
動物実験により検証。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
マンジャロやゼップバウンドの商品名で知られる薬、チルゼパチドが、動物実験によって、乳がんの腫瘍の増殖を遅らせる可能性が示された。
この研究成果は2025年7月に米国サンフランシスコで開催された内分泌学会(ENDO 2025)で発表された。
肥満と乳がんの関連に注目

マンジャロをはじめ体重減少を促す薬が増える。(写真/Adobe Stock)
- 対象の薬→GLP-1受容体作動薬に加えGIP受容体にも作用する「チルゼパチド」。糖尿病治療薬名は「マンジャロ」、肥満治療薬名は「ゼップバウンド」。
- 背景→肥満は乳がんのリスクや治療成績悪化と関連。減量によって経過が改善する報告もあるが、食事制限や運動だけでの減量継続は困難。
- 実験内容→16匹のマウスに高脂肪食を与えて肥満状態にした後、チルゼパチド群とプラセボ群に分け、16週間隔日で注射を実施。腫瘍の大きさを週2回測定し、体重や体脂肪の変化も記録。
研究を行ったのは米国ミシガン大学の研究チーム。肥満に対する薬としてGLP-1受容体作動薬が注目されているが、チルゼパチドはGLP-1に加えてGIPという受容体にも作用する。糖尿病治療薬としては「マンジャロ」、肥満治療薬としては「ゼップバウンド」という別の名前が付いている。
肥満は、さまざまな病気につながることが知られているが、悪性の腫瘍の一つである乳がんのリスクや治療成績の悪化とも関わることも分かっている。逆に体重を減らすとがんの経過が改善することも報告されている。
ただし、食事制限や運動だけで減量を続けるのは簡単ではない。そこで研究チームは、薬による減量が腫瘍にどう影響するかを動物実験により調べた。
今回の実験では、最初に16匹のマウスに高脂肪のエサを与えて肥満の状態にした。その後、チルゼパチドを投与するグループと、偽薬(プラセボ)を投与するグループに分け、16週間にわたり隔日でそれぞれの注射を行った。腫瘍の大きさは週2回測定し、体重や体脂肪の変化と併せて記録した。
肥満と腫瘍の大きさに関連

薬や体重、体脂肪減少とがんとの関連とは?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 主な結果→チルゼパチド投与群は体重・体脂肪が約20%減少し、腫瘍の体積も縮小。体重や体脂肪、肝臓脂肪量と腫瘍サイズに明確な関連が見られた。
- 研究チームの見解→体重減少効果に加え、乳がんの経過そのものに良い影響を与える可能性がある。ただしマウスでの前臨床研究であり、人での効果は未確認。
- 研究の進展→米国ノースカロライナ大学と共同で、体重減少の影響と薬自体の抗腫瘍効果を切り分ける研究が進行中。
実験の結果、チルゼパチドを投与されたマウスは体重と体脂肪が約20%減少し、腫瘍の体積も小さくなった。体重や体脂肪、肝臓にたまった脂肪の量と腫瘍の大きさには明確な関連が見られた。
研究チームは、この薬が体重を減らす効果だけでなく、乳がんの経過にも良い影響を与える可能性があると考えている。ただし、今回の結果はあくまでマウスでの前臨床研究であり、人での効果を示すものではない。
現在は、米国ノースカロライナ大学の研究グループと協力し、体重減少の影響と薬そのものの抗腫瘍効果を切り分ける研究が進められている。今後のデータによっては、抗肥満薬ががん治療の補助的な手段として注目される可能性もある。
つまり、今回の発表で報告された効果は、薬そのものの直接的な効果である可能性のほか、体重を減らしたり、体脂肪を減らしたりすることによる間接的な効果である可能性も考えられる。人を対象とした追加の検証は欠かせない。
使用が増えているチルゼパチドは、その使われ方だけでなく効果についても新しい発見が続いており、今後も関心を集めそうだ。
