
買収。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
美容医療市場が成長を続けるなか、国内大手グループによる中堅クリニックの買収が注目される可能性がある。
白金台や銀座、長野に拠点を持つ中堅美容クリニックグループのJUN CLINICが、湘南美容グループなどを展開するSBCメディカルグループホールディングス(以下、SBC)ネットワークに加わることになった。
2025年7月17日、SBCが、JUN CLINICの経営支援を行うMB career loungeの株式取得を完了したと発表した。
都心部と地方中核都市にクリニック展開

相川佳之(あいかわ・よしゆき)氏。SBCメディカルグループホールディングス CEO(写真/村田和聡)
- 買収の概要→SBCがMB career loungeを買収し、JUN CLINICの経営支援にも関与することになった。
- JUN CLINICの特徴→白金台や銀座、地方中核都市などに展開し、形成外科専門医の監修による個別化医療を提供。「カスタマイズ治療研究会」認定施設でもある。
- 買収の狙い→SBCのネットワークとノウハウを活用し、JUN CLINICの全国展開やブランド強化、安定収益基盤の構築を図る。
医療機関の運営では、総務・経理・広告・採用などの業務を専門会社が担うグループ経営の形態が一般的となっている。こうした経営を担う会社は、メディカル・サービス法人(MS法人)と呼ばれることがある。今回の買収はこのMS法人に関連した動きといえる。
SBCメディカルグループホールディングスによると、医療法人美咲会が運営するJUN CLINICは、白金台や銀座、横浜、たまプラーザ、長野、名古屋にクリニックを展開。都心部と地方中核都市の両方に展開している点が特徴だ。
JUN CLINICはレーザーや注入、糸リフトなど幅広い治療に対応し、形成外科専門医の監修のもと、個別化された美容医療を提供している点が特徴だ。同院は著名な「カスタマイズ治療研究会」の認定施設としても知られる。医療法人美咲会理事長を務める菅原順氏は、富山大学形成外科で臨床教授を務め、積極的に学会発表に取り組む。
一方で、MB career loungeは、美容医療分野に特化したコンサルティングファームで、JUN CLINICの経営支援を担ってきた。つまりJUN CLINIC関連のMS法人と位置付けられる。また、SBCは湘南美容などにとってのMS法人ととらえられ、今回、MB career lounge買収により、SBCがJUN CLINICの経営支援にも関与することになる。
SBCによると、JUN CLINICは、SBC傘下でノウハウを活かしたより広いネットワークでの展開を進めることになる。地域展開やサービス多様化を進めるとともに、ブランド力と安定的な収益基盤の強化を図る意向を示す。
SBCは、もともと湘南美容クリニックとして神奈川県藤沢市で創業後、2024年にはNASDAQ上場も果たし、現在はグローバル展開を進めている。今回の買収は、その戦略の一環と位置づけられる。最高経営責任者(CEO)の相川佳之氏は、「JUN CLINICは、地方の成長市場である長野から、競争の激しい銀座・白金といった都市部に至るまで、多様な環境で成果を上げ、全国展開に適応する堅牢なビジネスモデルを確立。私たちは美容皮膚科・美容外科のサービスラインをさらに強化し、顧客の多様な期待に応える付加価値の提供を通じ、高品質な美容医療サービス市場でのプレゼンスを一層高める」と述べる。
規模を追う美容クリニック

拡大する美容医療市場。(出典/矢野経済研究所)
- 市場拡大と継続的投資→美容医療市場は成長中だが、特に非外科的治療では新施術が次々と登場し、機器導入など継続的な投資が必要となる。
- 機器の進化と競争力→高周波や超音波などの照射系医療機器は進化が著しく、最新機器の導入が美容クリニックの競争力に直結する。
- 組織力と規模の重要性→資金力や組織力のある大規模クリニックほど競争力を持ちやすく、グループ化・再編の動きが今後さらに加速する可能性がある。
国内では美容医療市場が成長しており、今後、一層の拡大が見込まれている。一方で、美容医療の現場では、特に非外科的治療において、新しい施術が次々と登場し、継続的な投資を続ける必要がある。
例えば、高周波(RF)や超音波といった照射系の美容医療機器は、新しい世代の機器が発売され続けており、年々性能が向上している。こうした新型の医療機器の導入を続けられるかどうかは、美容クリニックの競争力を左右する一方で、経営には継続的な投資という負担も伴う。
こうした状況の中で、美容クリニックも、資金力や組織力のある施設ほど競争力を持ちやすいと考えられる。規模の大きな美容クリニックが優位に立ちやすい状況であり、今回のようなグループ拡大の動きは、今後さらに加速する可能性もある。
