
世界の美容医療は?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
世界の美容医療は大きく変化している。現時点で世界の各地の美容医療の状況はどうなっているのか。
美容クリニック、製剤、デバイス、化粧品とカテゴリーに分けて見ていく。第1回は美容クリニック──。
連載を踏まえて、世界の美容医療をさらに深掘りしていこうと考えている。
メディカルスパ急拡大の米国

米国で存在感を示すレーザー専門の美容クリニック。400拠点を越える。(出典/Milan Laser Hair Removal)
- 米国美容医療の特徴→米国は世界最大の美容医療市場で、2024年の施術件数は約616万件とブラジルの倍近い。ただし外科手術よりも、非外科的施術が件数を押し上げている点が特徴。
- メディカルスパの台頭→ボツリヌス療法やフィラー、レーザー、ボディコントゥアリング、点滴などを提供するメディカルスパが急拡大。
- 規制強化の兆し→無資格施術が問題となり、ニューヨーク市では免許取消事例も発生。今後はメディカルスパの拡大と並行して、規制強化が進む可能性。
米国は世界最大の美容医療大国とされる。国際美容外科学会の統計によれば、2024年、米国の美容施術件数は616万5173件で、2位のブラジルの312万3758件の倍近い数字になっている。しかし、実は美容外科手術だけで見ると、ブラジルの方が多く、米国の施術が多いのは、非外科的施術が多いためという面がある。
存在感を増しているのがメディカルスパだ。
しかし、2026年1月、ヒフコNEWSでは、米国ニューヨーク市のメディカルスパが調査され、無資格の美容施術が行われていたことなどで免許取消されたことを伝えた。今後、米国ではメディカルスパの規制が進む可能性もある。
そもそもメディカルスパは、若返り治療などの医療処置を行うライトな医療機関。提供されるのは、いわゆる美容皮膚科的な施術などだ。具体的には、ボツリヌス療法やフィラー治療といった注入治療。そのほか非外科的なボディースカルプチャー(ボディーコントゥアリング)、レーザー治療など。また、点滴療法、ホルモン治療なども行われている。
問題が指摘される半面で、米国では、このメディカルスパの巨大化が進んでいる。その規模は大きく、拠点の多いチェーンは、Ideal ImageやSkinSpiritなどは数十拠点。このほかレーザー脱毛中心のMilan Laser Hair Removalは拠点数400を超える。LaserAwayも大きい。
メディカルスパが拡大し続け、その動きは美容医療全体で無視できない規模になっている。
学会は専門医の関与を勧める

専門外の医師による美容施術が被害も起こしている。死亡事故を受けて米国形成外科学会が声明。(出典/米国形成外科学会)
- 医師関与の不透明さ→米国のメディカルスパの多くは、ウェブサイト上で医師の関与が分かりづらく、誰が施術を行うのかよりも「安さ」やサービスが前面に出ている。医師不在、または関与が薄い施設が多いことが安全性リスクとして指摘されている。
- 専門医重視の流れ→米国医師会や形成外科学会、皮膚科学会は、美容施術は形成外科専門医や皮膚科専門医が行うべきだと明確に主張している。一方で、実際には専門医でなくても施術が可能。
- 制度の混乱と安全問題→医師不在の違法施設や、看護師・ナースプラクティショナーの独立施術、AEB免許による非医療施設などが混在し、感染症拡大や無資格手術といった問題も発生。
ただし、メディカルスパのチェーンのウェブサイトを見ると、医師の関与は分かりづらい。店舗とサービスが前面にあるので、誰に施術を受けるのかよりも、安く施術を受けることに価値が置かれているように見える。
2025年7月の米国フロリダ州の医師による論文は、メディカルスパには、医師のいない施設や関与が薄い施設が多く安全性のリスクが高いと指摘している。米国医師会はこれを問題視し、監督体制の法制化を求めている。
別の米国医師会誌では、2022年の段階で、メディカルスパの医師オーナーは37%にとどまり、メディカルスパは医療機関ではなくビジネスと扱われていることを紹介している。
ヒフコNEWSでも、米国タフツ大学の医師が、同じような医療関係者の関与不足の問題を指摘していることを紹介済みだ。継続的に、メディカルスパの運営は批判にさらされているといえる。
こうした状況がある中で、美容施術は専門医が行うべきだという考え方が米国で高まっている。
医師の間で、美容医療は専門医が手掛けるべきだという考え方は強い。
米国は、米国専門医認定機構が、形成外科専門医や皮膚科専門医を公認し、形成外科専門医や皮膚科専門医が美容医療を担っている。米国形成外科学会や米国皮膚科学会は、専門医が治療を行うよう勧めている。民間団体の美容外科の専門医資格は公式ではないと注意喚起も行っている。
それにもかかわらず、美容外科的な施術は、専門医がなくても実施できる。州によっては、一定の医療行為が認められている看護師、ナースプラクティショナーなどにも独立が認められている。
米国では、無資格のメディスパで美容外科手術を行っていたとして施設が摘発されている。また、メディスパでHIV(人免疫不全ウイルス)感染が広がる問題が発生している。
医師がいる施設では、専門医資格の有無が問題になり、医師が監督していても、医師が常駐しているかどうかという問題がある。さらに、ナースプラクティショナーが関われることから、医師がいるかいないのかという問題もある。これらにさえ入らないものとして、先日、ニューヨーク市の調査で問題視された、医療関係者すらいない違法施設もある。少なくとも米国ニューヨーク市では、「AEB(Appearance enhancement business、外見改善ビジネス)」と呼ばれる美容系の免許があり、これを得て美容施術を行うケースが多いと見られる。
米国の美容クリニックを取り巻く状況は混乱状態にあると言って大袈裟ではないかもしれない。
欧州で台頭する医療脱毛チェーン

