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ヒアルロン酸フィラー注入による抜け毛、まれながら重大な合併症、血管が塞がれることで毛が抜ける、美容皮膚科誌で報告

カレンダー2024.11.21 フォルダー最新研究

 ヒアルロン酸フィラー注入はシワの改善や肌質改善を目的とする人気の施術。一方で、まれながら血管を塞ぐことによる合併症のリスクがある。そうした合併症の一例として脱毛が生じる可能性がある。

 2024年11月20日、サウジアラビアの研究グループが美容皮膚科誌で報告している。

血管が詰まって抜け毛が発生

ヒアルロン酸フィラー注入の後、赤くただれる。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024 Nov 20:e16684. doi: 10.1111/jocd.16684. Epub ahead of print.)

ヒアルロン酸フィラー注入の後、赤くただれる。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024 Nov 20:e16684. doi: 10.1111/jocd.16684. Epub ahead of print.)

  • 合併症の注意点→ヒアルロン酸フィラー注入で血管が圧迫されたり内部に入り込んだりすることで血流が遮断される可能性がある。
  • 症例報告→21歳女性がヒアルロン酸フィラーをこめかみ、眉間、涙袋に合計7mL注入され、4日後に皮膚壊死と抜け毛が発生。

 ヒアルロン酸フィラー注入の合併症として特に注意すべきなのは、製剤が血管を圧迫したり、血管の中に入り込んだりして血流を遮断すること。血液が流れなくなると、栄養や酸素が行きわたらないために、組織が死んでしまう恐れ(組織壊死)がある。目に血液を供給する血管が詰まると、失明に至る危険性がある。

 今回、研究グループは、ヒアルロン酸のフィラー注入を受けた21歳女性で抜け毛が発生した事例について報告した。

 この女性はこめかみ、眉間、涙袋にヒアルロン酸フィラーを合計7mL注入され、その4日後に、局所的な皮膚壊死と抜け毛が生じた。

 診断の結果、血管閉塞による虚血性抜け毛と判断された。そこで治療としてヒアルロニダーゼ注射(1500単位)を受けたほか、ステロイドの注射やミノキシジルの塗り薬の処方を受けた。傷跡に対してはCO2レーザー療法を受けた。

 これらの治療を経て1年以内に完全な毛髪再生に至り、顔面の傷跡も消えた。この結果は、素早い適切な対応が回復につながることを示している。

注入の量が多いとリスクが高まる

フィラー注入の1カ月誤、脱毛が確認される。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024 Nov 20:e16684. doi: 10.1111/jocd.16684. Epub ahead of print.)

フィラー注入の1カ月誤、脱毛が確認される。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024 Nov 20:e16684. doi: 10.1111/jocd.16684. Epub ahead of print.)

  • リスク部位→こめかみや頭頂部が多く、血管の閉塞が原因とされる。
  • 治療法→ヒアルロニダーゼが最も一般的。ステロイド注入、ミノキシジルの塗り薬、PRP療法の併用もあり。
  • 脱毛の発症→通常2週間以内に発症し、適切な治療で数カ月以内に回復することが多い。一部では傷跡が残る場合もある。

 研究グループは、過去の論文に基づいて、ヒアルロン酸などのフィラー注入をきっかけに脱毛を起こしたという16症例の分析も行っている。報告によると、大多数が女性(15/16)で、使用されたフィラーは主にヒアルロン酸(13例)だった。リスクの高い部位としてこめかみや頭頂部が多く報告されており、血管が塞がれることが原因とされる。

 治療にはヒアルロニダーゼが最も一般的に使用され、ステロイドの注入やミノキシジルの塗り薬、PRP(多血小板血漿)療法も併用される場合がある。抜け毛は通常2週間以内に発症し、適切な治療で数カ月以内に回復する場合がほとんど。一部では傷跡で抜け毛が残る場合もある。

 また、フィラーの注入量についても問題が指摘されている。研究グループによると、推奨される顔の片側当たり1~3mLを超える7mLの注入は、血流障害を引き起こす可能性が高まる。

 早期のヒアルロニダーゼ使用が血流回復と毛髪再生に重要になる。超音波の検査を併用することで、血管が塞がるリスクを最小限に抑えられる可能性があると指摘する。

 ヒアルロン酸フィラーによる抜け毛は稀な副作用であるが、「特に血管が密集する部位では注意が必要だと強調されている。

 日本でもヒアルロン酸注入後に脱毛が起きた場合、早めの対処が必要とされるだろう。

参考文献

Albargawi S, Nagshabandi KN, Shadid A. Dermal Filler-Induced Alopecia: A Case Report and Literature Review. J Cosmet Dermatol. 2024 Nov 20:e16684. doi: 10.1111/jocd.16684. Epub ahead of print. PMID: 39563609.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39563609/

ミノキシジルの毛髪内部の発毛プロセスを見える化、男性型脱毛症や女性型脱毛症の治療効果の証拠、大正製薬が世界初の発見と報告
https://biyouhifuko.com/news/research/8636/

女性型脱毛症にi-PRF+注射が効果示す、髪のボリューム改善、美容医療系の医学誌で発表、英国ロンドン大学の研究グループが報告
https://biyouhifuko.com/news/research/8438/

脱毛からシワ改善、白斑の改善、鼻や耳、乳房の施術、細胞治療やPRPの最新研究成果とは、日本再生医療学会で美容医療シンポ
https://biyouhifuko.com/news/japan/6320/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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