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英国政府が美容医療の安全強化、無資格施術の排除へ動く、リスクの高い施術は医療従事者のみ、未成年者への施術は厳しく制限

カレンダー2025.8.15 フォルダー 海外

ポイント

  • 英国政府が、美容医療の安全性を高める新たな規制を導入へ。
  • 特にリスクが高い施術は医師をはじめ有資格者が、許可施設だけで実施可能に。
  • ボツリヌス療法やフィラー注射も、免許が必要な制度の対象となる予定。
英国で美容医療の規制強化が進む。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

英国で美容医療の規制強化が進む。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 英国政府は2025年8月6日、美容医療の安全性を高めるための新たな制度改革を発表した。

 これにより、注入によるブラジリアン・バットリフトなどのリスクが高い非外科的治療は、医師をはじめ、資格を持った医療専門職が認可された施設で実施できるようになる。

 また、ボツリヌス療法やフィラー注射といった施術は、中リスクとして免許制の導入を進める方針だ。

未成年の高リスク施術は許可必要

未成年の美容医療は厳しく制限。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

未成年の美容医療は厳しく制限。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 高リスク施術の規制→ブラジリアン・バットリフトなどは医師など有資格者が登録施設内でのみ実施可能に。
  • 未成年規制→18歳未満は保護者同意だけでなく、医療専門職の判断と実施が必須。
  • 中リスク施術→顔へのフィラー注入やボトックスは研修と監督下で医師以外も可能、新たに免許制導入予定。

 英国政府は非外科的治療について、施術の内容とリスクに応じて、対象となる施術を「高」「中」「低」の3段階に分類し、それぞれに適切な資格要件を設ける。

 例えば、大量の注入によってお尻の形を整えるブラジリアン・バットリフトは高リスクの施術となり、実施できる人と場所を明確に制限する方針を打ち出した。

 今後、高いリスクを伴う施術は、医師をはじめ資格を持った医療専門職が、医療の監督機関により登録された施設内でのみ行えるようになる。

 さらに18歳未満に対しては、いかなる高リスク施術も、保護者の同意だけでは受けられず、医師をはじめとした医療専門職による判断と実施が必要になる。

 また、顔へのフィラー注入やボトックスなどは「中リスク」とされ、医師以外の施術者であっても、一定の研修と監督体制の下で実施が認められる予定となっている。

 これらボツリヌス療法やヒアルロン酸などのフィラー注射は、新たに免許制となる見通しだ。施術者は、安全性、教育、保険などの条件を満たし、免許を受ける必要がある。施術場所も衛生対策や感染対策などの基準をクリアした施設に限られる。

 今後、英国政府は、まずは胸部や性器への注入施術など、リスクの高い一部の施術を優先的に規制対象とし、その後段階的に、他の施術にも制度を拡大していく計画である。

背景に無資格施術の横行

無資格の美容施術が横行した。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

無資格の美容施術が横行した。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 制度改革の背景→英国では無資格の危険な美容施術が急増し、家庭やホテルでの施術も横行。
  • ライセンス制度準備→2022年「医療・ケア法」に基づき制度化を進行。
  • 新たな規制→2025年6月から美容注入製剤のリモート処方を禁止、対面診察必須。

 今回の制度改革の背景には、英国で美容医療が規制のないまま急速に広がり、危険な無資格施術が横行していたという現状がある。

 SNSやオンライン広告を通じて広まった無届施術は、安さや手軽さが強調され、家庭やホテルなどで実施されるケースも目立っていた。

 これまでも、非医療者によるフィラー注入で視力障害や顔面麻痺が起きた事例や、医療資格のない施術者によるブラジリアンバットリフトで命を落としたAlice Webbさんの事件など、深刻な被害が報告されていた。

 こうした事態を受け、英国政府は2021年に18歳未満へのボトックスやフィラー施術を禁止する法律を制定。さらに2022年には「医療・ケア法(Health and Care Act)」に基づき、美容施術に対するライセンス制度の準備を進めてきた。

 2025年6月からは、美容注入製剤のリモート処方も禁止された。看護師や助産師が対面診察をせずに処方を行っていた事例が問題視され、制度の見直しが進められた形だ。

 今後は、免許取得、対面診療、衛生管理などを含む一貫した基準の整備により、安全性の底上げが図られる見通しである。

 今回の発表は、その制度導入を本格化させる動きの一環といえる。施術の種類やリスクに応じた明確な基準に基づき、安全で質の高い美容医療の提供体制が整備される。

 日本の美容医療の安全を考える上でも参考になる可能性がある。

参考文献

Crackdown on unsafe cosmetic procedures to protect the public
https://www.gov.uk/government/news/crackdown-on-unsafe-cosmetic-procedures-to-protect-the-public

The licensing of non-surgical cosmetic procedures in England: consultation document
https://www.gov.uk/government/consultations/licensing-of-non-surgical-cosmetic-procedures/the-licensing-of-non-surgical-cosmetic-procedures-in-england

英国で美容医療の制度改革が加速、リモート処方を禁止へ、違反した看護師などは登録抹消に、独自のライセンス制度の整備が進行中
https://biyouhifuko.com/news/world/12586/

Arrests after woman dies following ‘BBL procedure’
https://www.bbc.com/news/articles/cx2m829lmk9o

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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