オーストラリアから始まったクリニックが、英国で展開。安さを強調している。(出典/Laser Clinics)
- 英国の制度的背景→英国ではNHSによる公的医療が中心である一方、美容外科は医師限定、非外科的施術は非医療従事者でも提供可能という状況が続いてきた。この制度のゆがみがトラブルを生み、現在は新たな非外科的施術のライセンス制度導入が検討されている。
- 欧州で進むチェーン化→英国のLaser Clinics、フランスのLAZEO、スペインのClínicas Dorsiaなど、非外科的施術を中心とした美容医療チェーンが各国で拡大している。国境を越えたグローバル展開も進み、拠点数は100を超える例も珍しくない。
- 規制強化と安全性の課題→フランスでは非外科的施術を行う医師にも専門研修を義務付けるなど、規制強化が進行中。国ごとに制度は異なるものの、チェーン化の拡大とともに安全性の問題が共通課題として浮上している。
英国では、公的な医療制度NHS(国民保健サービス)が医療を無料で提供しており、医療は公的な性格が強い。そうした中で、美容医療の中でも、美容外科は医師のみが行えるが、非外科的施術については医療従事者以外でも提供できる状況が続いている。これがトラブルの原因となり、新たな非外科的施術のライセンス制度が作られる見通しになっている。
英国でも、米国と同じようなチェーンが拡大している。オーストラリアで開業されたLaser Clinicsというグループが2019年から英国内で増えている。同グループは、ニュージーランド、カナダにも拠点を広げ、グローバル展開を進め、165拠点を越えている状況だ。
状況はフランスも似ている。このうち規模の大きなものがLAZEOというチェーンで、100拠点を越えており、ベルギーにも拠点を広げている。レーザー脱毛を中心に、非外科的施術も手掛けている。そんなフランスでも美容医療の規制強化が進み、このたび非外科的施術を行う医師も、専門研修を受けることが義務付けられることになった。
また、スペインでは、Clínicas Dorsiaという美容外科も含めたチェーンが100拠点を越えており、独自の発展をしている。
欧州では、国ごとに少しずつ医療制度に違いがありながらも、中小規模の医療グループや大規模グループが現れており、非外科的施術を中心にチェーンによる運営が広がっている状況にある。そうした中で、安全性の問題が起きていることは共通していると考えられる。
日韓の存在が大きいアジア

美容医療のクリニックが多く入居する江南区のビル。(写真/編集部)
- 日本・韓国の大規模化→日本では湘南美容グループが259拠点と世界最大級の規模に成長し、韓国ではオラクル皮膚科が100拠点超を展開。いずれも非外科的施術(美容皮膚科)が拡大の原動力となっている。
- 国ごとの発展形の違い→韓国では流れ作業型の「工場系」クリニックが認知される一方、タイはチェーン化が限定的、中国は都市ごとに中規模グループが点在するなど、国によって美容医療の集約のされ方に違いが見られる。
- 非外科的施術中心の拡張→インドネシアのZAP Clinic(100拠点超)やインドのKaya(約100拠点)など、アジア各国で非外科的施術を軸に大規模展開するグループが増えており、アジアでもチェーン化が重要な潮流となっている。
アジアでは、美容医療の大規模グループが各国に現れている特徴がある。
日本では、湘南美容グループが259拠点で、美容外科も手掛けるグループとしては世界最大規模と見られる。日本国外にも医院を展開し始めている。この湘南美容グループも美容皮膚科が拡大の大きなきっかけとなった。非外科的施術の利用者を集める欧米の美容医療の傾向は日本でも共通しているという見方もできる。
韓国では、オラクル皮膚科が、100拠点を越える。このグループは日本を含めた韓国外にも医院を開設している。このほか複数店舗のチェーンも増え、韓国内では「工場系」と呼ばれ、流れ作業的な非外科的施術を行う医院が広く認知されている状況だ。
タイは美容クリニックの数が多いが、チェーン化は進んでいない。V Square Clinicが約30拠点を展開し、目立つ。中国は利用者が多いが、都市ごとに中規模グループが存在する状態。Yestar(艺星)と呼ばれる医院グループが主要都市に医院を構えているのが目立っているが、欧米ほどの大規模なチェーンは限られている可能性がある。インドネシアでは、ZAP Clinicというグループが100拠点を越える。インドではKayaが100拠点近い。いずれも非外科的施術を中心に規模を拡大している状況だ。
ブラジルの巨大チェーンは医療?

