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ステマと美容医療 Vol.3 ステマの被害者や加害者にならないために、消費者庁による検討会を振り返って考える③

カレンダー2023.11.23 フォルダー連載・コラム

ポイント

  • 企業がステマを防止すべく対策に力を入れている
  • フェイクレビューの制作がビジネスとして成長していた
  • ステマの被害者や加害者にならないために、情報を疑う目を持つ必要性
お金でゆがめられる評価。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

お金でゆがめられる評価。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 2023年10月1日から、ステルスマーケティング(以降ステマと表現)が景品表示法違反となった。

 規制の制定にあたり、2022年9月16日から12月27日まで8回に渡って行われた、消費者庁による「ステルスマーケティングに関する検討会」を振り返りながら、美容医療の利用者が注意するべき点について考えていく。今回は第3回。

ステマを防止するための自主的な取り組み

企業の対策とは?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

企業の対策とは?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 3回目の検討会は、2回目に引き続き、事業者および事業者団体による「ステマを防止するための取組状況」および「ステマ規制に対する考え方」をヒアリングする内容で行われた。

 参加した企業は、ポータルサイトを運営するヤフー、レビューサイトを運営するカカクコム、ECサイトを運営するアマゾンジャパン、レビューサイトを運営するリクルート、フェイスブックやインスタグラムを提供するフェイスブックジャパンの合計5社。

 ヤフーの説明によると、「Yahoo!ニュース」などのサイト上にステマが横行すると、メディア自体の信頼や広告への信用度の低下につながるため、運用が不適切な記事やサービスについては終了勧告を行うなど、以前から厳しく対応してきたという。

 カカクコムが運営する「価格.com」や「食べログ」では、サイトの利用規約、投稿ガイドライン・ルール、コミュニティ規定に同意を求めており、実際にレストランに行ったり、商品を使用したりした経験に基づくレビューの投稿であることを、掲載の大前提としているという。また、レビューした対象の評価や評判を意図的に操作するような書き込みは禁止され、店舗やサプライヤーといった関係者による投稿についても、一切禁止となっているという。

 アマゾンではレビューを投稿するにあたり、アマゾンアカウントを持っていてサインインしていること、過去12カ月間にアマゾン上で通算5000円以上の購入実績があること、当該商品の出品者の関係者でないことなどの要件を定めているという。

 また、世界中で1万人以上のスタッフを動員し、フェイクレビューなどの不正行為対策を行っているほか、AIも活用。2020年には世界中で2億件以上のレビューを排除するなど、投資とイノベーションによるステマ対策を行っていると報告された。

「ルール」でステマを排除できる可能性

ステマを防ぐには。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ステマを防ぐには。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 リクルートが運営する「じゃらん」や「ホットペッパービューティー」では、実際に予約を入れ、来店して初めてレビューが投稿できるというルールを作り、ステマを防止しようとしているという。

 また、レビューを投稿した際には、レビューの投稿者が使用したプランやクーポンなどがレビュー画面に表示され、口コミが投稿された背景を認識できるようにしていると説明する。

 さらに、「特定の店舗や施設の評価が、ある時点から極端に上がっている」「特定の店舗や施設だけレビューの投稿率が高い」など、不審な点がある場合には調査をしているとの報告も上げられた。

 日頃からステマの存在を意識することで、美容医療の利用者も、極端な評価やレビューに警戒することができる。違和感を覚えることがあれば、その感覚を大切にしてよいかもしれない。

 フェイスブック ジャパン(現メタ)が運営するインスタグラムでは、投稿者が何らかの対価と引き換えにコンテンツを投稿する場合、「ブランドコンテンツ」を使用して投稿するよう求めているという。

 そうすることにより、その投稿を見る利用者に対価を伴った投稿であることを明示することで透明性を確保しようとしているそうだ。

フェイクレビューブローカーの存在

いいねがお金に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

いいねがお金に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 このように、各社はそれぞれにステマの対策を取っているが、それでも、ステマを完全に排除することは困難とされている。

 前回の検討会ではインフルエンサーによるステマ行為や、ステマの「グレーゾーン」についての話題が挙げられたが、ほかにも原因は考えられるようである。

 事業者による報告によると、近年ではレビューサイトの外で、フェイクレビューの取引を推進するといった、フェイクレビューブローカー産業というべき存在が成長してきているという。

 ブローカーはレビューサイトの外で、フェイクレビューの投稿と引き換えに報酬を支払うことで、フェイクレビューを投稿するメンバーを募集するそうだ。

 その一方で、ブローカーは商品の出品者に対して、「フェイクレビューの活用が売り上げを伸ばすために必須かつ真っ当な手段である」と信じさせ、フェイクレビューの活用に手を染めさせるのだという。

 このような取引はレビューサイトの外で行われているため、ブローカーの存在を追跡することは、非常な困難を伴うことが予想される。

 これに対し、アマゾンではフェイクレビューブローカーなどにダメージを与えるための専門チームを立ち上げ、調査や法的措置を進めているという。

 美容医療の利用者として、ステマによる被害を受けないために。さらに誤ってステマを行う側にならないために、気をつけるべきことはあるだろうか。

情報を疑う視点を持つ

ステマの課題。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ステマの課題。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 まずは、美容医療の利用をするときにも、日常的に目にするニュースやレビューには、ステマを意図した記事が紛れ込んでいるかもしれないという意識を持つことが重要だ。

 そして、金銭や商品サンプルなどのインセンティブを見返りにステマを持ちかける行為が、ビジネスに成長するまでに世の中に氾濫しているという認識を持つことも必要だろう。

 その認識を持つことで、少なくとも自分がフェイクレビューブローカーの誘いにのり、ステマに加担してしまうリスクは下げることができるかもしれない。

 また、ステマはブログやSNS、レビュー上だけにとどまらず、ニュースサイトなどにも存在する可能性もある。

 情報に接する際には、目にする場所にかかわらず、「これはステマなのではないか?」と疑い、一度立ち止まることも必要なのだろう。

参考文献

ステルスマーケティングに関する検討会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_005/

第1回 ステルスマーケティングに関する検討会(2022年9月16日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_005/029951.html

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Author

永田未来

永田未来

フリーライター。主婦と生活社を経て独立。美容やヘルスケア関連を含めた多彩な分野で執筆やインタビュー取材に対応。日本で数少ないヘアライターとしての執筆にも力を入れている。音楽誌および女性誌編集者の経験をベースにした分かりやすい情報発信を強みとする。

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