、上顎の骨を切除する手術をすることで改善すると言われています。

歯や歯の生え方、歯茎に原因がある場合

歯に関連する原因は大きく2つあります。

1つめは歯の大きさや生え方。例えば見えている歯の縦の長さ(歯冠長)が短いために、歯茎が広く見えてしまっている場合。歯冠長の標準サイズは中切歯11.3mm側切歯10.1mm犬歯11.4mm程度で、1本の歯の縦横比は10.8となっていますが、これよりも歯が短い方は歯茎の面積が広くなってしまいます。また歯が生えている場所が低かったり、歯に歯茎が被さっていたりすることも要因になります。

2つめは歯茎。前傾斜が強く歯が出っ歯になる場合、歯茎自体が長い場合も、唇が上がりやすくなるため歯茎が見えてしまいます。指しゃぶりや爪を噛む癖は出っ歯に繋がってしまうので、早めに治した方がいいですね。また加齢や歯周病によって歯茎が痩せて歯が下がってきた時も、ガミースマイルになることがあります。

歯の生え方や歯茎に問題があるガミースマイルは、歯科矯正や、歯茎を切除して歯茎のラインを上げる治療などで改善が可能だと言われています。

上唇の筋肉に原因がある場合

上唇を引き上げる動きには「上唇挙筋」と「上唇鼻翼挙筋」の2つの筋肉が関係しています。これらの筋肉の力が通常よりも強すぎると、笑った時に唇が歯茎の上まで引っ張り上げられてしまいガミースマイルになると言われています。

筋肉に問題があるガミースマイルには、筋肉の力を抑制させるボトックス注射が有効だとされています。

ガミースマイルを根本的に治したい場合はどんな治療法があるの?

ガミースマイルを根本的に治したい場合はどんな治療法があるの?

ガミースマイルを根本的に改善するためには、切開を伴う治療が必要なこともあり、時間や費用がかかりますが、その分効果は高いようです。主な治療法として次の4つが挙げられます。

歯科矯正

歯科矯正用のアンカースクリューを使用して歯茎を上へ持ち上げる方法です。アンカースクリューとは直径1.42mmほどの極めて小さなネジで、インプラント治療などで使用されます。ネジを骨に埋め込み、そこを支点とすることで、強い牽引力を歯にかけることができます。前歯部分の歯茎にアンカースクリューを埋め込み、そこを支点にして、歯に装着したマルチブラケット装置をゴムで繋ぎ、前歯を歯茎方向へ少しずつ動かして歯茎を短くしていきます。

ただし、この方法では前歯を持ち上げられるのは約3mm程度が限界とされているため、それ以上動かす必要がある場合は外科手術となります。

歯並びの状態にもよりますが、アンカースクリューを用いることで従来の歯科矯正よりも早くなったとはいえ、治療期間は2~3年程度かかり、通院は1~2か月に1回ほど必要になります。強い力で引っ張るため、歯根が溶けて短くなる現象(歯根吸収)が起こりやすい事、治療終了後も後戻りを防止するためにリテーナーと呼ばれる保定装置の着用が必要になります。

費用は治療前のカウンセリングやレントゲン撮影、歯型取りが必要であれば6万円前後、治療には80150万円、治療後はリテーナー装置、定期健診などで1~10万円程度かかることが多いようです。アンカースクリュー代が追加料金として発生する場合は15,00035,000円程度ですが、治療費に含まれる場合もあるので事前に確認しておきましょう。

上唇粘膜切除術(LIP

上唇粘膜切除術は、上唇の裏にある歯茎の上側の粘膜部分を切除して短くする方法です。1回の施術で長く効果が持続できますが、上唇挙上筋が発達すると多少後戻りすることもあるようです。粘膜を取り過ぎると上唇が動き辛くなり、喋りにくくなるなど支障が起こる可能性があります。

手術は90分程度、通院は当日と抜糸の2回ほどで終わり、費用は18~30万円前後です。上唇に3~7日間腫れが生じる場合があるため仕事などのスケジュール調整が必要なこと、慣れるまでは引きつったような違和感があること、唇の裏側を切るので普段傷が見えることはありませんが、切開位置を間違えると笑った時に傷跡が見えてしまうこと、などの問題が出る可能性もあります。

歯冠長延長術(CLP

歯冠長延長術は歯が小さい、または歯の大きさは普通でも歯茎が歯に被さっていることで、ガミースマイルを生じている場合に適応される治療法です。

歯と歯茎位置を上げることで、笑った時や話しているときに見える歯茎の幅を少なくします。歯と歯茎のラインを上げるため、前歯6本にセラミックを被せる治療と併用することも多く、歯の大きさ、歯茎のライン、歯並び、歯の形を同時に治すことができるメリットもあります。

手術時間は90分前後で、通院は当日と抜糸の2回程度。後戻りしにくいため理想的な口元をキープできますが、落ち着くまでに1~2週間のダウンタイムが必要です。

歯冠長延長術は15万~30万円(115,00030,000円)、セラミックと併用する場合は1815万円で68本必要になるため48120万円追加になります。

骨切り手術

骨切り手術は骨格に原因のある重度の方に向いています。上顎骨を切って短くし後ろに下げる手術は「ルフォーⅠ型骨切り術」と呼ばれています。

ルフォーⅠ型骨切り術は上顎骨を水平に切除して上の歯全体を上に引き上げて固定し、歯茎が見ないようにしてガミースマイルの改善を図ります。施術時間は180分程度、全身麻酔で行われるため1泊の入院が必要になり、個人差もありますが手術後は強い腫れや痛みが1~2ヶ月続き、落ち着くまでに半年程度はかかるともいわれています。費用も40275万円と高額になり、かなり大掛かりな手術といえます。

ガミースマイルのボツリヌス療法について

ガミースマイルのボツリヌス療法について

上記の治療法は根本的にガミースマイルを治すことができますが、手術をするのは不安…という方には、ボツリヌス注射(ボトックス)という方法もあります。中でも筋肉が原因で、上唇が必要以上に引き上げられてしまっている方にはかなり効果的といえます。

メリットは?

