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美容医療の想像を絶する事故、やはり「直美」問題に行き着く、医療の常識なき施術者がもたらす現場の悲劇、連載【細川亙 現代美容医療を殿が斬る】Vol.8

 「細川亙 現代美容医療を殿が斬る」では、日本形成外科学会理事長をはじめ、多くの要職を歴任し、米国形成外科学会名誉会員でもある細川亙氏が、現代美容医療が抱える様々な問題に鋭い視点で問題提起する。「殿」というのは、細川氏が細川ガラシャの子孫だから。その源流は明智光秀に通じる。そんな歴史的背景を持つ細川氏が現代に舞台を移して美容医療の分野で一刀を振るう。激動の美容医療の世界をどう治めるのか。

第8回テーマ「重大事故を避けるための心得」

 美容医療の現場では、いまなお深刻な事故が起きている。こうした被害を回避するために何より大切なのは、「医療の常識」を身につけた信頼できる医師に出会うことだ。第8回となる今回は、重大事故を未然に防ぐための心得と、医師選びで見落としてはならないポイントについて細川氏が語る。

美容外科学会と現場の実情

 6月28日に第153回の日本美容外科学会学術集会が大阪のあべのハルカス会議室で塚原孝浩会長のもと開催された。手術的な治療(輪郭形成、フェイスリフト、上下眼瞼形成など)、各種のレーザーを用いての皮面治療などについて、それぞれの分野のエキスパートと呼ばれる方々によりいくつかのシンポジウムが行われ大変有意義な学会であった。

 基本領域の医療を一切身に着けることもせずに美容外科の世界に飛び込んでしまう“直美”と呼ばれる新人医師たちも、せめてこのような学会くらいには参加して医療技術の向上に励んでもらいたいと思っていたが、学会場で直美系美容外科医の姿を見かけることはほぼなかった。

 私が美容医療センター長を務める大阪みなと中央病院では通常の美容医療を行っているだけではなく、美容医療を受けたことによって生じた被害に対する診療も行っている。そこで診る患者はいろいろな部位いろいろな程度に術後の後遺症を生じているのであるが、想像を絶するようなレベルの重い合併症は明らかに直美系医師によって引き起こされている。重大な事故(健康被害)は「医療の常識」を身に着けていない医師によって引き起こされているのがわかる。

医療事故リピーター医師は存在する

 もともと基本領域の医療も身に着けずに美容医療を始めようとする人たちには、患者(美容医療の場合には客というべきか)には安全な医療を提供しなければならないという医療人として当然の意識が薄弱あるいは欠損していることが多い。つまり未熟な状態で患者(客)に医療行為をすることに対する罪の意識・抵抗感が低い人たちなのである。

 こういうタイプの医師は、美容の分野に身を投じた後も医療の安全や医療技術の向上に励む傾向は見られず、例えベテランと言われるような経験年数・年齢に達してもなお重大な事故を多発し続けている医師もいる。いわゆる医療事故リピーターである。そしてこのタイプの医師はトラブルに懲りない驚くほどの精神的な強靭さをもっている。

 残念ながら日本の法律では何の経験がなくても医師免許さえあれば美容医療を行うことができる。患者(客)はそのような美容外科医を避けて真っ当な美容外科医を選ぶべきなのであるが、それはなかなか難しいだろう。しかし少なくとも“たくさん広告で見かけた”とか“SNSで評判がいい”というようなことは選別の材料にはしないのが無難であり、美容外科医が形成外科医であることは一つの判断材料にはなるだろう。

プロフィール

細川亙 現代美容医療を殿が斬る

細川亙 現代美容医療を殿が斬る

細川亙(大阪大学名誉教授)

米国形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会特別会員、日本頭蓋顎顔面外科学会名誉会員、日本創傷外科学会名誉会員、JCHO大阪みなと中央病院名誉院長。日本形成外科学会理事長、日本形成外科手術手技学会理事長などを歴任。大阪大学形成外科初代教授。1979年、大阪大学医学部卒業。

(編集:星良孝)

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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