
自分の姿をどう感じるか。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
自分を魅力的ではないと必要以上に思い込む心の病気である「身体醜形障害」の人は、どれくらいいるのか。その最新の分析結果が報告されている。
メキシコの研究グループが2025年4月に美容皮膚科誌の「Journal of Cosmetic Dermatology」に発表した。
美容医療やタトゥーとも関連

自分には魅力がないと過度にとらえ、強い不安を感じる場合などが問題になる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 身体醜形障害とは→ 外見の小さな欠点に過度にこだわり、不安や対人回避を引き起こす心理的障害で、美容医療との関連も指摘されている。
- 美容医療との関係→ 美容施術に過剰依存したり、施術結果に強い失望を感じたりするケースがあり、重症例では自殺リスクもある。
- メキシコの研究→ 身体醜形障害の割合を文献調査により分析し、美容医療における不要な処置回避などに役立てようとした。
身体醜形障害の場合、外見の小さな欠点に過度にこだわり、それによって強い不安を感じたり、人と会うのを避けたりすることが起こる。
これは美容医療とも密接に関連している。自分が魅力的ではないと過剰に悩み、必要以上に美容医療に依存したり、逆に仕上がりに失望したりするケースは、身体醜形障害との関連も考えられる。場合によっては、自殺を思い立つ場合もあり得るとされる。身体醜形障害と美容医療との関連については、これまでにも調査が行われてきた。ヒフコNEWSでは、美容整形やタトゥーとの関連についての研究を紹介したこともある。
これまでの報告では、身体醜形障害を抱える人の割合である「有病率」は、0.5%から11%と幅広い推定値が存在していた。特に美容医療関連領域では2.9%から20%という高率が示されていた。
ただし、身体醜形障害と診断されるための基準や、この病気を見つけるための方法が多様であるため、結果にはばらつきがある。
そうした中で、今回、メキシコの研究チームは、過去の文献を調べることにより、身体醜形障害の有病率や、美容外科領域での有病率を分析した。美容医療における不要な処置の回避や、自殺防止といった安全確保などを目的に、詳しく数値を計算しようと考えたものだ。
美容外科、精神科、皮膚科に多い

身体醜形障害の可能性。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 身体醜形障害の割合→ 一般集団で17%、美容外科領域では24%と高く、女性の方がやや高い傾向が見られた。
- 地域別の違い→ 中南米地域では31%と特に高く、北米12%、アジア17%、欧州14%など、地域によって大きなばらつきがあった。
- 美容医療現場での課題→ 精神科的手法による評価の必要性が指摘される。英国やオーストラリアでは心理評価が義務化。
今回の研究では、重複を除いて62件の研究を対象に解析し、一般の集団での身体醜形障害の有病率は17%と判明した。女性16%、男性11%と、女性にやや高い有病率が認められた。
研究の対象になった診療科ごとの結果では、美容外科における有病率が24%と最も高く、精神科では18%、皮膚科では16%と続いた。
地域別にみると、中南米地域が31%と突出して高く、これに対して北米は12%、アジアは17%、欧州は14%、アフリカ23%、オセアニア10%となった。
さらに、診断の方法によるばらつきも確認された。
研究チームは、身体醜形障害が従来考えられていた以上に存在し、美容外科領域では4人に1人と高いことを指摘。また、美容医療の現場では、精神科の方法を用いて身体醜形症状かどうかを判断する必要性にも言及している。
また、今回の研究では、アジアの数値は17%であり、中南米などよりも低かったが、日本でも問題は存在しているとされる。ヒフコNEWSでも、美容医療分野において心の病を抱える人が少なくないという調査結果を報告している。
こうした背景もあり、英国やオーストラリアでは、美容医療の前の心理的評価が義務化されている。今後、心の病を踏まえて美容医療における対策が日本国内でも求められる可能性はある。
