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美容医療に「学びの拠点」、専門性が問われる時代へ、アラガンが米国で研修施設新設、韓国では国際トレーニングが進展、教育が安全性と信頼性を支える鍵に【編集長コラム】

 美容医療において「学びの拠点」が注目されている。

 米国アラガン・エステティックスは、「アラガン・メディカル・インスティテュート(AMI)」という名称の施設を、2025年6月にカリフォルニア州オレンジカウンティ、7月にジョージア州アトランタに開設する。

 このような専門の研修の場を開設する動きのほか、医療機関が研修を提供する動きが国内外で広がりを見せそうだ。

 美容医療のトラブルが国際的に問題視される中で、専門性の確保が求められていることが背景にあるだろう。

世界から医師が集まる「国際研修拠点」も

アラガン・エステティックスが設置する研修施設AMIの講師陣。(出典/アラガン・エステティックス)

アラガン・エステティックスが設置する研修施設AMIの講師陣。(出典/アラガン・エステティックス)

  • アラガンの教育活動→ AMI(Allergan Medical Institute)を通じて医師向けの専門研修を提供。注入技術、安全管理、解剖学などを体系的に学べる。
  • 教育の質の向上→ AMI副社長マット・ウィリアムズ氏は、「リアルワールドの経験に基づき教育の質を高める」と発言。講師は米国内の医療従事者38人で構成。
  • モティバの研修施設→ 中米コスタリカにあるイノベーションセンターでは、「Preservé」など身体への負担が少ない手術技術を認定医師に指導。

 アラガンは、ヒアルロン酸製剤やボツリヌス製剤で国際的に認知された企業の一つ。同社は、AMIにおいて医師をはじめとした美容医療従事者を対象に、専門的な研修の場を提供する。注入技術のほか、安全管理や解剖学などを体系的に学べるプログラムを備える。

 発表文書で、同社AMI部門副社長のマット・ウィリアムズ氏は、「リアルワールドの経験に基づいて、パートナーと共に教育の質を高めていく」と語った。講師は米国内から集めた医療従事者で構成されている。公開された資料では38人の医師や看護師、診療アシスタントなどが名を連ねている。

 ヒフコNEWSでは、2025年3月に韓国を取材した際、ライアン美容外科クリニック院長チェ・サンムン氏から、豊胸バッグメーカー・モティバの研修施設について話を聞いた。モティバの本社は中米コスタリカにあり、ここに専門の研修施設「イノベーションセンター」を設け、世界中の医師に知識や技術の指導を行っている。例えば、この施設では「Preservé(プリザベ)」という身体への負担の小さい手術技術の研修を提供している。特別な器具を用い、切開範囲を最小限に抑えるこの技術は、認定研修を受けた医師のみが実施可能。この仕組みによって、自社の最先端の技術を活用できる専門性の高い医師を育て、自社の製品による施術の品質を上げるという仕組みが考えられる。

 さらに、韓国に拠点を置くチェ・サンムン氏のクリニックは、モティバの日本公式トレーニングセンターにも指定されている。日本の美容外科医がライアン美容外科クリニックを訪問して技術を学ぶという仕組みもある。同氏は、モティバのグローバルKOL(キー・オピニオン・リーダー)としても活動している。

「研修場」が美容医療における新たなインフラに

自由が丘クリニックで開催された研修会。(写真/編集部)

自由が丘クリニックで開催された研修会。(写真/編集部)

  • 国内でも美容医療研修が活発化→ 自由が丘クリニックが台湾・中国の医師を招き、非外科的治療などの教育活動を実施。民間クリニックなどによる研修機会が広がっている。
  • 医療機器業界の研修体制→ 医療機器ではトレーニング施設が一般的で、テルモやジョンソン・エンド・ジョンソンなどが教育施設を運営している。
  • 美容医療の専門性強化の必要性→ 国際的に美容医療トラブルが問題視され、専門技術を持つ医師の育成が重要視されている。

 ヒフコNEWSで取材したが、国内でも研修の活動が見られ、例えば、東京都内の自由が丘クリニックは、台湾や中国の医師を集め、非外科的治療をはじめとした美容医療の知識や技術を伝える活動を強化しようとしている。2025年4月は第2回が開催された。このほかにも、国内では個別のクリニックなどによる美容医療の研修活動が広がりを見せており、それを目にする機会も増えている。

 日本では、大学病院で美容医療を教育する体制が十分に整っていないと指摘されている。そうした中で、民間クリニックが美容医療の教育機会を提供するのは貴重といえるだろう。

 医療界全体に目を向けると、医療機器業界ではトレーニング施設を設け、医師を教育する体制が古くから一般的に存在している。カテーテルや内視鏡、整形外科用機器など、独自の技術を用いた医療機器では、開発元が技術の扱いに最も通じているだけに、教育施設は重要な位置づけになっている。例えば、国内企業ではテルモが教育施設を運営しており、海外企業ではジョンソン・エンド・ジョンソンが同様の施設を設置している。これらはあくまで一部であり、多くの企業が自社の研修施設を持っている。

 今後、美容医療でも教育や研修の場を作り、そこで医師などが学ぶという動きは活発になる可能性がある。その背景には、美容医療のトラブルが国際的に問題視され、専門性がより強く求められていることが関係すると考えられる。美容医療を受ける側にとっては、専門的な技術を身に付けた医師から施術を受けられるのは重要だ。企業にとっても、競争が激化する中で、協力関係にある医師や技術に精通した医師を育成することは、業界内での存在感を高める上で重要となる。

 一方で、誰が教えるかという課題は出てくる可能性がある。米国では、医療関連の資格が多様で、看護師でもさまざまな階級が設けられている。美容医療が社会的に注目される中で、美容も含めて医療関連の資格整備を支援することも求められるのではないか。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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