
厚生労働省。(写真/Adobe Stock)
厚生労働省が2025年8月に出した美容医療に関する通知を基に、その内容を連載形式で伝えている。
前回は一般的な病院や診療所の組織としてのルールについて伝えたが、今回は法律違反が疑われる場合の立入検査の考え方を見ていく。
法律違反が疑われた場合、保健所が現場確認へ

調査が行われる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 行政対応の基本 → 法律違反が疑われる場合、保健所などが医療法第25条第2項に基づき立入検査を実施。医師法違反に対する検査の対象は、無資格施術、医師の指示なしの看護師施術、管理者の監督義務違反など。
- 医師法・保助看法違反が疑われる場合の検査 → 無資格者施術や医師の指示を受けずに看護師の単独施術が行われているなどが疑われる場合に立入検査を実施。
- 医療法違反が疑われる場合の検査 → 診療録未作成・未保存、管理者不在、安全管理体制の不備、誇大広告などが疑われる場合にも実施。
2025年8月の「美容医療に関する取扱いについて」通知では、どのようなケースに法律違反になるかの解釈が示されるとともに、法律違反が疑われた場合の自治体や警察などの対応も明らかにしている。
美容医療は自由診療で行われるが、今回の通知では、保険医療を行う医療機関が守るべきルールが示された。通知で、これらのルールについて示されたということは、美容クリニックも従うことが重要ととらえられている。
今後、美容クリニックがルールを守ることで、より安全で安心な美容医療が提供される環境が整備されることになると考えられる。
逆にルールが守られなかった場合には、行政対応や警察の対応が取られる方向になっている。
行政対応の第一歩となるのが、保健所などによる立入検査だ。
通知によると、一定の法律違反が疑われる場合に、立入検査が行われることがある。
一つは、美容医療を受けた本人や関係者からの情報提供を基に、無資格者施術や医師の指示を受けずに看護師の単独施術が行われているなど、医師法・保助看法違反が疑われるとき。また、管理者が医療法第15条の監督義務を果たしていないと判断されるとき。こうした場合に、保健所は医療法第25条第2項に基づき、立入検査を行うことが可能となる。
ここで重要なのは、立入検査の目的は刑事捜査ではないという点だ。通知は、立入検査があくまで行政の監督権限として行われるものであり、違反の有無を確認し、是正を促すことを目的とする。刑事事件に発展する可能性がある場合は、別途警察との連携を行う形になる。
また、医療法違反が疑われる場合にも立入検査が行われることがある。それは、診療録未作成、未保存、管理者の不在、安全管理体制の不備、誇大広告の実施などが情報提供によって判明した場合だ。
その際は、医療法に基づく行政処分(報告命令、業務停止、開設許可取消など)を行うに足る事実確認を目的として行われる。
この場合の立入検査も、「犯罪捜査ではなく行政上の監督」のために行われる。調査範囲は、「法の施行に必要な限度」にとどめることが求められている。
立入検査への非協力も問題に

調査を実施。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 非協力的対応への警告 → 医療法第25条第2項による報告命令や検査要請に対し、虚偽報告・資料未提出・検査拒否・妨害・忌避を行うと、医療法第89条第2号に基づき刑事罰の対象となる。
- 廃止届による逃避も対象 → 立入検査の直前に「廃止届」を提出して逃れる行為は、実質的に「検査忌避」とみなされる可能性がある。
- 意義 → 通知により、保健所が立入検査を実施する際の基準が明確化された。
通知では、立入検査に非協力的な行為についても厳しく言及している。
医療法第25条第2項に基づく報告命令や検査要請に対して、虚偽報告や資料の未提出、検査拒否、妨害、忌避を行った場合、医療法第89条第2号により刑事罰の対象となる。
また、通知では、検査の直前に「廃止届」を提出して逃れる行為も、実質的には「検査忌避」に当てはまる可能性があるとされた。その後、しばらく経ってから再び同一人物が新たな医療機関を開設するケースも想定されている。通知ではこのような行為を「望ましくない」として、自治体が経緯を慎重に確認するよう求めている。
今回の通知が出されたことで、保健所による立入検査が行われる際の基準が明確になった。
次回は、この立入検査の後に行われる行政対応、「報告命令」や「行政処分」の流れについて見ていく。医療機関がどの段階で是正措置を求められ、どう対応すべきか、また違反が改善されない場合にどのような処分が行われるかを整理する。
