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美容医療は切らない施術が安全であるわけではない、合併症患者の治療に取り組む、連載【細川亙 現代美容医療を殿が斬る】Vol.6

カレンダー2025.2.18 フォルダー連載・コラム

 「細川亙 現代美容医療を殿が斬る」では、日本形成外科学会理事長をはじめ、多くの要職を歴任し、米国形成外科学会名誉会員でもある細川亙氏が、現代美容医療が抱える様々な問題に鋭い視点で問題提起する。「殿」というのは、細川氏が細川ガラシャの子孫だから。その源流は明智光秀に通じる。そんな歴史的背景を持つ細川氏が現代に舞台を移して美容医療の分野で一刀を振るう。激動の美容医療の世界をどう治めるのか。

第6回テーマ「美容医療の合併症を治療する」

 美容医療は安全に行われているケースが多いが、時に合併症が起こることがある。大阪みなと中央病院では、美容医療後の合併症の治療をオンライン診療で行い始めた。それ以前から合併症の治療には取り組んできたが、手軽にできる非外科的治療によっても合併症が起こることを身近に感じてきた。切らない治療は切る治療よりも安全というわけではない。

美容医療の合併症をオンライン診療で治療

 地域医療機能推進機構大阪みなと中央病院の院長で美容医療センター長でもあった私は、昨年4月から大阪の医療法人医誠会というところに所属を移し、10月からオープン予定だった自由診療のみを行う医療ビルで美容医療を立ち上げる予定だった。しかし、10月のオープンは半年間延期され、その後さらに無期延期になった。私は1月に医誠会を辞めることになり、古巣の大阪みなと中央病院に戻り、今後はそこの美容医療センターを拡充し発展させていくことになった。

 さて、大阪みなと中央病院の美容医療センターでは、一般の美容クリニックで行っているような二重瞼作成術、隆鼻術、フェイスリフト、顔輪郭形成術、豊胸術、ボトックスやヒアルロン酸の注入などを行っているだけではない。センター開設当初の2019年から美容医療の合併症患者(美容医療を受けたことで健康被害に遭った人たち)の診察をしてきた。実はそのような被害に遭った人たちは日本全国に散在している。

 そして遠くから高い交通費を払って美容医療後遺症外来を受診したものの、医療的な改善の見込みがなかったり、私が専門とする形成外科美容外科分野の医療技術を用いて治療できる症状ではないなどの理由で、お気の毒ながらお引き取りいただくような例も少なくなかった。そこで、遠くの患者が大阪まで来なくても診察を受けることができるようにオンライン診察を始めることにした。東北や九州の方など大阪から遠い日本国内の方はもちろん、中国(中華人民共和国)からも診察の申し込みがあるなど、遠隔診療による利便性向上の試みは好評である。

厄介なフィラー注入後の合併症

 しかし、美容医療被害者の救済の仕事に携わっていると、施術後の救済よりも事前の注意が大事だとつくづく感じる。多くの人が「切らない美容整形」「プチ整形」などとして気軽に受けるので「フィラー注入」による合併症が後を絶たない。

 シリコンブロックやシリコンバッグなど固形物を挿入する美容手術の場合は、何かトラブルが起こればその固形物を取り出すことは容易である。しかし注射器で注入した液体を取り出すことは至難の業である。

 もちろんフィラー注入治療を受けた方々のすべてに被害が生じるわけではない。しかし万が一、体内に入れられた物質が自分に合わずアレルギー症状を引き起こしたとしても、注射器で注入したものは取り出せず、一生涯体にいわば爆弾を抱えたままで過ごすことになるのだということを肝に銘じなければならない。「切らない治療」が「切る治療」よりも安全などという神話は間違いである。

プロフィール

細川亙 現代美容医療を殿が斬る

細川亙 現代美容医療を殿が斬る

細川亙(大阪大学名誉教授)

米国形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会特別会員、日本頭蓋顎顔面外科学会名誉会員、日本創傷外科学会名誉会員、JCHO大阪みなと中央病院名誉院長。日本形成外科学会理事長、日本形成外科手術手技学会理事長などを歴任。大阪大学形成外科初代教授。1979年、大阪大学医学部卒業。

(編集:星良孝)

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Author

米国形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会特別会員、日本頭蓋顎顔面外科学会名誉会員、日本創傷外科学会名誉会員、JCHO大阪みなと中央病院名誉院長。日本形成外科学会理事長、日本形成外科手術手技学会理事長などを歴任。大阪大学形成外科初代教授。1979年、大阪大学医学部卒業。

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