美容目的で広く利用されているボツリヌス製剤(A型ボツリヌス毒素)の繰り返しの注入によりまれに発生すると見られるトラブルが確認された。
注入後一定時間が経過した時点で注射部位が腫れ、それが1カ月以上持続した症例が報告された。しかも、同時にボツリヌス製剤の治療効果も失われた。
中国の研究グループが2025年4月に美容皮膚科誌で報告した。
発症は施術10時間後

ボツリヌス製剤の注入を受けて腫れや赤みが発生。(a)2019年7月注射前。(b)注射1カ月後、効果が不十分な様子。(c)追加注射から4日後、顔の腫れと赤みが出現。(d)追加注射から1か月後、効果が現れない。(e)別の製剤への切り替えたものの1か月後、依然として効果なしが持続。(写真/J Cosmet Dermatol . 2025 Apr;24(4):e70145.)
- トラブルの概要→ 健康な42歳女性がボツリヌス製剤を再注入後に顔面の腫れと赤みを発症、改善が見られなかった。
- 免疫反応の可能性→ 中和抗体が治療効果の無効化とアレルギー反応の両方を引き起こしたと考えられる。
- 施術間隔の重要性→ 短期間での繰り返し注射は免疫反応を強めるリスクがあると指摘された。
報告によると、このトラブルは、健康な42歳女性に起きた。女性は2014~2019年にかけて頬の筋肉(咬筋)や眉間にボツリヌス製剤の注入を問題なく受けた。2019年7月には、同様にボツリヌス製剤が咬筋と眉間に注入された。さらに1カ月後の8月、タッチアップとして咬筋に再注入が行われ、加えて首筋の筋肉(広頸筋)にも製剤が注入された。その10時間後、注射部位に腫れと赤みが現れた。顔面の腫れは1カ月以上にわたり続いた。さらに、審美的な改善も見られなかった。従来有効だった同じ製剤を用いたにもかかわらず、今回は効果がなかった。
その後、別の製剤への切り替えも試みられたが、依然として効果が得られなかった。
研究チームは、注射の繰り返しにより、A型ボツリヌス毒素の効果を無効にする「中和抗体(IgG型)」が体内で作られ、それがアレルギー反応や治療効果の無効化を同時に引き起こした可能性があると分析している。
施術間隔が短いと、免疫反応が強く出やすいとの見解が示された。
まれではあるものの無視できない

ボツリヌス製剤の注入では副作用が起こることもあるので理解しておく必要がある。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- タッチアップ注入の影響→ 短期間での再注入が免疫反応を引き起こすリスクとされる。
- 原因物質の可能性→ 毒素そのものではなく、補助成分や不純物によるアレルギーの可能性がある。
- 今後の対応→ より純度の高い製剤の導入や施術スケジュールの見直しが課題。
報告によると、A型ボツリヌス毒素に対するアレルギー反応は、通常は一時的なものであり、重篤な副反応は極めてまれと報告されている。
そうした中で、今回のように、アレルギー反応と治療の無効化が同時に生じるケースは極めてまれだ。しかし、ボツリヌス製剤の注入が美容医療の主要な施術である現在、安全な施術の実現には、こうした数少ないリスクにも注意を払うことが重要となるだろう。
タッチアップと呼ばれる短期間の再注入が引き金となる可能性が指摘されており、施術のスケジュールの見直しを含め、臨機応変の対応が求められる。アレルギー反応の原因は毒素そのものではなく、製剤に含まれる補助成分や不純物が原因である可能性も指摘されている。今後はより純度の高い製剤への切り替えも含めた研究が必要だという。
施術を受ける際には、こうした副作用についても事前に理解しておくことが望ましい。
