2025年5月28日、日本美容外科学会JSASによる第113回日本美容外科学会が開幕した。
同会は「学ぶ場」というスタンスが強まり、これまでとは雰囲気の異なる学会となっている。
美容医療業界が転機を迎える中で、学会もまた同様に転機に差しかかっているのかもしれない。
「撮影禁止」の腕章をしたスタッフが登場

東京都内のオークラ東京で学会が開催。(写真/Adobe Stock)
- 学会での撮影の厳格化→ 参加者による写真撮影が徹底して禁止された。
- 徹底した監視体制→ 会場内には「撮影監視」の腕章を付けたスタッフが各講演会場に配備され、日本語・英語・中国語のプレートで注意喚起が行われた。
- 撮影禁止の意義→ 撮影禁止により、無断模倣や情報の不正利用が防がれ、発表者の技術保護と学会の情報管理の厳格化が進んだことは、美容医療分野にとって望ましい変化と考えられる。
3月、同会のホームページを見たところ、取材として参加しようとしたが、「※取材の受付はいたしておりません。あらかじめご了承ください。」とあった。そこで同会事務局に問い合わせたところ、次のように回答があった。
「お問い合わせいただいた件につきまして、HPに記載の通り本会では取材の受付はいたしておりません。会場に入られる場合は、必ず参加登録を行っていただきますようお願いいたします。」
文面では、これに続いて、写真撮影の禁止が強調されていた。
総じてみると参加登録をし、撮影をすることなく、「学ぶ」という位置づけであれば問題ないと解釈した。その後、参加登録を行い、会長の承認を得て学会に参加するに至った。
この時には、撮影禁止の活動が強化されるとは全く気が付かなかった。
そうした中で、今回、学会に参加して印象深かったのは、医師をはじめとした一般の参加者の撮影を徹底して禁止するという対応だ。取材不可以上に大きな動きであると感じた。
これまでの日本美容外科学会でも、講演中に、ケータイを掲げて撮影する光景は珍しくなかった。これまでも撮影自体は禁止とされていたので、会場で撮影している人を学会スタッフが制止する場面は見られたが、今回の学会では、4つある講演会場のそれぞれに5人ほど「撮影監視」の腕章を付けたスタッフを配置していた。そのスタッフが、撮影禁止について日本語に加え、英語や中国語でも記載されたプレートを持ち、講演中は常に会場内を巡回していた。
これにより学会場内での撮影を一切禁止するという立場を明確にしていた。当然ながら、会場内で撮影する人の姿はほとんど見られなくなった。
これは大きな変化であると受け止めた。美容医療の学会では、講演中にスライドを撮影するという光景はよく見ることができた。撮影禁止の表示があっても、それが徹底されることは少なかった。
撮影行為についてあらためて考えてみると、学会での発表内容を記録しておきたいという人は多かったと考えられる。学会で発表されるのは、貴重な美容施術や医療機器、製剤の情報であり、それをその後の参考にしたいという人がいても不思議はない。
一方で、美容外科の場合には、参加者同士は、自由診療の中で、お互いに競争相手でもあり、安易に施術の知識や技術、コツなどを真似されることは、発表する人にとって不利になるところもあるだろう。美容医療の有効性や安全性を高めるために、情報共有することは良くても、無断で模倣されることへの懸念もある。
撮影禁止によって安易な情報流出が防がれることは、望ましい変化であると考えられる。
「学会参加=アピール」ではなくなる

SNS。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 会場の一般的な撮影も減少か→ 撮影禁止の徹底により、会場内での仲間同士のスナップショットやインスタグラム向けの写真撮影が大きく減少した印象。
- 学会参加が純粋な学びに→ 学会参加をSNSでアピールする動きが抑えられ、参加者がより純粋に講演に集中する姿勢ができた可能性。
- 学術重視への原点回帰→ 発表者にとって安心できる環境が整い、学会が本来の「学びの場」として機能するようになった。
それと同時に、会場内の通常の仲間同士のスナップショットも減少したように見受けられた。従来、講演の会場以外でも、同じクリニックの仲間同士などが撮影し合う姿は、一種の風物詩のようでもあった。撮影する人が減ってみて思ったのは、今回、会場全体で撮影の機会そのものが減少し、インスタグラムなどのSNS向けの写真撮影も目立たなかったということ。
スポンサーが機器や製剤を展示する会場では、メーカーの名前が複数書かれたパネルが置かれて撮影スポットのようになっていたが、そこでも撮影する人が少なかったように見受けられた。
これまで学会場内で撮影する人の中には、講演を記録したいという人とは別に、学会に参加したことをアピールするために撮影をしている人も多かったかもしれない。医師などでも、学会に参加することで、学術活動に深く関わっていることを伝えられ、一般の利用者に信頼感をアピールすることにもつながる。インフルエンサーでも、同じように知識を得る活動を活発にしていることを理解してもらえる。
今回、撮影を禁止することで、学会参加=SNSでのPRという面が大きく減ったような印象を受けた。それに伴って、学会場がかなり落ち着いているように感じられた。
結果、参加者が純粋に講演に集中している様子がうかがえた。学会は学ぶところという面で言えば、ある意味で原点回帰と言える。
今回、撮影監視のためのスタッフを置いたことは、日本の医学会の歴史においても画期的な取り組みだ。他の医学会でも、勝手に撮影をする人が多いのは、頭を悩ませている問題でもある。撮影禁止が徹底されれば、演者にとっては安心して発表できる環境となる。
2024年は献体写真撮影など批判に

美容外科医師によるご遺体の解剖に関する不適切な行動について。(出典/日本美容外科学会(JSAS))
- 撮影禁止の背景→ 美容医療業界での不適切な行動(例:献体写真問題)に対する批判を受け、学会も純粋な学びの場としての再構築を進める動きが求められている。
- 学会の意義の再認識→ 業界内での対話や学びの機会としての学会の重要性が高まり、特にコロナ禍以降は交流の場としての役割が見直されている。
- 今後の動向→ 学会の運営方針は毎年の会長によって変わる可能性があり、撮影禁止の徹底などの動きが継続するかどうかは分からない。
ただし、こうした動きの背景には、美容外科特有の状況変化が影響していると考えられる。
美容医療は2024年にさまざまな問題が指摘され、業界ガイドライン作りが始まるなど変化の時になっている。2024年末には、献体の写真撮影が問題になり、美容医療業界に大きな批判が寄せられたことは、決定的な影響を与えた可能性があると考えられる。
このほかにも元々、講演でのスライド撮影への批判の声は挙がっていた。別学会も含めて、撮影禁止がはっきりと伝えられているにもかかわらず、海外からの参加者が堂々とスライドを撮影している様子を目にしたことは多い。学会場で、SNS用の写真や動画撮影をしている風景に対する違和感を示す声も一部の医療関係者から出ていた。
そのような状況の中で、医師などが学ぶ場である学会も、純粋な学びの場として作り直しが進む可能性がある。コロナ禍を経て、同じ業界の人同士が交流する意義は再認識された。そうした中で、学会の位置づけはより重要性を増すと考えられる。
一般の美容医療を受ける人たちにとっては、結果的には好ましい動きと評価されるだろう。
もっとも、学会は毎年開催の会長が替わるため、ここで書いたような流れの継続性については未知数であることも記しておく。
ということで、ヒフコNEWSでも学会場に入る手前で入り口の看板だけ撮影をしたが、学会場内での風景を写真として伝えない。学びの場としての学会で新しい動きを仕入れていく。
