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フランス、美容医療の「非外科的施術」にも2年研修を義務化へ フィラー注入やレーザー脱毛実施まで最短5年の方向に、美容医療医師の急増に問題意識

カレンダー2025.11.27 フォルダー 海外
フランスでも美容医療規制の動き。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

フランスでも美容医療規制の動き。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 美容医療を行う医師に求められる条件が、世界的に厳しくなっている。

 フランスが2025年11月に、美容医療の非外科的施術の実施に新たな条件を設ける動きを見せている。

医師会が管理、2年間のコースを義務化

フランス政府が規制への議論を進める。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

フランス政府が規制への議論を進める。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 背景 → フランスでは美容医療の医師が急増し、一般診療医不足や無資格者による事故が問題化。SNS集客によるトラブルも社会問題となっていた。
  • 新制度の骨子 → 政府と全国医師会協議会(Cnom)が合意し、美容医療を行う医師に大学間ディプロマ(DIU)課程の修了を義務付け。90時間の講義+80時間の実習が必要。
  • 導入見通し → DIU受講には3年以上の臨床経験が必須で、医学部卒後少なくとも5年を要する構造。11月24日に上院が採択し、フランスは非外科的施術を含め規制強化へ進行中。

 日本でも問題になっているが、フランスでも美容医療の医師が急増し、一般の病気を診る医師が不足しているという状況が起きている。また、経験の浅い医師が美容医療に流れていたり、SNSで集客する無資格者による事故が起きたりすることが問題視されていた。

 こうした状況を受けて、フランス政府は、美容医療の中でも非外科的施術を行う医師の条件を厳しく制限する規制強化を進めようとしている。

 今回、検討されている法案によると、もともとフランスでは、美容外科の手術については、形成外科などの専門医資格を必要としていた。しかも、実施する施設は行政による許可制としている。それに対して、ボツリヌス療法、ヒアルロン酸フィラー注入、レーザー脱毛、ピーリングなどの非外科的施術については規制が存在しなかった。

 今回、フランス政府とフランスの医師会に当たる全国医師会協議会(Cnom、Conseil National de l’Ordre des Médecins)は、美容医療の実施要件を大幅に引き上げる方針に合意した。

 その内容とは、医師会が審査、認証を行うというもの。このために、医師は2年間の「大学間ディプロマ(DIU、Diplôme inter-universitaire)」課程を修了する必要がある。その内容は、90時間の講義と80時間の実習で、美容医療に特化した訓練期間が設けられる見込みになっている。

 報道によれば、DIUの課程を受けるためには、3年間の臨床経験が必要ということで、美容医療の非外科的施術に取り組むまでには、医学部を卒業後最低5年はかかる見通しとなる。

 この制度案がこの11月24日までに上院で採択された。今後、下院との調整などを経て最終採決に向かうことになる。最終決定ではないものの、フランスが美容医療の規制強化に進んでいるのは間違いない。

当初案の「許可制」は見送り

非外科的施術が対象に。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

非外科的施術が対象に。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 制度設計の経緯 → 当初、フランス政府は非外科的美容施術にも国の許可制導入を検討したが、実務の煩雑さを理由に上院委員会が修正。最終的に医師会に認可権限を移す形で決着。
  • 背景にある問題意識 → 美容医療への医師流入が急増し、政府が強い危機感を持って対応。公的制度の介入寸前まで議論が進んだ。
  • 国際的潮流との関係 → 台湾の資格制度厳格化やマレーシアの美容点滴・乳房フィラー違法化と同様、フランスの制度整備も美容医療の安全性確保を重視する世界的流れの一環といえる。

 フランス政府は当初、非外科的美容施術も美容外科と同じく許可制とする案を提示していた。

 しかし、この案は、公的な計画の中で扱うべき領域ではない、現場調整が複雑すぎるといった懸念から、上院委員会が修正を提案していた。最終的に、医師会に認可権限を移す形で落ち着いた。

 かろうじて、国の許可を受けないと美容医療ができないという状況とはならなかったが、それだけフランス政府の美容医療への医師流入への問題意識が強かったということだろう。

 ヒフコNEWSで、伝えたように、台湾で美容医療に取り組むための医師の条件が厳しくなったり、マレーシアでは乳房フィラーや美容点滴が違法化されたりする動きが見られている。美容施術の安全性をめぐる国際的な議論は加速している。

 フランスの制度整備も、こうした流れと関連するものととらえられ、国が美容医療を医療としてどう扱っていくかが問われている。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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