
過去の米国食品医薬品局(FDA)文書より。偽造品の存在を警告していた。特定の製品番号や製造番号が使用されている。(出典/FDA)
美容医療の中でも特に利用者が多いボツリヌス療法に関して、偽造品や未承認品の流通が世界的に問題になっている。
2025年11月までに米国食品医薬品局(FDA)、英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)、オーストラリア医療製品規制庁(TGA)が立て続けに警告を発した。
日本でも既に偽造品が確認されており、国内外で注意が必要な状況となっている。
深刻な健康被害も発生

オーストラリアで押収された偽造品。(出典/オーストラリア医療製品規制庁)
- 米国FDAが未承認ボツリヌス製剤に警告 → 2025年11月、FDAは偽造・未承認ボツリヌス毒素製剤を違法販売する多数のウェブサイトに警告文書を送付。「筋力低下」「嚥下困難」「呼吸障害」など重大な健康被害のリスクを指摘した。
- 英国・オーストラリアでも被害と摘発相次ぐ → 英国では2025年夏に41件の入院例が発生し、一部は無資格者による施術だった。オーストラリアでも偽造ボトックスが相次いで押収され、TGAが「個人輸入も違法」と警告を出した。
- 偽造品流通の背景に非正規ルート → 韓国製を装った製品などが出回り、正規の保管・流通条件を満たさないまま販売。冷蔵管理が不十分な環境で品質劣化や混入リスクが高まり、国際的な監視体制の強化が求められている。
この11月に警告を出したのが米国。FDAは2025年11月、未承認・偽造のボツリヌス毒素製剤を違法に販売していた多数のウェブサイトに対し警告文書を出した。
同局は「未承認品はボツリヌス中毒を含む重大な健康リスクを伴う」と強調した。
FDAは未承認品に関連する症状として、筋力低下や飲み込みづらい、呼吸困難を例示している。
英国でも2025年夏、不正なボツリヌス毒素製剤の使用が疑われる41件の入院事例が発生した。施術の中には、自宅やサロンといった無資格者による施術が一部含まれていた。
未承認品の多くは韓国製を装った非正規品で、国内規制を満たさないまま流通していた。
さらにオーストラリアでは2025年7月、国境で偽造ボトックスのバイアルが相次いで押収され、正規品と極めて似せた包装ながら、綴りの誤りやバッチ番号の不一致が確認された。
TGAは「個人輸入でも偽造品は認められない」と警戒を呼びかけている。
正規の医薬品は冷蔵保管や流通条件が厳格に定められているが、非正規ルートでは保管・品質管理が保証されず、偽造品が紛れやすい環境が生まれているとされる。
日本でも「偽造ボトックス」問題は既に起きている

正規品と偽造品の比較。(出典/厚生労働省、アラガン・エステティックス)
- 国内で初確認された偽造ボトックスビスタ → 2024年7月、厚生労働省が国内初の偽造ボツリヌス製剤を確認。米国で警告されていたロット番号と一致し、非正規ルートからの流入が疑われている。
- 無資格施術・非正規製剤の拡散リスク → 米国では医療機関外での施術により健康被害が発生。日本でも、SNS経由でのヒアルロン酸注射や美容点滴など、無資格者による行為が摘発されている。
- 施術時の確認が必須 → 偽造製剤の国際的流通が問題化する中、施術を受ける際には「施術者の資格」「使用薬剤」「仕入れルート」を確認することが、利用者自身の安全を守る鍵になる。
日本でも2024年7月、厚生労働省が「ボトックスビスタ」の偽造品が国内で初めて確認された。メーカーであるアラガン・エステティックスが調査したところ、偽造ロット番号は米国で警告が出ていたものと完全に一致し、非正規ルートから国内に流入した可能性が高いと報告された。
ヒフコNEWSでは以前、米国で偽造ボツリヌス注射による健康被害が相次いだことを報じたが、その際にも特徴的だったのは、被害者が医療機関ではない場所で施術を受けていた点だった。
国内では、無資格者によるヒアルロン酸注射や美容点滴がSNSを介して広がる事例が摘発されたことがある。美容医療の需要が増えるほど、一部の利用者が安価な施術を求めて非正規の製剤を使う可能性が出てくる。
国際的に偽造ボツリヌス製剤が問題化している今、日本においても、施術を受ける際には「どこで、誰が、どの薬剤を使っているのか」を確認することがこれまで以上に重要になる。
