
ほおがこける背景は。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
「オゼンピック」「ウゴービ」「マンジャロ」「ゼップバウンド」など、GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)による体重減少の効果が世界的に注目されている。
GLP-1薬は自由診療でのダイエット目的での乱用が心配されることもあるが、その影響の一つとして「オゼンピックフェイス」という言葉で有名になった顔がこける現象がある。
2025年12月、ドイツの研究者がそのメカニズムを推定する論文を報告した。
顔の脂肪はなぜ全身より先に減る?

顔に影響出やすい?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 顔の脂肪減少が全身より目立つ → GLP-1薬による減量では、全身の脂肪減少(約9%)に比べ、顔のこめかみ脂肪体で約41.8%、頬脂肪体で約69.9%と大幅に減少していた。
- 「オゼンピックフェイス」は部分的リポジストロフィー → ドイツ研究チームは、単なるやつれではなく「脂肪組織の異栄養症(リポジストロフィー)」の一種として位置づけ、顔特有の構造変化が関与していると分析している。
- 美容領域でも注視すべき副作用 → 海外では、年齢以上に顔がこける、頬やこめかみが急に痩せるといった訴えが相次ぎ、美容医療での対応や補正治療の検討が広がっている。
特に海外の情報を見ていると、皮膚科や美容医療の分野から、GLP-1薬について「年齢以上に顔がこける」「頬やこめかみが急にこける」といった変化が指摘されることがよくある。
その詳しい実態は明らかになっていないが、論文によれば、GLP-1薬による減量では、全身の脂肪減少よりも顔の脂肪減少がはるかに大きいケースが示されている。
セマグルチド(オゼンピック)使用例5件を対象とした解析では、3D画像で評価したこめかみ脂肪体(ファットパッド)が平均41.8%、頬脂肪パッドが69.9%減少していたのに対し、別の試験で示された全身脂肪量の平均減少は約9.2%にとどまっていたと紹介されている。
ドイツの研究者は、こうした顔がこける現象について単なる「ダイエット後のやつれ」をとらえておらず、顔面の部分的な「リポジストロフィー(脂肪異栄養症)」として位置づけている。
内臓脂肪への影響が大きい事実

GLP-1薬が国内外で注目される。(写真/Adobe Stock)
- 顔の脂肪は「表在層」と「深層」で反応が異なる → 表在脂肪(dWAT/SAAT)は食事制限などに敏感に反応しやすく、短期間で薄くなる。一方、深層脂肪(sWATやバッカルファット)は内臓脂肪に近い性質を持つ。
- GLP-1受容体は内臓・深層脂肪に多い → GLP-1薬が作用する受容体(GLP-1R)は皮下脂肪より内臓や心外膜脂肪に多く存在し、結果として顔の深い脂肪層も反応しやすく、こけやすい可能性がある。
- 構造変化が老け見えやすい → 急速な脂肪減少により、脂肪を支えるコラーゲン線維が変化し、たるみやシワが強調。
研究者は、このような顔がこける背景として、顔の脂肪が「表在層」と「深層」に分かれる点を強調している。
皮膚直下の表在脂肪(dWAT/SAAT)は、食事量の変化に敏感で、数週間のカロリー制限で厚みが素早く減ることが動物実験で示されている。
一方、深層の脂肪(皮下脂肪sWATやバッカルファットなど)は、内臓脂肪に近い性質を持つ。
論文によると、GLP-1薬と反応している「受容体(GLP-1R)」は、脂肪組織全体では数が多いとはいえないものの、内臓脂肪や心臓の周囲の脂肪(心外膜脂肪)では皮下脂肪より多く存在しているとされる。
結果として、GLP薬で心外膜脂肪が全身の体重減少を上回って薄くなる現象も報告されている。
研究者は、内臓脂肪に反応が出やすいために、顔の深い脂肪が減りやすい可能性を推定する。
加えて、急速な体重減少では、脂肪量そのものの減少に加え、脂肪組織を取り巻くコラーゲン線維の構造が変わり、たるみやシワが強調されると説明されている。
論文は、こうした要素が重なった結果として、ほお、こめかみ、下顎部、眼周囲が急にこけて、「年を取ったように見える可能性を指摘する。
予防の手段も?
研究グループが注目するのは、「カベオリン-1(CAV1)」という物質だ。これは、細胞膜の小さなくぼみ「カベオラ」に存在し、GLP-1薬が細胞にシグナルを伝える入り口になる可能性がある。
これをきっかけに、炎症などの影響を脂肪細胞が受けやすくなり、結果として脂肪が縮む変化を起こすというメカニズムが考えられている。論文では、CAV1を手掛かりに、薬や温熱、高周波などを使って予防が可能となる可能性についても言及している。
今回の論文を見ると、GLP-1薬は、ほおがこけるという変化と関連していることが確かである可能性が考えられる。引き続き注意が必要になりそうだ。
