美容医療に用いられる新たな超音波照射機器であり、日本国内で広がりを見せている皮膚引締め用超音波照射器「Sofwaveシステム」の薬事承認に向けた手続きが進んでいる。
これを受けて2025年2月に厚生労働省が学会に対して適正な使用のための指針作成を依頼していた。これを受けて、日本美容外科学会(JSAPS)、日本美容外科学会(JSAS)、日本美容皮膚科学会(JSAD)の3学会が共同で、Sofwave(ソフウェブ)の初めての適正使用指針を策定。2025年4月21日に発表した。
厚生労働省が作成を依頼

皮膚引締め用超音波照射器「Sofwaveシステム」適正使用指針 。(出典/日本美容外科学会=JSAPS、JSAS、日本美容皮膚科学会)
- HIFUによるトラブル→ 全国的にヤケドや神経障害、目の障害などの合併症が多発し、厚労省は医療機関での医師による施術のみを認める通知を発出。
- Sofwaveへの注目→ HIFUと異なり、非集束超音波で真皮層を加熱しシワを改善する新技術。皮膚表面の保護機能も備え、安全性が期待されている。
- 適正使用指針の作成→ Sofwaveの承認に向けた国内手続きが進む中で、厚労省の依頼により3学会が合同で安全性を確保するための指針を策定。
ヒフコNEWSでも伝えているように、HIFU(高強度焦点式超音波治療、ハイフ)は、全国的にトラブルが多発し、問題となった。厚生労働省の研究班が行った調査によると、ヤケドだけではなく、神経障害や目の障害も発生するなど、重大な合併症を引き起こしていることが問題視された。その後、厚労省はエステサロンにおけるHIFU施術を禁止し、医療機関で医師による施術のみが認められると通知を出している。
こうした中で、同様に超音波を利用して熱をかけることでシワ、たるみを改善するタイプの機器であるSofwaveの効果が注目されていた。同機器は、イスラエルのSofwave Medical(ソフウェブ・メディカル)が開発した機器だ。今回の指針作成に当たって厚労省が依頼した文書によれば、日本国内での販売元ジェイメックがSofwaveの承認に向けた手続きを進めている。厚労省および学会の資料では、「皮膚引締め用超音波照射器」と記載されている。この機器には「SUPERB(同期平行超音波ビーム)」と呼ばれている技術が適用されている。
厚労省では、ハイフでのトラブル多発を教訓として、「医師が適切な使用方法を遵守しない場合、HIFU機器と同様に、熱傷や神経障害等といった有害事象が生じることが懸念されるため、適正な使用基準の策定が必要と考えております」と説明。学会に対して、適正使用指針の作成を2月に依頼していた。
こうした経緯を受け、今回、3学会が合同で適正使用指針を作成するに至った。
まずSofwaveについては次のように説明し、ハイフと作用機序が異なると指摘している。
皮膚引締め用超音波照射器「Sofwaveシステム」は、超音波を経皮的に照射し、真皮への加熱凝固作用により、中等度又は重度の顔面及び頚部のしわの改善を行うことを目的とする機器である。直接皮膚に接触する部位は、冷却システムにより皮膚表面を保護する機能も同時に提供できるように設計されている。なお、「Sofwaveシステム」が照射する超音波は非集束のものであり、HIFU機器(High-Intensity Focused Ultrasound,高密度焦点式超音波)とは作用機序が異なる。
同指針によると、海外での臨床試験では、一時的な紅斑などを除くと、重い合併症は発生していないと解説している。その上で、ハイフと異なるものの、安全性を確保するために指針を作成すると述べている。国内で、ハイフの不適切使用によって事故が相次いでいること、美容医療の希望者が増加していることを背景として示している。
施術はトレーニングを受講した医師に限定

皮膚引締め用超音波照射器「Sofwaveシステム」適正使用指針で示された治療エリアと治療禁忌エリア 。(出典/日本美容外科学会=JSAPS、JSAS、日本美容皮膚科学会)
- 使用できる施術者の条件→ 製造販売業者によるトレーニングを受けた医師に限定。実施施設は医療法に基づく医療提供施設に限られる。
- 注意が必要なケース→ フィラー使用歴、異物混入、レチノイド使用歴、妊娠中・授乳中の人など。
- 照射時の注意→ 低出力から開始し、照射禁止エリアを避ける。
実施基準として、製造販売業者によるトレーニングを受講した医師と明記した。また、実施施設は法的に定められた医療提供施設に限定した。
※指針では、医療法第1条の2第2項に規定する医療提供施設と記載している。
適用患者は、顔面や首に中等度または重度のシワがある人だ。
ペースメーカーなどの電子機器が埋め込まれている人や治療部位に皮膚の病気がある人は使用が除外される。
さらに、注意を要するケースも示された。美容医療に関連する人としては、フィラー製剤を使っている人、何らかの異物が皮膚の中にある人、過去6カ月以内にイソトレチノインなどのレチノイドを服用した人など。
妊娠中、授乳中、妊娠を予定している人、3カ月以内に出産した人への安全性が確立していないこと、小児以下の安全性が確立していないことも明記された。
照射のエネルギーは低いレベルから照射を始めることを指示している。
ヤケドや神経障害などの重い有害事象を防ぐための使用方法も示されている。
具体的には、目の周りの「眼窩」、首の前面に当たる「甲状軟骨、甲状腺、気管の上」、耳周辺の「首の前方から首に向かう縦方向の線より後方」と照射禁止のエリアが明確に示された。
顔面の神経が走行する部位での照射時には、照射を受ける人の反応を特によく確認をするように求めている。照射の際にはアプリケーターを照射面全体に密着させるように求めた。照射位置を移動するときには、確実にアプリケーターを移動させ、同一部位への連続照射を避けるよう求めている。
事前の有害事象の可能性の説明、強い痛み、筋肉の動きやけいれんがあるときは、治療を受ける本人が医師に伝えるようにあらかじめ説明することも求めている。
重篤な有害事象(熱傷、神経障害等)を防ぐための使用方法(皮膚引締め用超音波照射器「Sofwaveシステム」適正使用指針より)
- 眼窩、甲状軟骨、甲状腺又は気管の上、耳の前方から首にむかう縦方向の線より後方のエリアは照射しないこと。
- 顔面神経下顎縁枝、顔面神経側頭枝の直上又は額中央(眼窩上神経や滑車上神経が存在する)を治療するときは、患者の反応を特によく確認し、不快感が強い場合は避けて治療すること。神経の走行は、個人差や左右差があるため、治療中に強い神経反応があった場合は、直ちに照射を中止し、その部位にはそれ以上照射しないこと。
- 皮膚表面の熱傷防止のため、照射時は必ずアプリケータ照射面全体を皮膚に密着させること。アプリケータ照射面全体を密着させることができない部位には照射しないこと。
- 照射位置を移動する際は、確実にアプリケータを移動させ、同一部位への連続照射を避けること。
超音波照射を行う機器の薬事承認取得に向けた手続きが進む中で、明確に指針が示されたことは大きな動きとなる。美容医療での使用においてはこの指針に沿った使用が求められる。
