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日韓で共通する「直美問題」、教育と制度の空白を語る、日本で学び、今は教えて恩を返す、韓国カイロス(KAIROS)院長 林鍾学(リム・ジョンハク)氏が語る 後編

カレンダー2025.4.24 フォルダーインタビュー
KAIROS(カイロス)院長の林鍾学(リム・ジョンハク)氏。(写真/編集部)

KAIROS(カイロス)院長の林鍾学(リム・ジョンハク)氏。(写真/編集部)

  • 若手医師の美容医療流入→ 保険診療の待遇悪化により、美容医療への進出が加速。「工場系」の大量施術型クリニックが増加し、手術技術の継承が懸念されている。
  • 韓国の制度の明確さ→ 医療機器の承認制度や、医師のみが施術できる規制など、日本よりも制度が整っており、安全性の担保につながっている。
  • クリニック選びの基準→ 院長が診療に責任を持ち、少人数で対応するクリニックが信頼性が高い。大手は医師の技量にバラつきがあり注意が必要。

──韓国では、医師の多くが美容医療の分野に進むようになった。専門医の取得を目指す医師との待遇の格差が問題になり、待遇格差により若手医師の大量退職が発生している。

林氏: お伝えしたように保険診療では待遇が良くありませんから美容医療への流入が続いているのです。

 日本もそうですが、美容医療はみんなが同じ事をできるようになり、施術内容の画一化しました。機械を購入して広告をうまくして、人を集めて、というところに走っている。安全性を優先しすぎて、身体に傷を付けない治療が敬遠されています。

 結果として、手術を実施する医師が減っています。私は日本との間を行ったり来たりしていますが全く一緒です。日本からの人々は、費用の安さを理由に韓国を訪れる傾向がある。食べ物も安いですからね。

 若手が美容に流れ込みましたが、ヒアルロン酸注入や機器を用いた施術を大量に行う効率重視型の「工場系」が増えました。

──韓国は美容医療機器に正式に承認を出しているケースが多く、日本よりも美容医療の規制や承認制度が明確に整備されている。

林氏: 確かにそうした点では、日本とは制度面で明確な違いがあります。国がコントロールしていますから。日本では、美容医療機器に対する承認制度が十分に整備されていません。また、韓国では医師のみが施術可能とされている点も特徴です。日本では、レーザー治療などは看護師が医師の監督下で施術することが認められていますが、韓国では、そのような医師以外による施術は認められていません。

──医師のみが施術できる点は良い。

林氏: 私たちは望ましいと考えますが、経営者は必ずしもそうではありません。看護師に施術を担当させたいと考えている。経験のある看護師であれば、医師と同様に問題なく施術を行えると考えられていますから。

──韓国ではクリニックをどう選ぶ?

林氏: 最も重要なのは、院長が診療全体に責任を持つ体制であるかどうか。私は個人でやっているクリニックが良いと思います。医師が1〜3人在籍し、少人数で診療を行っているクリニック。大手クリニックは低価格と広告によって集客していますが、医師の技量のレベルに差があり、誰が対応するかが分かりづらい。現在では医師の経歴や施術症例が公開されているため、それらの情報を基に施術を受けるクリニックを選ぶのが望ましいでしょう。口コミやウェブ上の情報が多く判断が難しいものの、信頼できる医師や施設を見極める目が重要です。

──国の「優良医療観光医療機関」の認証などは安全の指標になる?

林氏: 一定の設備基準や感染対策が整備されているかを判断する目安にはなりますが、医師個々の技量までは保証しません。医療機関の認証やライセンスに加えて、担当医の経歴や症例数を必ず確認する必要があります。

KAIROS(カイロス)院長の林鍾学(リム・ジョンハク)氏。(写真/編集部)

KAIROS(カイロス)院長の林鍾学(リム・ジョンハク)氏。(写真/編集部)

  • 学会活動と国際教育→ 韓国美容外科学会(KAAS)理事長として、解剖実習や合併症対策のセミナー、ハンズオン教育を通じて安全性向上に貢献。日本やアジア各国でも教育活動を展開。
  • 美容外科の基礎教育の重要性→ 若手医師の基本技術の未熟さに言及し、美容外科としての独立した研修制度の必要性を強調。形成外科とは異なるアプローチが求められる。
  • 今後の展望→ 若手には美容施術を委ね、自身は中高年層への再生医療・若返り治療に注力。アジア国際美容医学フォーラムを通じて、恩返しと次世代育成を目指す。

──韓国美容外科学会(KAAS、Korea Academy of Aesthetic Surgery & Medicine)理事長を務める。

林氏: 美容外科に限らず、非外科的施術も対象とした学術的活動を展開しています。学会では解剖実習や、合併症への対処法に関するセミナーを実施し、国際学会において症例の発表および情報共有を行っています。日本国内でも20年以上にわたり実技中心のハンズオン教育を実施し、安全性への意識向上を図っています。

──日本にも、若手医師が美容に流れる「直美(ちょくび)」という問題がある。

林氏: 私は日本の医師免許も持っていますので、今でも月に一度は東京で若手教育を行っています。

 そうした場で感じるのは、基本ができていないケースが目立つことです。器具の正しい持ち方、左右の手の使い方、正しい姿勢など、基本的な動作ができていないのです。基礎から理解する必要があります。

 一方で、美容外科は形成外科とはちょっと違います。形成外科の考え方をそのまま美容外科に適用すると、別の問題が生じることがあります。美容外科は美容外科としての研修が本当は必要だと思います。美容外科としての体系的な研修制度が存在しないため、私は韓国だけではなく、日本、中国、フィリピン、インドネシアでも、実技中心のハンズオン教育を自ら行っているのです。

──今後さらに活動を強化する。

林氏: 将来的には再生医療の応用により、細胞レベルで若返りを図り、外見の改善を実現する時代が訪れると考えています。若年層向けの美容施術は後進の医師に委ね、自身は中高年層に向けた質の高い若返り治療に注力する方針です。

 また、私はアジア国際美容医学フォーラムを東京で主催しています。同フォーラムを通じて、アジア各国の医師が安全かつ体系的に最新の美容医療技術を学べる機会を提供し、かつて私が日本で学んだ恩を次世代に返したいと考えています。(終わり)

記事一覧

  • 日韓の美容医療、30年間の変遷と課題を語る、韓国美容医療はなぜ先進的と見なされるのか、韓国カイロス(KAIROS)院長 林鍾学(リム・ジョンハク)氏が語る 前編
    https://biyouhifuko.com/news/interview/12342/
  • 日韓で共通する「直美問題」、教育と制度の空白を語る、日本で学び、今は教えて恩を返す、韓国カイロス(KAIROS)院長 林鍾学(リム・ジョンハク)氏が語る 後編
    https://biyouhifuko.com/news/interview/12352/

【訂正】
・文中、名前の漢字表記として鐘と記していましたが、正しくは鍾です。お詫びして訂正いたします。(2025/4/26)

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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