ブラジルの巨大チェーン。レーザー脱毛を中心に提供。(出典/Espaçolaser)
- 美容外科大国ブラジル→ブラジルは世界で最も美容外科手術件数が多く、医師の技術や評判が重視されるため外科手術のグループ化は進みにくい。一方で、美容ニーズ自体は世界最大級といえる。
- 非外科的施術の巨大チェーン化→非外科的施術では、Espaçolaser(800拠点超)やOnodera Estéticaなどの大規模チェーンが拡大。医師以外が現場施術を担うケースも多く、フランチャイズ型でビジネス色が強い点が特徴とされる。
- 世界共通の構図とリスク→レーザー脱毛チェーンを基盤に美容皮膚科施術を広げる動きは世界共通だが、日本や英国では経営破綻例もあり、運営不安定な施設では施術の質や安全性への懸念が生じやすい。各国の変化は美容医療の将来を考える上で重要な示唆となる。
ブラジルは世界で最も美容外科手術が多い国となる。国際美容外科学会の統計によれば、2024年に、米国の美容外科手術の件数が199万9528件に対して、ブラジルは235万4513件。
美容外科手術は、医師の技術や評判が重要なので、グループ化は難しいと見られる。
ブラジルでも非外科的施術についてはチェーンが拡大している。著名なのはEspaçolaserで、ブラジル国内外を含めて800を超える拠点を持つ。このグループが医療機関であれば世界最大規模といえそうだが、同グループのウェブサイトを見ると、創業者は医師であるものの、現場で運用を任されているのは必ずしも医師ではないと見られる。採用募集では医師が見当たらない。自前の研修期間でレーザー施術を学ばせて、現場で施術をさせるという形。ただ、施術メニューとして注入系や照射系の施術も行われている。フランチャイズも募集されており、高収入を得られることが強調されている。
このほかブラジルでは、Onodera Estéticaという美容グループもチェーン化し規模を拡大している。
ブラジルは、美容施術のニーズは世界の中でも大きいと見られるが、医療という枠の外で、施術が広がりを見せている可能性も考えられそうだ。
オーストラリアでは、先に英国で紹介したLaser Clinicsがオーストラリアで創業しており、世界的に展開し、100拠点を越えている。
世界を見ると、レーザー脱毛のチェーンをベースに、この施設の中で、美容皮膚科の施術を増やすというアプローチが進んでいることが見て取れる。日本では、医療脱毛は苦境に至り、経営破たんが続いた。英国でも、SK:Nというグループが破たんしたこをヒフコNEWSで伝えている。クリニックの運営がうまくいかずにつぶれるような状況では、提供される施術の質も安心できない。世界の状況がどのように変化するかは、美容医療のこれからを考える上でヒントになる。
参考文献
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Coyle K, Kesty KR. Cosmetic Lasers in the US: Who’s Using Them, the Latest Technology, and What Patients Need to Know. J Cosmet Dermatol. 2025 Jun;24(6):e70235. doi: 10.1111/jocd.70235. PMID: 40433697; PMCID: PMC12117409.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40433697/ -
無免許の美容外科手術、治療失敗で健康被害、米国で4人逮捕、偽医師らが脂肪吸引、豊尻術や豊胸術のでたらめ施術、増加中「メディカルスパ」がトラブルの場に
https://biyouhifuko.com/news/world/7880/ -
英国政府が美容医療の安全強化、無資格施術の排除へ動く、リスクの高い施術は医療従事者のみ、未成年者への施術は厳しく制限
https://biyouhifuko.com/news/world/14051/ -
フランス、美容医療の「非外科的施術」にも2年研修を義務化へ フィラー注入やレーザー脱毛実施まで最短5年の方向に、美容医療医師の急増に問題意識
https://biyouhifuko.com/news/world/15498/
