
鈴木芳郎(すずき・よしろう)氏。ドクタースパ・クリニック院長。(写真/編集部)
鈴木芳郎(すずき・よしろう)氏
ドクタースパ・クリニック院長
- 美容医療の本質→技術だけでなく、背景や価値観まで含めて「一人の人をトータルで診る」姿勢が重要。
- 治療選択の考え方→優れた治療が一つあるのではなく、「何に悩んでいるか」に合った方法を選ぶことが最優先。
- 若さの評価→輪郭だけでなく、肌質や首元など全体の印象を含めて初めて「若く見える」結果になる。
──糸やフェイスリフトの選び方もそうだが、美容医療をどう受ければ?
鈴木氏: 美容医療を考えていくと、結局「一人の人間をどう見るか」という話に行き着きます。
医師の技術は手先の器用さだけじゃない。見解や知識、経験など、そうした要素すべてが必要で、とにかく一人の人を全部診ていく。
──「全部」とは、顔の中だけではなく、背景まで含めて。
鈴木氏: スキンケアも大事な要素だと思いますし、内面的な健康状態も関係する。元気がなくて顔色が良くないとか、そういう状態だと、やっぱりあまり美しく見えない。
だから本人の悩みを聞いて、それを受け入れて、それに対して助言する。自分ができない領域なら、他の人に頼ることもある。
要は「ホームドクター」みたいなものですよね。どんな病気でもまず相談できて、微妙なところも含めて診てくれる。美容医療でもそういうことをやろうとするなら、やっぱり一人で全部を診ていく、というのが必要になってくると思います。
──最近は早い段階で開業する問題が注目されている。
鈴木氏: そういう流れは確かに強いですよね。「ヒアルロン酸だけやってます」とか、「この領域だけ」とか。それはそれで一つのやり方だし、私自身もフェイスリフトを軸にしているから、特化そのものを否定するつもりはない。ただ、フェイスリフトで顔を引き上げた状態で、さらにトータルで若く見せるために皮膚表面からのケアもアプローチしていく。そういう発想は必要だと思っています。
──輪郭が若返っても、全体が若く見えるとは限らない。
鈴木氏: フェイスリフトだけやっても、輪郭は20代ぐらいの輪郭になったかもしれない。でも、全体を俯瞰(ふかん)して見た時に、その人が20代に見えるかというと、そうじゃないわけです。
首にシワがあるとか、肌質が年齢を感じさせるとか、いろんな要素が残る。結局、トータルで若く見えることが重要です。そうでなければ、満足のいく結果にはつながらないと思います。
──その「トータル」の前提として悩みに的確に答えていく必要がある。
鈴木氏: そうですね。何を悩んでいるか、何が課題か、そこに対して適切にやらないといけない。よく「どの美容医療がいいですか」って聞かれるんだけど、私はそれってナンセンスかなという気がする。優れている治療が一つある、という話ではありません。悩んでいるところが解決するのが一番なんです。
- 悩み起点→「たるみ」なら糸もフェイスリフトも選択肢。治療は悩みから逆算して考える。
- 見立ての重要性→できる治療に当てはめるのではなく、限界を見極め、必要なら他の方法や医師を勧める。
- ガイドラインの役割→リスクや変化の限界を事前に理解した上で選べるよう、患者向け啓発が重視される。
──悩みが「たるみ」なら、糸もフェイスリフトも選択肢に入る。
鈴木氏: そうです。たるみならフェイスリフトという選択もあるし、糸という選択もある。別の悩みなら別の方法になる。要するに悩み起点で考えないといけない。
──現実には「できる手段が限られている」というクリニック側の事情で、無理に当て込まれるケースもあり得る。
鈴木氏: 「毛穴しかやらない先生」のところに行って、毛穴以外の悩みもあるのに、そこだけで何とかしようとする。「ヒアルロン酸だけで何とかしようとする」ケースも少なくありません。できないことを無理にやるより、適切な見立てをして、必要なら「別の方法がいいんじゃないですか」と助言する、あるいは他の先生に頼る、という方が大事だと思う。
──全部を診るというのは、万能を装うことではない。
鈴木氏: そうですね。全ての要素を見て、悩みを聞いて、それを受け入れて、助言する。自分でできないなら頼る。そういう意味での全部です。結局は、その人の悩みが何で、どこまで介入すべきで、どこは介入しない方がいいのか、そこを判断できることが重要だと思います。
──2026年に業界ガイドラインが出る見通し。日本美容医療協会理事長として作成を取りまとめる立場。
鈴木氏: ガイドラインは、施術を受ける人たちに読んでもらうことを意識したものになる予定です。こういうリスクがある、こういう限界がある、ということを分かった上で施術を受けてもらうことが重要だからです。
2023年に改訂版を出した美容医療指針は医師が見る前提のガイドラインでしたが、今はそれだけでは足りません。説明義務違反が問題になる時代です。苦情の中には「こんなに切ったのにほとんど変わっていない」というものもあります。写真を見ると変化はある程度ある。ただ、本人が「変わった」と感じるためには、よほど大きく変わらないと納得できない場合もあります。「この治療で是正できるのはこの程度」という現実的な変化幅を、最初から知った上で選んでもらう必要があります。そのための啓発がますます重要になると考えています。(終わり)
プロフィール

鈴木芳郎(すずき・よしろう)氏。ドクタースパ・クリニック院長。(写真/編集部)
鈴木芳郎(すずき・よしろう)氏
ドクタースパ・クリニック院長
1957年生まれ。1983年東京医科大学医学部卒業。東京医科大学形成外科教室入局後、国立東京第二病院で研修・勤務。マイクロサージェリー(切断指再接着術など)を日常的に行うなど形成再建外科の技術を習得し、顔面外傷治療の経験を通じて顔面解剖・構造への理解を深めた。1990年日本形成外科学会認定医取得。1992年東京医科大学形成外科助手、1993年医学博士取得。1995年同講師。1996年海老名総合病院形成外科部長。米国など海外の著名医師に師事し美容外科の研鑽を積む。2001年サフォクリニック副院長。日本のスレッドリフト黎明期から糸による引き上げ治療に取り組み、中顔面若返り手術であるケーブルスーチャー法を国内で早期に導入した医師として知られる。2006年ドクタースパ・ クリニック新宿美容外科・歯科院長、2010年ドクタースパ・クリニック開業。2014年東京医科大学形成外科学分野 客員講師。日本糸リフト協会理事長、日本美容医療協会理事長、日本美容医療総合学会理事。千葉大学形成外科客員講師、滋賀医科大学形成外科客員講師。日本美容外科学会(JSAPS)専門医、日本形成外科学会(JSPRS)専門医。国際美容外科学会(ISAPS)正会員、日本抗加齢医科学会(JAAM)専門医。
