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冷却による部分痩身が日本でも広がる兆し、ダイエットとの違いとは?脂肪組織を減らすボディコントゥアリング、第113回日本美容外科学会JSAS講演の印象記【編集長コラム】

ウエスト、ヒップ、太もも、二の腕などの部分痩身が注目。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ウエスト、ヒップ、太もも、二の腕などの部分痩身が注目。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 冷却による部分痩身が日本国内でも普及する可能性がある。

 第113回日本美容外科学会JSASの講演を通じて見えてきた傾向を述べる。

冷却式ボディコントゥアリングが台頭

冷却により脂肪組織を減らす。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

冷却により脂肪組織を減らす。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 冷却脂肪融解の技術→ 脂肪組織を冷却してアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導し、脂肪を減少させる。
  • 厚労省の承認→ クールスカルプティングとその後継機が2017年・2021年に承認を受け、安全性と有効性が公式に認められている。
  • 施術の目的→ ダイエットとは異なり、体重減少ではなく、たるみや脂肪による体形の崩れを整えることが目的。

 ボディコントゥアリングは、一言で言えば身体のラインを整える施術。

 その手段はさまざまで、脂肪吸引、脂肪溶解注射、HIFU(高強度焦点式超音波治療、ハイフ)や糸リフトなど、熱を加える方法や物理的な手法が美容クリニックで行われている。そうした中で、脂肪組織を冷却させて脂肪量を減らす方法が、普及の兆しを見せているようだ。

 アラガン・エステティックスが販売しているクールスカルプティングという機器が、非侵襲的脂肪減少治療として厚生労働省の承認を2017年12月に受け、その後、2021年に後継機のクールスカルプティングエリートが承認を受けた。後継機は2カ所を同時に冷却できるのが大きな変化だ。国から有効性と安全性を認められたことは大きな後押しとなり、普及に寄与していると考えられる。

 認知度はまた高いとはいえないが、ボディコントゥアリングはダイエットとは異なり、体重を減らす施術ではない。脂肪の増加やたるみによって崩れた体形を整えることが目的だ。

 技術の名称は冷却脂肪融解(cryolipolysis)という原理を用いている。その歴史は長くはなく、1999年に米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院ウェルマン光医学センターのロックス・アンダーソン氏およびディーター・マンシュタイン氏が開発したのが始まりだ。脂肪組織が低温によるダメージを受けやすいことに着目して、脂肪減少への応用を進めた。脂肪組織が7度程度の低温に置かれると、細胞が自滅するアポトーシス(プログラムされた細胞死)を起こすことを確認し、皮膚にダメージを与えずに脂肪組織だけを減らせる仕組みを作り出した。

 脂肪には、大きく内臓の周囲に付く内臓脂肪と、身体の表面に付く皮下脂肪がある。ダイエットをすると、内臓脂肪は減りやすいが、皮下脂肪は減りづらいとされる。皮下脂肪を冷却によって効果的に減らす施術になる。

 国内の医療機関でも、施術を受ける人が増加傾向にあることが、学会の講演では示されていた。痩身に関心を持つ人は年齢層、性別を問わず存在しているため、受ける人の層は幅広いと見られる。

受ける人にもクリニック側にも利点

部分痩身は男性にもニーズ。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

部分痩身は男性にもニーズ。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 非外科的施術の利点→ ボディコントゥアリングはメスを使わず、脂肪吸引に比べて合併症のリスクが低く、受け入れられやすい。
  • 主なリスク→ 逆説的過形成(発生率0.033%)では脂肪が逆に増える可能性があり、脂肪吸引による対応が必要。他に凍傷、痛み、色素沈着なども起こり得る。
  • クリニック側のメリット→ 繰り返し施術が前提のため安定した収益源となり、導入しやすい施術として普及が進んでいる。

 ボディコントゥアリングのメリットは、脂肪吸引のような外科的な治療と異なり、身体の表面にメスを入れないため、合併症のリスクが比較的低いことがある。脂肪吸引では、国内でも死亡を含めた事故が報告されることがあり、抵抗感を示す人もいるが、比較的受け入れやすい。

 ダイエットや脂肪吸引とは異なり、大幅に脂肪組織が減るわけではないが、ちょっとしたくびれがウエストにくびれができたり、ヒップや太もも、二の腕のボリュームが少し減ったりする効果が満足度にもつながっているようだ。

 添付文書によれば、使用に制限のある特徴を持つ人もいる。冷却の刺激によって過敏症を起こす人、出血しやすい病気の人、ヘルニアという、体内の臓器が突出する状態(過去の傷口などから身体の内部にとどまっているものの腸が出っ張ってくるような状態)の人、皮膚障害や神経障害がある人などは、使用する際に注意が必要になる。

 合併症として大きいのは、0.033%の確率で起こると報告される、逆説的過形成と呼ばれる、冷却によって組織が逆に増えてしまうケースがあり、その際には脂肪吸引などの対処が必要となる点も注意を要する。このほか、痛みや色素沈着、凍傷などの合併症が起こる可能性もあり、そうしたリスクは理解しておく必要がある。

 また、クリニックにとっても、繰り返し行うタイプの施術になるため、収入源にもなり、取り組みやすい点も普及の要因となっている。繰り返し行うタイプという点で共通している医療脱毛の競争が激しくなる中で、まだ一般的とまではいえない脂肪冷却痩身だが、注目される存在になりつつある。もっとも、医療脱毛と比べても裾野が広い可能性があることは大きな利点であり、これをきっかけに他の美容施術を含め、美容医療全体の入り口になり得る。

 ヒフコNEWSで伝えたが、韓国では痩身を軸にしたボディデザインを中心にした美容クリニックが人気を集めていた。今後、冷却式のボディコントゥアリングをはじめ同様の考え方に基づく美容医療が日本でも一般化していく可能性は十分にある。

参考文献

韓国の美容医療、医師3人が進めるバランス重視、地元での口コミから世界へ、「目鼻立ち」と「全体の調和」を両立、Balance Lab美容外科共同代表のイ・ジャンウォン氏に聞く
https://biyouhifuko.com/news/interview/12235/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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