施術時間は530分と短時間。効果が出るまで23日ほどかかり、その後は個人差もありますが36か月程度持続します。薬剤の効果が切れると元に戻ってしまいますが、定期的に注射を打つと持続期間も長くなっていきます。回数を重ねるごとに、使われなくなった筋肉が痩せて徐々に小さくなっていく筋萎縮と呼ばれる現象が起こるため、35回程度の注射でかなり戻りにくくなると考えられます。

またボツリヌス注射は切開を伴わない治療のため、ダウンタイムがほとんど無く、他の人から気付かれにくいこと、身体への負担も軽くて済むのもメリットだと言われています。治療費も50,000円~75,000円程度と、他の治療法よりも比較的安価で受けることができます。

デメリットは?

注射を打った当日に効果が実感できるような即効性はありません。またその効果も6か月程度で切れるため、持続するためには定期的に注射をする必要があり、ランニングコストや通院の手間がかかってしまいます。

またドクターの技術力や経験値によっては、仕上がりに差が出ることも。顔には30種類以上の表情筋があり互いに作用して複雑な表情を作り出しているため、打つ位置や注入量などが微妙に違ってしまうと、顔に左右差が出たり、笑顔が不自然になってしまう、口の開閉に違和感が出るなどの問題が起こる可能性があります。

またボトックスは妊娠や胎児への影響がまだ明らかになっていないため、妊活中や妊娠中、授乳中の方は治療を受けることができません。リスクを減らすために注射後は2~4か月の避妊、卒乳後の施術が推奨されています。

注射はどこに打つの?

上唇を引き上げる働きをしている「上唇挙筋」と「上唇鼻翼挙筋」に注入します。上唇挙筋は目の窪みの下から唇に伸びる筋肉で、上唇鼻翼挙筋は目頭辺りから鼻筋に沿って唇に伸びる筋肉です。
注射は上唇挙筋の小鼻の脇辺りと、上唇鼻翼挙筋の鼻筋の横辺りに両側2か所ずつ計4か所に打ちますが、上唇鼻翼挙筋の近くには顔面動静脈が走っているため、血管を傷つけないように注意が必要です。

          

注入する薬剤の種類と特徴

ボツリヌス注射は、ボツリヌス菌が作り出すA型ボツリヌストキシンを抽出・精製した製剤を筋肉に注入します。
ボツリヌス注射の代名詞としてよく使われる「ボトックス」ですが、元々米国アラガン社製の製剤の登録商標のため、アラガン社製の製剤「ボトックスビスタ」を治療に使用する場合のみ「ボトックス注射」と呼ぶことができ、他の製剤の場合は「ボツリヌス注射」などと呼ばれる事が多いようです。
クリニックによって使用される製剤が異なるため、カウンセリングの際にはどの薬剤を使用するか確認しておきましょう。ボツリヌストキシン製剤にはいくつか種類があり、効果や費用に違いがあるため、ガミースマイルの治療で使用される代表的な製剤をご紹介します。

ボトックスビスタ(アメリカのアラガン社製)

厚生労働省承認、アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)認可。アラガン社製はタンパク質などの不純物が他社製に比べて少なく抗体ができにくいため、繰り返し使っても効果が下がりにくいのが特徴で、費用はやや高めですが、流通量が多く症例数も多いため安心して使用できます。5℃以下の冷所保存が必要なため、クリニックの保管状況によっては品質が劣化し、効果に影響が出ることもあると言われています。

ニューロノックス(韓国のメディトックス社製)

韓国のKFDA(韓国食品医薬品安全庁)認可。他社の製剤に比べコストパフォーマンスの良さが最大のメリットで、量が多く必要な部位によく使用されています。こちらも温度管理が必要。

ゼオミン(ドイツのメルツ社製)

アメリカのFDA、欧州のCE、韓国のKFDA認可。ボトックスよりも複合タンパクなどの異物を取り除いた、純度の高いボツリヌストキシン製剤です。他社の製剤は熱に弱く温度管理がネックとなっていましたが、ゼオミンは常温保存が可能で温度変化の影響を受けないため、安定した結果を得ることができるといわれています。

失敗しないために

ボツリヌス注射の仕上がりは、施術するドクターの腕によるといっても過言ではありません。濃度や量、注射する位置が適切でないと、笑顔が不自然になって、喋りにくくなってしまう可能性があります。実績や経験のあるドクターを探すためには、ガミースマイルの症例数をHPやカウンセリングの際に確認することも有効ですね。自分でもある程度の知識をつけておき、カウンセリングの際には不安や疑問点などをしっかりと相談し、安心して施術を受けられるようにしましょう。ボトックスの場合は、今後定期的に通院する必要があるため、クリニックのスタッフとのコミュニケーションも大切です。

また製剤は開封して間もない新しい物の方が効果を得やすいため、ボトックス治療を受ける患者が多いクリニックを選ぶのもポイントになります。

まとめ

人前で思いっきり笑えないのは、精神面だけでなく対人関係にも影響を及ぼしてしまいます。ボトックス治療では根本的な解決は望めませんが、一時的な改善はできるので「ガミースマイルが治ったら私はどんな笑顔になるのかな?」と試すことはできそうですね。
いきなり費用や時間のかかる手術や矯正での治療ではなく、まずは手軽に出来るボトックス注射から始めてみてはいかがでしょうか。この記事が、素敵な笑顔への第一歩を踏み出す一助となりますように。

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