自傷行為やリストカットによって生じた傷跡は、美容医療の分野で対応することが考えられる。
傷跡は、外見の問題だけでなく、心の苦痛も伴うので、治療には多面的なアプローチが必要となる。
米国形成外科学会が2024年9月に、注意点を解説している。
代表的な自傷行為であるリストカットの治療
自傷行為は、精神的な苦しみや感情のコントロールが難しい際に、自分の身体に傷をつけることで一時的な安堵を得ようとする行為。代表的な自傷行為の一つであるリストカットは、主に手首や腕に繰り返し傷をつけるもの。リストカットによってできる傷は線状の傷跡として残ることが多い。
学会によると、自傷行為は、感情を抑えきれない人や、対人関係の問題、トラウマを抱える人々に多く見られる。特に思春期をはじめ若い時期に多い。外見的な問題だけでなく、他人からの偏見や社会的な疎外感を引き起こすこともある。傷跡の治療は、自尊心や社会的な生活の質を向上させるためにも重要だ。
自傷行為による傷跡に対する美容外科的なアプローチは、外科的手術、非外科的な治療の両方による。学会が提示している治療法について次の通り整理される。
治療法 | 対象 | 効果 |
---|---|---|
傷跡切除手術 | 厚い傷跡や線状の傷跡 | 傷跡の外観を目立たなくする |
パルス色素レーザー(パルスダイレーザー、PDL) インテンス・パルス・ライト(IPL)治療 | 赤みや炎症のある傷跡 | 色の均一化、炎症の軽減 |
アルブチンやレチノイドを含む美白剤 美白ピーリング | 過剰色素沈着(ハイパーピグメンテーション) | 色素の均一化、色素沈着の軽減 |
プラズマピクセレーション | 色素脱失(ハイポピグメンテーション) | 色素補充 |
医療タトゥー | 色素脱失(ハイポピグメンテーション) | 色素補充 |
レーザー治療 | 表面の質感が異なる傷跡 | 質感を整える、微妙な外観の改善 |
メンタルヘルスにも配慮した治療が必要
学会によると、自傷行為による傷跡の治療では、身体的なアプローチだけでなく、メンタルヘルスの支援も欠かせない。自傷行為は深刻な心理的苦痛やストレスによることが多く、傷跡の修正とともに、心理的なサポートを提供することが、再発防止や心の安定につながる。
学会では、メンタルヘルスの専門家との連携を勧め、治療過程で心理カウンセリングを取り入れることを重要視する。自傷行為に対する理解を深め、自己管理や感情のコントロールを学ぶことが、長期的な回復の鍵となる。
電話やオンラインでのメンタルヘルスサポートも広く利用されており、家族や友人のサポートも重要な役割を果たす。