
倫理講習を必須に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
献体SNS写真投稿の問題が国内で問題視されたのは2025年12月のことだったが、それから約1年が経ち、日本形成外科学会が、形成外科で実施する遺体を用いた研修(CST、cadavar surgery training)の倫理講習受講を必須化する方針を示した。
同学会が2025年11月に公表した。
一般から強い批判の声が上がった

美容外科医師によるご遺体の解剖に関しての不適切な行動の報道について。(出典/日本美容外科学会(JSAPS))
遺体を用いて手術の手技を学ぶことは、医療界では「CST」という略語で呼ばれることが定着している。
従来、一般の人がCSTを知る機会はほぼなかっただろう。しかし、2024年12月、女性の美容外科医師が米国グアムで、CSTの風景を、背景に遺体が写ったまま写真撮影し、SNS投稿したことで、大問題になった。この画像は他人によって再投稿され、収拾がつかず、批判が殺到した。
CSTは美容医療を含めて手術の技能を高めるために貴重な機会となる。その実施に当たって、遺体を医学教育のために利用してもらおうとした人の敬意をはじめ社会的責任が欠かせない。社会からはそれを放棄していると見なされた。
倫理観の欠如は医学会でも問題視され、日本美容外科学会(JSAPSやJSAS)をはじめ国内の医学会が声明を発表するに至った。
今回、日本形成外科は、2026年度から、形成外科が実施するCSTの実施責任者、講師と受講者のうち日本形成外科学会会員に対して、1年1回のCST倫理講習を受講することを求めることとした。2025年度は、受講を強く勧めるとして、CST倫理講習の受講は、CST実施校に一任するものとした。
背景については、「昨年末の美容外科医によるCSTに関する不適切な行為が明らかになり、またそれ以前より本邦のCST実施者・参加者の倫理的不適切事案が形成外科を含めて相次いで発生し、本邦独自の篤志による献体制度を揺るがしております」と指摘している。
手術の技能を高める貴重な機会に

CSTは手術の技能向上につながるとされる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
倫理講習は形成外科で求められているが、美容医療においても倫理感が求められるのは変わりない。
かねて美容外科の分野でも、CSTが必要だという考え方は強まっており、国内でも、美容外科の技能向上の目的でCSTが行われることはある。
手術の安全性が求められる中で、医師の技能向上は欠かせず、CSTのような場で研修を行うことが求められているとされる。CSTの倫理感を持った中で、CSTが正常に行われることは、美容医療を受ける一般の人たちにとっても意義あると考えられる。今回の倫理講習受講必須化の動きは望ましいといえるのではないだろうか。
