
古山登隆(ふるやま・のぶたか)氏。自由が丘クリニック(東京都目黒区)理事長(写真/秋元忍)
古山登隆(ふるやま・のぶたか)氏
自由が丘クリニック(東京都目黒区)理事長
──男性の美容医療が一般化している。
古山氏: 確実に増えていますね。特にエグゼクティブ層の方々が多い印象です。女性は幅広い層から美容医療を受けに来ますが、男性はまず可処分所得に余裕がある層が先に動き出す傾向があります。「自分はもっとケアをした方がいいな」と気づき始めるんですよ。
シワやたるみのケアが「エチケット」にもなり得ると考えています。
──男性が美容医療を受けるうえで、特に注目すべきポイントは?
古山氏: 日本人男性の課題としては、「下顔面」と「骨格の弱さ」が挙げられます。日本の男性は髭を生やす習慣もあまりなく、またスキンケアの文化も根付いていない。海外の男性はヒゲである程度カバーされることが多いですが、日本は加齢がそのまま見えやすいのです。また加齢に伴って下顔面が崩れやすく、顔全体の印象が大きく変わってしまう。結果として、下顔面のたるみが目立ちやすくなるわけです。
──最近は男性の脱毛も増えている。
古山氏: 脱毛は「マイナスをゼロにする」感覚です。毛があって嫌なものを取り除くというシンプルな動機なので、取り組みやすいわけです。
──そこから、さらに美容医療へ進む人も多い?
古山氏: そこに大きな壁があります。脱毛は始めやすいけれど、その先のヒアルロン酸やボトックス、あるいはリフトアップまで行くとなると敷居が高い。ただ、レーザーぐらいなら、つぎのステップとして取り入れやすいかもしれません。
──男性の美容医療のゴールは女性とは異なっている。
古山氏: 男性の場合、女性ほど「綺麗になりたい」とはっきり言語化できていないケースが多いですね。
ヒアルロン酸注入を例に考えると、定型的な打ち方である「MDコード」は安全で失敗が少ない手法として大きな意味があります。定量化されていることで一定の品質を保ちやすい。でも、その一方で、注入治療に対する個性という点では、物足りない点もあります。
──男性では定型的ではアプローチをすることは難しい。
古山氏: 男性ではMDコードの枠に収まらない注入の考え方が要ると感じています。定量的なMDコードの注入法をそのまま適用すると、男性の魅力を十分に引き出せないことも少なくありません。だから、「Beyond MDコード」の視点がとても大事だと感じています。
皮膚や脂肪の状態、骨格の形状、さらにその方の魅力の方向性によって、少し違う打ち方をしないと「男性のかっこよさ」や「魅力」につながらない場合がある。私自身は、MDコードをベースにしながらも、出っ張りが弱い部位を少し強調するなど、老けた印象を取り除く工夫をすることで、個々に合ったデザインが実現できると考えています。
──男性の場合、女性より微調整が難しい。
古山氏: 実際難しいですね。韓国系の中性的なスタイルを好む人もいれば、欧州系のシャープなラインを目指す人もいる。何を理想とするかが曖昧になりがちです。一方、女性は3LTBSTといった共通のイメージが通用する面がある。男性にはまだ共通言語がありませんから、方向性が定まらないことがあります。男性の骨格や筋肉の位置など、いろいろ考えなきゃいけない。
──男性のタレントの顔を思い浮かべても、確かにその顔の魅力は一様ではない。
古山氏: それがまさに「魅力と美しさ」の違いです。「顔立ち」と「顔つき」の違いでもあります。
──それらの違いとは。
古山氏: 美しく老いるという概念は難しいですが、「魅力的に老いる」ことは可能です。顔立ちは親から受け継ぐものですが、顔つきは自分で作るもの。年を取ると渋みが出て魅力的になる人もいれば、逆に老け込んでしまう人もいる。人によっては鼻を高くする必要はないけれど、シミを取るだけで「もっと可愛らしくなる」という方向もあるのでしょう。
――美容医療によって魅力を高められる。
古山氏: 老化を必ずしも諦める必要はないわけだけれども、老化を魅力的にするにはどうしたらいいかという思考回路を持たないと、単なる朽ちていくだけになっちゃうわけですよね。
例えば、鼻を高くする必要はないかもしれない。でも、シミを取るだけで「もっと可愛らしくなる」ことはある。
男性美容は単純な「かっこよさ」ばかりではなく、いかに「魅力を高めるか」という考え方に移行していくと思います。輪郭を変えれば形が整うというばかりでなく、どこをどう足したり引いたりすれば、総合的に魅力が出せるか。そこに技術とセンスが必要ですね。(続く)
