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「塗るボトックス」「フィラー治療効果」など、化粧品の違反広告が韓国で問題に、虚偽誇大広告など144件を摘発、韓国食品医薬品安全処が発表、日本でも課題か

カレンダー2025.5.1 フォルダー 海外
韓国で化粧品の違反広告が摘発された。(出典/韓国食品医薬品安全処(MFDS))

韓国で化粧品の違反広告が摘発された。(出典/韓国食品医薬品安全処(MFDS))

 韓国の食品医薬品安全処(MFDS)は、「ボトックス」や「フィラー治療効果」などの医療を連想させる表現を用いた化粧品の違反オンライン広告144件を摘発したと発表した。

 日本国内でも、美容医療を連想させるような表現が化粧品の広告で使われるケースがある。韓国と同様の問題が日本にも存在している可能性がある。

薬を連想させる表現、違反広告

韓国コスメの輸出額は2024年に100億ドルを超えている。(出典/韓国食品医薬品安全処(MFDS))

韓国コスメの輸出額は2024年に100億ドルを超えている。(出典/韓国食品医薬品安全処(MFDS))

  • 違反広告の摘発→ 韓国MFDSが、医療的効果をうたった虚偽誇大広告など、144件を摘発し、アクセス制限を要請。
  • 問題表現の内容→ 「細胞再生」「抗炎症」「筋肉弛緩」「塗るボトックス」など、医薬品と誤認させる表現が主な対象。
  • 背景にある輸出拡大→ 韓国の化粧品輸出が100億ドルを突破し、粗悪広告の排除や法令順守の強化が求められている可能性。

 今回、韓国MFDSが問題にしたのは、化粧品の広告。「細胞再生」「抗炎症」「筋肉弛緩」といった医療に関連した効果をうたって化粧品をオンライン販売している営業所200カ所を調査し、違反の虚偽報告や誇張広告144件を摘発した。その上で、通信基準委員会のアクセス制限を要請したと伝えている。

 医薬品は厳密な試験を経て、効能効果を示すことが認めらている。正式なプロセスを経ていないにもかかわらず、あたかも医薬品であるかのような虚偽、誇張の内容を化粧品の広告に使用することは、法律に違反する行為となる。

 問題とされたのは、「細胞再生」「脂肪細胞増殖」「抗炎症」「筋肉弛緩」といった医学的に証明されていない表現だ。さらに、「幹細胞」「塗るボトックス」「フィラー治療効果」などの誤った効果の主張や、「二重あごリフティング」のような機能性化粧品と誤認されかねない表現も問題とされた。

 摘発された広告のうち、医薬品と誤認させる表現が用いられていたものが最も多く、57.6%(83件)を占めていた。そのほか、誤解を招く表現や機能性化粧品と誤認されるおそれのある表現なども問題視された。

 MFDSによれば、摘発された144件のうち38件の広告は法律に基づいて登録された化粧品販売企業により出されていた。これらの広告に対してはすでにアクセス制限措置が取られ、今後、現地での実地調査や行政措置が講じられる見通しだ。

 38件中25件は、オンライン販売が認められている一般販売業者による法令違反であった。

 韓国では化粧品の海外輸出増加が続いている。直近では総額が100億ドルを突破した。そうした中で、広告を含めて粗悪品の排除を強化する必要性が高まっていることも推測される。

ありもしない効果を信じないよう要注意

アジアコスメが人気。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

アジアコスメが人気。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 日本でも広告規制が存在→ 化粧品の広告には薬機法や特定商取引法、業界ガイドラインが適用され、効能効果の表現は禁止されている。
  • 日韓の制度の違い→ 韓国は美容医療製剤の法的位置づけが明確なため、化粧品の違反広告を断定しやすい。一方、日本では医師の個人輸入が多く、判断基準が曖昧な傾向がある。
  • 今後の日本の課題→ 化粧品広告の法的問題が浮上しやすくなる可能性があり、消費者側も効果表現に対して慎重な見極めが求められる。

 日本国内でも、化粧品の広告においては、国の法律である薬機法や特定商取引法のほか、関連団体が作った「化粧品等の適正広告ガイドライン」などに従って行うことが求められる。薬機法では、医薬品でない製品が効能効果をうたうことを禁止している。特定商取引法は、虚偽誇大広告を禁止する。韓国と同じように、日本においても、化粧品の広告が法令に抵触する可能性がある。

※薬機法は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

 ところが、日本では、美容医療の施術を思わせるような用語が化粧品に多く使用されている。

 日本の広告表現には、日韓の制度の違いが影響している可能性がある。というのは、韓国では、美容医療に用いられる製剤の多くが、法律に基づいて規制対象になっている。こうしたことから、化粧品が、美容医療に用いられる製剤でないにもかかわらず、効能効果をうたっていると問題と断定しやすいと考えられる。日本では、美容医療で用いられる製剤が、医師の個人輸入で使われるケースが珍しくなく、医薬品としての位置づけが明確ではないことがある。このため広告表現が法的に問題となるかどうかを判断する基準も不明確になりやすい。

 このような日韓の違いはあるにせよ、化粧品で医薬品のような効能効果を示したり、虚偽誇大表現をしたりすることは問題であると考えられる。今後、日本でも制度が整ってくるにつれて、化粧品の広告表現が問題になりやすくなる可能性はある。購入する立場からも、根拠のない効果をうのみにしないよう注意が必要である。

【訂正】
・本文中、違反と表現していましたが、指針に反する広告という意味から、違反と訂正いたしました。(2025/8/13)

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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