
保険診療を行う医療機関の管理者は、保険診療の経験を5年以上持つ方向になっている。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
現在、国会では医療法改正の議論が進められており、これにより、保険診療を行う医療機関では、保険診療の経験を5年以上経た人物でなければ管理者を務められなくなる方向になっている。管理者は、一般的には院長となる人物となる。
これが自由診療を中心にしている美容医療にどのような影響をもたらすのかはまだ明らかではないが、一般社団法人による医療機関には影響があるのではないだろうか。
保険診療は美容クリニックにも重要

美容クリニックにとっても保険診療は重要。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 管理者ルールの影響→ 保険診療を行う医療機関の院長(管理者)には、5年以上の保険診療経験が必要になる。このルールが美容クリニックの院長選びにも影響を与える可能性がある。
- 保険診療の重要性→ 美容クリニックでも保険診療を取り入れることで経営の安定につながるため、今後は保険診療の経験を持つ医師が院長になる流れが強まる可能性がある。
- 名義貸しの抑制→ 保険診療経験5年以上が求められることで、専門医資格を持つ医師が増え、名義貸しに関与する医師が減少し、違法なクリニック運営が難しくなると予想される。
そもそも、管理者に関するルールは2024年に開かれた医師偏在問題に関する厚生労働省の会議で方向性が示され、その方針を踏まえた医療法改正案が今年2月に閣議決定され、衆議院での審議に入った。
一般の医療法人による美容クリニックであれば、医療法人の代表は医師であり、今後、管理者に保険診療の経験を求められるようになれば、その医師がその経験を得ることが求められる。
ヒフコNEWSの編集長コラムで書いたが、今後は美容クリニックであっても、院長がこの管理者ルールの基準を満たしているかどうかが、イメージ面でより注目される可能性がある。
さらに最近は、医療関係者の間でも「美容クリニックであっても保険診療を行うことで収入源が安定する」という意見をよく耳にする。そのため、自由診療だけでなく保険診療も取り入れたほうが経営的に有利な場合があると考えられる。そうなると、改正医療法が成立すると、美容クリニックでも保険診療も対応しようとすれば、院長は管理者ルールの基準に合う必要が出てくる。そのため、美容志向の若手医師でも、管理者の条件となる保険診療5年以上を経験した方が良いという流れができて不思議ない。
一方で、一般社団法人による医療機関は、設立者が一般社団法人であり、医師でなくても開設者になることができる。ただし、院長は医師のみ務められるので、一般社団法人による医療機関でも、医師である院長を置く必要がある。この場合、その院長である医師が日常的に診療に関わっていれば問題がないが、最近指摘されているのは、院長が名義を貸しているだけで、日常的な診療に関わっていないケースがあることだ。
先に書いた通り、今後、医療法が改正されて、保険診療を行う医療機関では、管理者である院長は、保険診療を5年以上経験している必要が出てくるが、一般社団法人による美容クリニックだとどうなるだろうか。
一般社団法人による医療機関では、自由診療のみを行うケースであれば、管理者である院長に保険診療の経験は求められないため、名義貸しが相変わらず行われる可能性はある。
この場合には、保険診療を提供することができないが、既に述べたように、美容クリニックにとっても、保険診療は重要な収入源となる面があり、美容クリニックの経営という面では不利になるだろう。自由診療だけで十分な収入を得られれば問題はないが、競争が激しくなる中で、ハードルは一層上がってくるのは確か。
そのため、一般社団法人による医療機関の中でも、保険診療まで提供する流れができてくるならば、名義貸しは困難になってくるのではないだろうか。
というのも、管理者である院長は、名義貸しをするにしても、保険診療の経験を5年以上積んでいることが求められるからだ。
保険診療の経験5年以上というのは、実質的には、医学部を卒業してから2年間の初期研修を経て、続いて3年間の保険診療を経験するということになる。すると多くの場合、専門医を取得するための専門研修を行うケースが多くなると考える。そのため保険診療5年間を経験した医師の多くは専門医資格を取ることになる。
そのような医師が、果たして一般社団法人による医療機関で、名義貸しを受け入れるかといえば、簡単ではないと予想する。専門医資格を持った医師であれば、他の医療機関で十分に活躍できるであろうし、わざわざ自らの評判を貶める可能性がある名義貸しに加担するとは考えられないからだ。
専門医を取っても、名義貸しをする医師はいるだろうという理屈が成り立つならば、この推測は成り立たないが、状況が変わることは間違いない。
「管理者ルール」のチェックに意味がある?

医師がどう働くか注目されてくる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 管理者ルールの目的→ 医療法改正により、一般社団法人が運営する医療機関の適正化が図られ、問題視されている名義貸しの抑制につながる可能性がある。
- 国会での議論→ 医療法改正案はまだ審議中であり、最終的な内容や適用範囲が変更される可能性がある。
- 美容クリニックの院長選び→ 美容医療を受ける際、クリニックの院長が管理者ルールに適合しているかが、信頼性を判断するポイントの一つになり得る。
このように考えると、医療法改正によってできる見通しの管理者ルールは、問題が指摘されている一般社団法人による医療機関を改善することも目的の一つであるようにも見える。
医療法を改正する議論はまだ国会で議論されているところであり、その目的とする部分からそもそも変化してくる可能性はある。そのため管理者ルールも動き出すかは未定ではあるが、仮にこのルールが始まれば、美容クリニックにとって重要になる可能性が高い。
美容医療を検討する人にとっては、美容クリニックの院長が、管理者ルールに合っているのかどうかは一つのチェックポイントになる可能性がある。また、もしかすると、この基準に合っているかどうかを確認することには、すでに意味があるのかもしれない。
