
厚生労働省に要望書。(写真/Adobe Stock)
厚生労働省は2025年8月、美容医療に関する通知を全国の自治体に出した。
2024年にまとまった「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書を受けたもので、横行する不適切な事例に対応する上での法的解釈や行政対応の考え方が整理されている。
ヒフコNEWSでは、この通知の詳細を連載で伝えていくが、今回はその第2回として、無資格カウンセラーによる診断などの問題点を整理する。
無資格者による「診断」は医行為に該当

カウンセラーや受付スタッフが診察や施術を行う違法行為が行われている。(出炭/厚生労働省)
- 現場の実態→美容医療ではカウンセラーや受付スタッフが施術希望者に対応することが多く、一部では無資格者が診察や施術を行っている実態がある
- 調査結果→厚労省の調査では、34.5%がカウンセラー、21.7%が受付による診察または施術を経験していたと回答
- 通知の整理→厚労省は「①無資格者による診断等」「②医師法第17条等との関係」「③違法な事例」の3点で判断基準を示した
美容医療の現場では、カウンセラーなどと呼ばれるスタッフが、施術を希望する人に対応するケースが多い。医師や看護師が施術に対応している一方で、スタッフが施術希望者の接遇に当たる。
問題になるのは、スタッフが治療方針を決めるなど、本来医師が行う必要がある行為を行っているケース。
厚労省の検討会では、カウンセラーや受付といった医療資格を持たないスタッフが、診察したり、施術を行っていたりする場合があると明らかになった。
こうした実態を裏付ける一般の経験者を対象とした厚労省調査では、34.5%がカウンセラー、21.7%が受付による診察または施術を経験していた。
今回、厚労省の通知では(1)いわゆるカウンセラー等の無資格者による診断等(2)医師法第17等との関係(3)違法な事例──という3点に分けて、違法かどうかを判断する要点について示している。
(1)については、無資格のスタッフが接遇する際には、医師法や歯科医師法で定められている「医業」や「歯科医業」に該当しない範囲で実施しなければならないと説明している。
(2)については、(1)で示した無資格者が医業や歯科医業を行うことが、どのような法的根拠により違反であると判断されるのかを説明している。医師の医学的判断がなく人体に危害を及ぼす、または及ぼす恐れのある行為を反復的、継続的に行うことを「医業」と説明。診察により治療方針を判断して、それを伝達することを診断と指摘し、この医学的判断をすることを医行為であると説明し、それを業として行うことは法律違反であると指摘している。
その上で、(3)では4つの事例を挙げて、無資格者が行うと法律違反となるケースを示している。
一つは、脱毛、アートメイク、HIFU(高密度焦点式超音波)施術で、無資格者が行うことは法律違反であると説明している。
アートメイクについては、眉毛、毛髪、乳輪、乳頭など、本来存在している人体の構造物を、針先に色素を付けながら、皮膚に色素を入れていく行為、アイライン、チーク、リップなどの化粧の代替としての装飾をする行為について、医行為であると説明している。
続いて、一重まぶたを二重まぶたにしたい、あるいは二重整形について埋没法ではなく切開法がよいといった希望を聞き取った上で、治療方法の選択についての提案をしたり、決定したりすることは、医学的な判断に当たり、これを無資格者が行うことが法律違反であると説明している。
もう一つの例として、採血など、身体に傷を付けて検体を採取する手技も無資格者は行えないと示した。
このほか、無資格者が、ビデオ通話、電話、メール、チャットを通じて、医学的判断をして、それを伝えることは法律違反と説明した。
医学的判断、料金説明を装っても認められない

唇のアートメイク。(写真/Adobe Stock)
- 名称に関する誤解→「○○メイク」「○○タトゥー」など呼称を変えても、皮膚に色素を入れる行為はアートメイクであり、医行為に該当する。無資格者が行えば医師法違反となる。
- カウンセラーの提案→料金説明の一環で「この人には切開法がよい」と治療法を提案することも、医学的判断を伴う場合は診断行為と見なされる。
- アートメイクと刺青の区別→最高裁が彫師の刺青を医師法違反に当たらないと判断した背景があり、アートメイクとの線引きにはあいまいさが残っている。
通知の中で、アートメイクの施術内容について、名称を変えれば合法になるという誤解を正している。例えば、「○○メイク」「○○タトゥー」などアートメイク以外の呼称を使っても、皮膚に色素を入れる行為そのものが医行為であり、無資格者が行えば医師法違反に当たると説明する。
また、カウンセラーが料金説明の一環として「この人には切開法がよい」などと治療法を提案するといった、グレーな説明も医学的判断を伴う限り、診断行為と見なされると見解を示した。
なお、今回の通知で記載されているわけではないが、アートメイクについて詳細に違法となる部位や目的について掘り下げている背景には、最高裁判決で彫師が行う刺青が医師法違反には当たらないと判断されたことも関係している可能性がある。アートメイクと刺青の区別についてはあいまいな部分があるという指摘もあり、今後も課題として注目される可能性がある。
引き続き、厚労省通知の詳細を伝えていく。
