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フランス、美容医療研修制度を再設計へ 2年制のDIUは一時停止、義務化に耐える仕組み作りが課題

カレンダー2026.1.21 フォルダー 海外
フランスでは美容医療の非外科的施術を行う医師に2年間の研修を義務付ける方向。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

フランスでは美容医療の非外科的施術を行う医師に2年間の研修を義務付ける方向。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 日本では「直美」が問題になっているが、海外では美容医療に関わる医師が特別な研修を受けなければならないようにする規制強化が進んでいる。

 そうした国の一つとしてフランスがある。法律で義務付ける方向の中で、研修の再設計が進む。

フランス国内3大学が研修を提供したが体制作り直しへ

フランスで美容医療の研修を行うDIUの仕組み。関連のウェブサイト。(写真/DIU)

フランスで美容医療の研修を行うDIUの仕組み。関連のウェブサイト。(写真/DIU)

  • 制度の動き→フランスでは2025年11月から、非外科的美容医療に専門研修を義務付ける新制度が始まる方向。
  • 研修の中核→2024年に大学間ディプロマ(DIU)が創設され、講義90時間+実習80時間で医師を養成。
  • 課題→制度移行期にあり、2025/26年度の研修は一時停止。新制度下での運営体制が未整理。

 フランスでは2025年11月に、美容医療の非外科的施術に取り組むまでに、専門の研修を必要とする新制度が上院で採決され、新制度が開始される方向となっている。

 実はこの制度に先立つ2024年、フランスでは美容医療のための研修の仕組みが立ち上がっていた。これが「大学間ディプロマ(DIU、Diplôme inter-universitaire)」と呼ばれるもの。DIUとは、フランスの大学、または複数の大学が共同で授与する学位で、国家資格(国が授与するディプロマ)とは異なり、特定分野の専門的研修を目的として設けられる制度。DIU自体は美容医療に限らず、外科、内科、リハビリテーション、医療安全など幅広い医療分野で長年にわたり運用されてきた。

 その一つとして新たに導入されたのが美容医療DIUであり、これはフランスで初めて、美容医療の実践を体系的に教育・認証することを目的とした大学間プログラムとなる。カリキュラムは、約90時間の理論講義と、注入治療、レーザー、ピーリングなどを含む約80時間の実習から構成されている。

 美容医療の研修を実施してきたのはフランス国内の3つの大学。UPEC(パリ東クレテイユ大学)、ボルドー大学、エクス=マルセイユ大学。

 既に2024/25年度の第1期生60人の医師を対象にした研修が始まっている。応募したのは350人だったという。

 この背景にあるのは、皮膚科や形成外科の専門医資格を持たない医師が美容医療を手掛けるケースが増えて、トラブルが増えているという状況。これは日本などと変わらない。

 このDIUが今後、フランスで義務付けられる美容医療の研修制度の基本になってくると見られる。

 ただし、今回、ヒフコNEWSが実施3大学に取材したところ、それぞれのDIUの2025/26年度の第2期は一時停止となっていることが分かった。責任者の一部医師も異動するなどして、現時点では運営もできない状況になっている。法律により研修が義務付けられることで、従来の仕組みがどのような形で引き継がれるか、課題も多いと見られる。

約5000人が非専門医と見られる

フランスのパリ東クレテイユ大学のホームページ。美容医療の研修を実施。(写真/パリ東クレテイユ大学)

フランスのパリ東クレテイユ大学のホームページ。美容医療の研修を実施。(写真/パリ東クレテイユ大学)

  • 人材ギャップ→美容医療医師約1万人のうち、約半数は研修未受講と見られる。
  • 制度の現実性→DIUは年60人規模で、全員を研修する体制作りは難しい。
  • 影響と課題→研修義務化で施術医が一時的に減れば、医療提供体制をどう維持するか課題。

 美容医療を手掛ける医師に研修を義務付ける方向は決まったものの、その実現には多くの課題がありそうだ。

 フランスの報道を見ると、フランスで美容医療を手掛ける医師は約1万人に上っている。その半数に当たる約5000人は美容医療の研修を受けていない状態となる。

 今後、この約5000人は研修を受ける必要が出てくると考えられるものの、DIUの第1期が60人だったことを考えると、同じ体制では単純計算すれば80年かかる計算になる。それは非現実的だ。

 フランスでは、年間200万人近くが美容医療を受け、約120万がヒアルロン酸やボツリヌス療法などの非外科的施術を受けているとされる。こうした人に対応できる医師が、研修制度が義務になった場合に、直近だけ考えれば、施術できるのが半減する状況が受け入れられるのかは見えない。

 フランスでは、専門の研修が義務になる可能性は高そうではあり、こうした課題を解決する必要がある。

 フランスの美容医療研修義務化は、世界的に見ても、進んだ制度といえ、今後の制度設計の行方が注目される。

参考文献

 フランス、美容医療の「非外科的施術」にも2年研修を義務化へ フィラー注入やレーザー脱毛実施まで最短5年の方向に、美容医療医師の急増に問題意識
https://biyouhifuko.com/news/world/15498/

 Soixante médecins dans la première promotion du DIU médecine esthétique
https://www.lequotidiendumedecin.fr/sante-societe/politique-de-sante/soixante-medecins-dans-la-premiere-promotion-du-diu-medecine-esthetique

 Conditions d’accès au DIU, VAE… L’encadrement de la médecine esthétique se précise
https://www.egora.fr/actus-pro/conditions-dexercice/encadrement-de-la-medecine-esthetique-la-mise-au-point-de-lordre

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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