
美容医療ナースの働き方。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
医師の「直美」問題が注目されているが、看護師についても保険診療を経験してから美容医療に行くようなキャリアが重要視されるかもしれない。保険診療を経験した看護師の方が、知識や技術が幅広くなり、一般の人にとっては歓迎される動きになるだろう。
※直美は、医学部を卒業後、2年間の初期研修を経て、直接美容医療に進むこと。
保険診療の技術や経験の価値が認識される

保険診療と美容医療。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 直美問題の議論→ 医師の美容医療直接入職が増加し、トラブルの一因とされる問題に対策が求められている。
- 厚労省の規制提案→ 開業資格取得には保険診療の一定期間経験を義務付ける仕組みや、不足する診療機能の提供を求める提案が進行中。
- 保険診療経験の重要性→ 医師に対して保険診療の経験が重要視される傾向が看護師にも広がる可能性。
ヒフコNEWSで伝えているが、約2万人の看護師を対象とした調査で、美容クリニック勤務は1.6%なので、今回述べる内容はごく一部に限られる話かもしれない。とはいえ、看護師の勤務実態の全体像は、特に自由診療分野では明らかではないと見られるため、意外と重要な問題であるかもしれない。そのような前提で、とらえていただければと思う。
最近、医師の直美についての議論が続いている。1年間に医学部2つ分に当たる人数の新人医師が美容医療に入職していることが問題視され、それに対策が必要ではないかと指摘されている問題だ。美容医療ではトラブル続きであることが課題になっており、その一因として直美が注目された。
ヒフコNEWSでも伝えているが、厚生労働省では、開業する資格を得るためには、主に病気の診察や治療などを行う保険診療を一定期間経験する仕組みが提案されている。そのほか、開業しようとした場合に、自治体が不足する診療機能を提供するように求める仕組みが強化されることも提案されている。
厚労省の規制強化は自由診療である美容医療を直接規制するものにならないかもしれず、どれだけ効果があるかは不透明だ。
憲法では、営業の自由や職業選択の自由が保障されているため、美容医療を選ぶ医師を安易に規制することは難しい可能性もある。
とはいえ、課題は多いものの、美容医療のトラブルが多く報告される中で、医師の技術や経験を向上させることは必要性が認められており、今後、直美は減ってくる可能性がある。
そうした中で、看護師の直美というのも注目されるかもしれないと、筆者は考えた。看護師の中には、学校を卒業してから直接美容医療に進む人もいる。一方で、直接美容医療に進むと、医療の経験が幅広く得られない可能性もある。
これまで、あまり看護師の直美については、注目されたことはなかったのではないか。それが少し変わるのではないかというのが筆者の見立てだ。
今後、医師において一度保険診療を経験した方が良いという考えが広まる可能性がある。すると、同じ職場で勤務している看護師に対しても、保険診療を経験したかどうかの関心がこれまでよりも寄せられることがあると考える。勢い、一度保険診療を経験した方が良いという考え方が強まる可能性もある。
これは規制強化というような話ではなく、保険診療を経験した方が幅広い技術や経験が得られるという発想が強まるという話だ。看護師自身が保険診療を経験しておこうと考えるようになるなど、自発的な動きとしてトレンドが作られる可能性があるのではと考えるのだ。看護師は転職の仕組みが定着しているので、いったん保険診療に戻るという看護師が増える可能性もあると推測する。
美容医療の合併症を観る経験は生きる

保険診療の知識や技術は美容医療に生きる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 美容医療での看護師の役割→ 看護師が施術を担当することが多く、技術や経験の向上が施術を受ける人々のメリットにつながる。
- 保険診療経験の価値→ 病気の患者を日々診ることで、看護師のケアや処置能力が向上。美容医療でのトラブル回避や対応力が期待される。
- 保険診療経験とリスク低減→ 保険診療でトラブルを経験した看護師は、事前のトラブル回避策を取れるようになる可能性。
もっとも、以上は筆者の推測であり、このトレンドが出てくるかどうかは分からない。
ただし、言えるのは、美容医療においては看護師の技術や経験が高まることは明らかに施術を受ける一般の人たちのメリットにつながるということだ。美容医療で施術を実際に行うのは看護師であることが多いので当然ではある。保険診療を経験した看護師は、病気の人たちを日々見ることになるので、ケアや処置についての知識や技術が一層高まることが期待できる。そうした能力を高めた看護師が美容医療に入ってくるのは価値があるだろう。
医療脱毛を見ても、レーザーを使った脱毛の施術をするのは看護師になる。看護師が、施術に伴うヤケドなどの合併症を引き起こさないための配慮を欠いていれば、トラブルが起きるのは当然だ。保険診療で、美容医療で起きたトラブルを実際に経験した看護師が増えてくれば、事前にトラブルを回避する工夫をしてくれる人も増えるだろう。それに限らず、施術に関する知識や技術を身に付けていれば合併症のリスクは低下する。
冒頭に述べたように、美容クリニックで働く看護師はごく少数かもしれないが、美容医療の中においては重要な話だろうと考えている。なお、冒頭の調査では、美容クリニックに転職を希望する20代の看護師は3割近くと、若い看護師を中心に希望が増えていることも確認されている。より良い美容医療のためには医師ばかりではなく、看護師の働き方も重要になることを多くの人がもっと認識すべきだろう。