「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」(第4版)のポイントを解説する連載。
第2回目は、「自由診療に関する限定解除要件」の項目で新たに追加された項目と、更新された項目について紹介する。
限定解除要件とは、一定のルールを満たすことで、制限がなくなり、広告できるようになる条件のこと。正確な情報を提供し、消費者が誤解することなく広告内容を理解するための規制といえるだろう。
※限定が解除される要件とは、制限がなくなり、その広告ができるようになるための条件のこと。基本的に、広告が規制されている事柄でも、一定条件を満たすと広告できるようになることがある。逆に言うと、その条件を満たさないのに広告している場合は問題となる。
限定解除要件の説明については、下の記事にて詳しく解説している。
限定解除要項と注意したい内容は?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」vol.3
https://biyouhifuko.com/news/column/1968/
今回新たに事例解説書の中に、医薬品や医療機器の広告において、国の承認を受けていないものを提案する場合、または承認された効能や効果、用法、容量と異なる目的の治療を提案する場合のルールが新たに追加された。
これは24年3月の医療広告ガイドラインの一部改正を受けたものだ。
未承認認医薬品等を用いた自由診療における限定解除
日本の法律で承認されていない医薬品・医療機器を用いた治療を広告する場合、以下の内容について明示することが新たに事例集に追加された。
- 未承認医薬品等であること
- 入手経路等
- 国内の承認医薬品等の有無
- 諸外国における安全性等に係る情報
例えば、国内未承認の医薬品や医療機器を用いた治療を広告するにあたっては、以下のような記載が必要だ。
【例】
※〇〇(国内未承認の医療機器の販売名)について
- 未承認医薬品等
この治療で使用される〇〇は医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医療機器です。
- 入手経路等
当院で使用している〇〇は□□国△△社で製造されたものを当院で個人輸入しております。個人輸入された医薬品等の使用によるリスクに関する情報は下記URLをご確認ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/index.html
- 国内の承認医薬品等の有無
国内においては承認されている医療機器はありません。
- 諸外国における安全性等に係る情報
米国のFDA(アメリカ食品医薬品局)に承認されております。リスクとしては痛み・ヒリヒリ感、みみず腫れ、一時的な腫れ、紫斑、色素増強、瘢痕形成、一時的な局所神経麻痺が報告されています。
- 医薬品副作用被害救済制度について
万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
また、「国内の承認医薬品等の有無」について、同一の成分や性能を有する他の国内承認医薬品等がある場合は、その情報を記載する必要がある。
【例】
国内においては〇〇とは別の□□(作成者注:承認医療機器の販売名)が厚生労働省より承認を取得しています。
医薬品等を承認された効能・効果と異なる目的で用いた自由診療における限定解除
「医薬品等を承認された効能・効果と異なる目的で用いた自由診療における限定解除」が新規に追加された。
日本の法律で承認された医薬品・医療機器であっても、承認された効能・効果または用法・容量と異なる目的で医薬品・医療機器を用いた治療については、同様に「未承認医薬品等であること」「入手経路等」「国内の承認医薬品等の有無」「諸外国における安全性等に係る情報」を明示する必要がある。
この規制に関連して、自由診療などでダイエット目的に広がっているGLP-1受容体作動薬は独立した項目が設けられた。それだけ問題が大きいと認識されているからだろう。
例として、2型糖尿病の治療薬として承認された「GLP-1受容体作動薬」を、本来承認された目的ではない、ダイエットを目的とした治療に用いる場合を取り上げる。この場合には、以下のような記載が必要となる。
【例】
※GLP-1ダイエット〇〇錠について
- 未承認医薬品等(異なる目的での使用)
○○錠は、2型糖尿病の治療薬として厚生労働省に承認されています。肥満治療目的での処方は国内で承認されていません。
- 入手経路等
国内の医薬品卸業者より国内承認薬を仕入れています。
- 国内の承認医薬品等の有無
○○錠と同成分(△△)の注射製剤が、肥満症の治療薬として国内で承認されています。
- 諸外国における安全性等に係る情報
同一成分の注射製剤がアメリカ食品医薬品局(FDA)で肥満症治療薬として承認されていますが、諸外国でも美容・痩身・ダイエット等を目的とした使用は承認されていないため重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。
- 医薬品副作用被害救済制度について
万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
医療広告を見る時の注意点
医療広告を見る際には、以下のような事柄に注意すると良いだろう。
- 使用される医薬品・医療機器等が国内の法律で承認されているか
- 承認されていない場合、同等の他の物は承認されているか、または外国では承認されているか
- 承認している国が無いなど、情報が不足している場合は、重大なリスクが明らかになっていない可能性があることについて言及されているか
- 医薬品等による副作用が出た場合、救済制度の対象となるか
これまで、ウェブサイトにおける医療広告の事例について見てきた。次回はSNSや動画における医療広告の事例について見ていく。