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美容医療、誰が施術を行うかで仕上がりは変わる、注入などでも表から見えづらい技術の差、日本医学脱毛学会理事長・つかはらクリニック院長 塚原孝浩氏に聞く 後編

カレンダー2025.6.27 フォルダーインタビュー
つかはらクリニック院長および日本医学脱毛学会理事長である塚原孝浩氏。(写真/編集部)

つかはらクリニック院長および日本医学脱毛学会理事長である塚原孝浩氏。(写真/編集部)

塚原孝浩(つかはら・たかひろ)氏
つかはらクリニック院長/日本医学脱毛学会理事長

  • カニューレとニードルの使い分け→
    安全性や操作性の面でカニューレに利点があるが、部位によってはニードルが適していることもあり、施術目的に応じて使い分けが必要。
  • 注入時のリスクと注意点→
    血管内注入による失明リスクもあるため、血流や皮膚の変化を細かく観察しながら慎重に施術を行うことが重要。
  • 医師による差異→
    同じ製剤・機器でも医師の技術と経験により結果に差が出る。医師選びが施術結果を左右する要素となる。

──製剤や医療機器が新たに登場して美容医療は変わっていく。

塚原氏: ヒアルロン酸注入に関して言えば、承認が下りた当初は、鋭針(ニードル)を使うのが前提になっていましたが、2022年に鈍針(カニューレ)が認可され変わりました。私はメーカーの方式に従って施術をしていますが、そうした中でも打ち方はカニューレの特徴を生かしたものに変化したのです。鈍針の方が血管内への誤進入が少ないと実感しており、安全性の高さを感じています。また、カニューレの方が先端の操作性が高く、広い面積にまんべんなく打つことが容易になりました。鋭針では、組織を貫通しやすい一方で、カニューレは、靱帯や筋膜などに当たるとそれ以上進まないので、層を意識して打ちやすくなりました。バラエティーが出てくるようになったのです。

 論文上は、カニューレでもニードルでもリスクに違いはないとされていますが、先に申し上げたように、経験上、カニューレを使うことで血管への誤進入をしづらいと感じています。痛みは変わらないと思います。

──カニューレとニードルを使い分けると良い?

塚原氏: 全体的に見るとカニューレの方が安全性の面をはじめ優れているという印象はありますが、カニューレとニードルを使い分けています。例えば、骨の上に乗せるように注入する場合など、部位によってはニードルを使うことがあります。なお、医院によってはカニューレを使った場合に特別な料金を加算するところもあるようですが、当院では、カニューレを使うからといって追加料金をいただくこともありません。適切に使い分けています。

 ヒアルロン酸注入では、前提として、血管内にヒアルロン酸が入らないようにすることが重要です。誤ってヒアルロン酸が血管に入っていった場合に、失明するケースも報告されます。注入の際に、血管に針やカニューレが入って血液が逆流しないか、施術を受ける方の反応を慎重に観察して、痛みを感じていないか、皮膚の血流が滞って白くなっていないか、確認しながら注入することになります。

──施術をする医師により仕上がりに差が出る。

塚原氏: 同じ製剤や医療機器を使っても結果が同じように現れるわけではないと思います。医師の技術や経験を見極めることが大切だと考えています。

 糸リフト一つをとっても、施術する医師により、結果は変わってきます。糸リフトも縫合糸やキットの形状が年々変わっています。糸を入れても、十分なたるみ改善効果が得られず、「金ドブ(お金を無駄にすること)」と言われることもありましたが、糸リフトが進化して、毎年、適切に糸を挿入することで、たるみの状態を安定して保てるようになっています。フェイスリフトの方がよいという意見を持つ医師もいますし、ショッピングリフトを支持する医師もいます。医師によって考え方や判断基準も異なります。私自身は糸リフトの効果が良いと考えておりますが、熟練した技術によって実施することが重要だと考えています。

  • 医師選びのポイント→
    安心して施術を受けるには、医師本人の考え方や雰囲気を把握することが重要であり、YouTubeなどの動画が参考になる。
  • カウンセリング比較のすすめ→
    複数のクリニックでカウンセリングを受け、施術内容や価格、医師の対応を比較検討することが大切。
  • 専門性と医師選び→
    医師の専門性や資格は、美容医療を受ける際の信頼性の一つの指標となる。

──安心して施術を受けられる医師を見つけたい。

塚原氏: 医師選びは慎重であるべきだと思います。その際に参考になるのが、YouTubeなどの動画です。その大きな理由は医師本人の考え方を知ることができる点にあります。雰囲気も伝わります。医師を理解することは、安心して施術を受けるための第一歩になると考えています。週1回のペースを目標に動画を発信していますが、実際にそれを見たことをきっかけに来られた方からは「本人だ」と喜ばれ、動画と雰囲気が近いと評価をいただいています。

 その上で医師を選ぶときには、複数のクリニックでカウンセリングを受けて比較することを勧めます。

 最近では、広告で示された低価格を当てにカウンセリングにいったら、6時間にわたり引き留められ、施術を断りにくい状況に追い込まれるということも聞きます。カウンセラーが必ずしも悪いわけではありませんが、当初示された価格では受けられない状況になるようでは問題だと思います。不要と思われる高額な処置を勧められたという話を聞くこともあります。医師のカウンセリングを受けて、必要な施術を医師の視点で見極めてもらうことが重要だと考えています。

──救急医療や形成外科という2つの専門医を持っている。専門医の資格は医師選びの参考になる。

塚原氏: 私自身、医師としての出発点は形成外科でした。外傷の治療を行うことなどから、救命救急センターに出向し、救急医療に取り組む中で、救急専門医の資格も取得しました。その後、形成外科専門医の資格も取得しています。顔面の解剖に関する知識や施術経験は、美容医療にも生かされていると考えています。このような背景からも、専門医資格は医師選びの有力な判断材料になると考えています。(終わり)

つかはらクリニック院長および日本医学脱毛学会理事長である塚原孝浩氏。(写真/編集部)

つかはらクリニック院長および日本医学脱毛学会理事長である塚原孝浩氏。(写真/編集部)

プロフィール

塚原孝浩(つかはら・たかひろ)氏
つかはらクリニック院長/日本医学脱毛学会理事長
1961年大阪府和泉市生まれ。福井医科大学(現・福井大学医学部)卒業後、1987年に近畿大学医学部附属病院形成外科に所属。同大学救命救急センター出向を経て、1993年に大学院を修了し医学博士号を取得。2004年大阪市阿倍野区で、つかはらクリニック開業。2017年よりあべのハルカス22階に移転。日本美容外科学会(JSAPS)評議員、日本美容皮膚科学会代議員などを務める。形成外科専門医、救急科専門医を保有。

記事一覧

  • 美容医療、脱毛から見える「正しい選択」のヒント、同じチェーンでも医院ごとに意識が異なる、日本医学脱毛学会理事長・つかはらクリニック院長 塚原孝浩氏に聞く 前編
    https://biyouhifuko.com/news/interview/13325/
  • 美容医療、誰が施術を行うかで仕上がりは変わる、注入などでも表から見えづらい技術の差、日本医学脱毛学会理事長・つかはらクリニック院長 塚原孝浩氏に聞く 後編
    https://biyouhifuko.com/news/interview/13345/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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